君と僕 ある夫婦の軌跡
風見 理央
おやすみと罰金
僕が眠くてたまらない時、
決まって君は、僕の寝入りを邪魔する。
「ねえ、私のどこが好き?」
「……かわいいところ」
「具体的には?」
「……口がぷにぷにしてるところ」
「他には?」
「……目がぱっちりしてるところ」
「それから?」
「……」
「ちょっと、寝てる?」
「お願い、寝かせてよ。眠いよ……」
「しょうがないなぁ。じゃあ、先に寝たほうが
罰金ね!」
「……罰金は勘弁して……」
「ねえ、ねえ?」
君はくすくす笑ってる。
本当は、その笑顔をずっと眺めていたいのに、
まぶたがどんどん重くなっていく。
いよいよ、糸が切れるみたいに眠りに落ちた。
――翌朝。
「はい、罰金! 100万円!」
いつもの笑顔に、いつものセリフ。
僕はいったい、君にいくら借金してるんだろう。
「一億円たまったら、どこか旅行に連れて行ってね!」
「……どこがいい?」
「んー、秘密!」
君はいたずらっぽく笑う。
その笑顔を見ていたら、なんだかもう、
罰金が増えていくのも悪くない気がしてきた。
−−−
これは「君」と「僕」の、
ほんの少し照れくさくて、
ちょっと可笑しくて、
そしてたまらなく愛しい日々の記録です。
一緒に暮らすって、
すこしずつ愛を積み重ねていくこと。
夫婦になってからも恋をしている、
そんなふたりの掌編をお届けします。
次回は
「ある日のフラペチーノ」
をお送りします。
また皆さまにお会いできますように。
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