第7話土地神様、式神になる

 光に包まれて……

 どこに行くんだろ。

 もしかして……下に落ちるのかな。

 上に落ちる感じは……しないけど

 でも、どこかは分からないけど自然といい所に行く気がする……

 それは……


 どこか…分からないけれど……


 でもそれは。


 すっごくいい気がする。


 そう思うくらい。


 ここ……暖かい……


 真っ白だけど……


 暖かくて……


 綺麗で……


 それで……


 それで……


 ―……ちゃん!!


 誰?


 私は今、暖かい空間に落ちてるのに…それを邪魔しようとしてるのは…

 誰?


 ―……ちゃん!!……いちゃん!!


 必死に、呼び求めてる……


 それは、どうして?

 いやどうしてって……思うこと自体違うのか。


 ―しっかりして!!……ちゃん!!


 いや、そうじゃない

 この声を私は知っている……


 この声……もしかして!!


「れいさん!!」


 ―気がついた?!ここは、葵ちゃんがいちゃだめなの!!


「でも、どうやって逃げ出すのさ!!」


 ―私が手を伸ばすから!!


「分かった!!」

 そう言うと、辺りは暗くなり下から手が伸びてきた……

 これってもしかして……

 お祖母様から聞いてた、地獄?!


 それだったら……逃げ出すことなんて!!出来るはずが!!


 ―早く!!手を!!

 そう言われて私は、空に向かって手を伸ばした。

 その瞬間、白い手が私に向かいやってきたけどそれと同時に下からやってきた!!

 これ、マズいんじゃ?!


 ―天に指す光よ…そなたに問う!!我は善を救う者!!我は全てを導くもの!!我は澪…彼女救う!!一筋の光なり!!


 詠唱が終わった瞬間、私の方に伸びていた手が消え……青空が広がった。


 そして……


 私は……


 私は……












「ん……」

 ゆっくりと目を開けようとする。

 だけど、眩しくて全然開けられない……

 どうしてだろ、やっぱりちゃんと帰ってこれなかったのかな……


「葵ちゃん!!大丈夫?!」


「あ……えっと……」

 この声…やっぱり、れいさんだ。

 助かったんだ……

 いやでも、どうして私地獄に行ってたんだろ。なにか罰当たりな事したのか……


 いやしたな!!

 神様の夢覗いたから!!いやでも…カンナちゃんの時はそんなことなかったのに……

 やっぱ、存在感というか威厳……違うな長年神様をやっていて力とかがある者だと地獄に行くのか……


「おいおい、お前失礼な事考えてるだろ」

 この少し棘のある言い方……

 恐る恐る目を開けると、黒いモヤのかかった何かがいた。

 いや、何かじゃない……この子は私の式神というか契約した相棒的存在のカンナちゃんだ。


「って、カンナちゃん?!なんでいるの?!うわ眩しっ?!ツッコミどころ満載なんだけど!!」


「「あ痛っ?!」」

 私が眠っている間に朝になったことに驚きつつ勢いよく起きてしまったられいさんの顎にぶつけてしまった……

 地味に私も頭をぶつけたから凄い痛い……


「れいさん……ごめんなさい……」


「こっちこそ言わなくてごめん…」

 顎を押さえて私にそんなことを言った。

 いやいや……こちらこそ申し訳ないのに……

 謝らせてしまったのはなんて言えばいいのか…

 絶対呪われてしまう……なんか罰が当たってしまうじゃないかと思うけど……


「はあ…相変わらず暑苦しいなぁ……」

 こっちはこっちで頭抱えてるし……いやなんかバカにしてる感じもするし……

 全く失礼しちゃうわよ。


「うるさいなぁ……私が眠ってる間のこと色々と聞きたいんだけど、まあとりあえず……れいさんっ」


「ん?」

 れいさんは困惑してる感じだけど、私はありのままのことを言おう。

 私のことを、まさか地獄まで行って連れて帰ってきてくれたんだから。


「ただいまっ、そしてありがとうっ!」

 と言い、私はれいさんに抱きついた。

 暖かくて、柔らかくて……

 凄く安心する……

 まるで……なんだろ……

 ……分からないけど、私はそんな風に思った。


「わわっ、もう…おかえりっ、それとこちらこそだよっ。」

 れいさんを見るといい笑顔で、私を見つめてくれる。

 太陽のように優しい、ほんとに綺麗だ。

 どうしてこんなに懐かしい気持ちになるのかは分からないけど……でも、こんなにも暖かいのはれいさんの元からの特性なんだろうなぁ……


「ふふっ、葵ちゃん可愛いっ」


「う…そ、そんなことないですよ……///」


「だって、ほらその……」


「その前に、あたしがいる目の前で朝から暑苦しいものを見せるな……」

 なんてことカンナちゃんに言われた。

 いいじゃないか、私達とれいさんの馴れ初めをカンナちゃんに見せても問題はないはずでしょ?


 それに、わけなんだから私に自由があってもいいと思うの。

 能力だけ繋げられたと思ったら思考とかまで繋げられたなんて思わなったからほんとに私がびっくりしてるよ

 ほんとに理不尽だと思うよ。


「いいじゃん別にーっ」


「あたしが嫌なんだよ。」


「もー、いじわるー」


「はぁ……全く、お前肝心な事忘れてないか?」

 肝心なこと?

 何か忘れてるような……そういえば、なんか説明してなかった気もするし……

 でも一番気になるのは、いつもはカンナちゃんの思考とか流れてくるのになんで流れてこないんだろ?


「はぁ…お前はほんとになんで肝心な事を忘れるんだ」

 呆れられましても……

 というかだんだん顔がほんとに呆れてる感じになってきてるんですけど?!

 どうしてよカンナちゃん!!


「もしかしてだけど…契約の儀をしたからその説明をしろってこと?」


「そうだよれい、その通りさ」

 あ、すっかり忘れてた……

 忘れてたというより、全然頭に入ってなかった!!


 どうしよう…れいさんはもう神様じゃないから新しい名前で呼ばないとほんとに存在消えちゃうし…

 カンナちゃんに至ってはそうだろうなって顔してるし……

 というかなんか腹立つし……


「なんか腹立つってなんだよ」


「ごめんごめん」


「?」

 不思議そうな表情をしているれいさんはとりあえず置いておいて……

 まずは説明をしなきゃか……

 いや、説明するはいいけど何を説明すればいいんだ?


「まあ、このアホが説明出来ねぇみたいだから私が説明してやるよ」


「アホって失礼な……」


 ━今のお前に説明出来る体力あるのか?


 ちょっ?!いきなり思考を流れこまないでよ!


 ━うるさかったか?


 そういう問題じゃ……ないけど、でもとにかく…やってくださいお願いします……


 ━はぁ、素直にそういえばいいんだよ。というかなんで不服そうなんだ。


 なんか腹立つから


 ━お前なぁ……まあいいや、とりあえず説明してやるよ。


 はぁいっ。


「んで、契約の儀について話そうと思ったんだが、お前なんであたしのこと不思議そうに見てるんだ?」


「うーん、だってそのモヤどうして取ろうとしないのかなって。」

 それ、私も思った。

 れいさんに会う時はいつもそのモヤしてるからどうしてなのかなって思ったんだけど。

 何か、隠したいことでもあるのかな?


「それは……お前には関係ない。葵も変な探り入れようとするなよ」


「えー、けちー」


「とにかく、それは触れないでくれ頼む。」

 カンナちゃんがそういうほどってことはほんとに触れられたくない何かを隠し持ってるって事なのかな。


 何か……というのは具体的には分からないけれど姿を見られたくない秘密、ということか。

 ていうか、私にもいつ見せてくれるんだろうか…それも気になるけどね。


「余計なこと言うから何言おうか忘れちまったじゃねぇか」


「それは、ごめん……」

 それは私か、ごめんごめん


 ━ごめんって思ってないだろ


 あ、バレた?てへっ☆


 ━とりあえず終わったらしばく


 ごめんってぇ……


「あんたじゃねぇから安心しな、まあこのアホがまだ少し混乱してみてるみたいだからな。とりあえず説明すると、あんたは今神ではなく葵の式神になった。それは理解してるな?」


「うん、もちろん。」


「それなら話は早い。神の掟として、あたし達が人になったら名前を貰わなければならない。それが最初の条件だ。」

 そっか…名前。

 私れいさんってそのまま呼び続けちゃダメなのかなって思ったけど……

 いや、ダメなのか。


 確か、神の真名ってことになるからそれは式神が居ない時とかに呼ぶのはありだけど大人数の時とかは真名じゃない方がいい。


 なぜそうなのかは確かだけど、大人数の時神が干渉して式神を排除しようとするとか何とか……

 そんなことをお祖母様が言ってた気がする。


「まあ、そういうことだから葵は名前を考えとけな。」


「名前か……」

 カンナちゃんの時もそうだったけど全然私名前のセンスないからなぁ……

 どうしよ……


「それじゃあ、私の名前の感じから近い感じの名前でいいんじゃない?」

 れいさんから近い感じの名前って……

 また無茶振りを……


 うーん……そうだなぁ……

 そだ、れいさんの字ってカンナちゃんから教えて貰った時…凄い綺麗な字だなって思ってたから……


「巴…巴さんじゃ、だめかな」


「ともえ……」

 そう言って、なんだか嬉しそうな感じの表情をしている。

 ほんとにさっきから綺麗としか思ってないけど…

 いや、ほんとにこの人は綺麗だ。

 そう断言出来る程に、れいさんは素敵な人だ。


 例え、どんなに可愛くて綺麗な人…クレオパトラとか紫式部とかいう人とかを連れて来られても私はれいさんが綺麗だって言う。


 それくらい、私はれいさんが大好きだから。


「うんっ、気に入ったっ」


「やった……ありが……」

 って言おうとした時……


 辺り一面が光に包まれる。


 もしかして…これが契約完了の証?

 それにしてはカンナちゃんの時とは全然違う……


 いやむしろ、深夜の時より激しくなってる気がする……


 これが本当の、契約の儀なんだ……


 しばらくすると光は消えて、れいさんと一緒に戻ってきた。

 何か軽くなった感じの雰囲気がしてるけど……何かしてきたのかな?


「ふぅ……」


「れ、巴さん?」


「あぁ、大丈夫だよ。私はここにいる」


「それなら……良かったっ」

 ほんとに、ほんとに良かった……

 でも何か覗かれた気がするのは気のせいかな?気のせいということにしておこう。


「んー……なんか疲れちゃったや……」


「あたしもだ……」


「私もかな……」


「それじゃあ、帰るとしますか。私達の家に!」


「うんっ!」


「ああ」

 そう言い、私たちはビルの扉の方に向かう。

 そういえば……不法侵入だからバレたら大騒ぎだ……

 とりあえず、バレないように帰らないとな。


 そう思っていると……


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 ━━━━━

『廻転、ゆらゆら』


 何…?今の、ノイズ…

 それに、何か……白い人の幻影みたいなのが頭に入ってきた気が…


「葵ちゃーん?」


「は、はーいっ」

 不安と不穏を抱えて、私はれいさん…もとい巴さんと一緒に帰ろう。


 私たちの家に。


 to be continued


 <用語解説>

 地獄

 地獄とは文字通り、罪人が行くべき場所。

 行くべき、ではなく強制的に落とされる場所である。

 詳しいことは人間界の書物には記されていない。

 ただ分かることは、そこは残酷な居場所ということ。


 地獄のようなことを、何千、何万、何億と繰り返し、やがて地獄の亡者になるまで繰り返し続ける


 地獄の入口には必ず、地獄の亡者が映し出す幻影が待っていてそれに気づいても気づかなくても最後、亡者の手が襲い地獄へと引きづりこむのである。


 巴

 1000年前から存在する狼の土地神であり主人公。

 まだまだ謎が多く、よく掴めていない葵の式神となった。

 そのため澪というのは真名であり、現代に現界するための名前は巴ということになる。

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