絶望を救ってくれたのは陰陽師様でした

夜神あまね

1話

走って走って逃げて逃げて。もっとはやく。


もっと、___


逃げたってまた捕まる。だけど、それでも…。


力の限り足を動かした。迫るバイクの低音。私の名前を叫ぶ声。鳴り止まないスマホの通知。まるで逃げられないと言われているようだ。



もう限界だった。足が痛い。家と学校の往復以外滅多に外出しない私は土地勘がない。


知らない場所まで来た。ここがどこかもわからない。知らない人に化け物でも見たような顔つきで見られている。


お母さんが小さい子に見ちゃダメよなんて言っていた。


そんな視線はもう慣れっこだ。ふと立ち止まり足元を見れば、砂利が素足に絡みつき血が流れてる。


ぽつりと水滴が垂れる。



私、泣いている?



最後に流した涙はいつだっただろうか。思い出せない。私は悲しんでいる?違う。捕まりたくないだけ。


上手く息ができない。どこか遠くへ行きたい。弱い体ではいつもそれは叶わない。息があがって苦しくなる。


たぶんまだ数100メートルも走っていない。どうせ逃げたって捕まる。



「何してんだよ、どんだけ迷惑かけたら気が済む?」


ほら。神様なんていない。もう許してほしい。


いつの間にか乗せられたバイク。私にヘルメットを被せ、彼は電話をしていた。スマホの通知が鳴り止んだ。


もう何もかもがどうでもよかった。逃げてもどうにもならない。逃げられない。もし次の人生があるのだとしたら


立ち向かえる強さがほしい。強い自分でありたい。


今日がはやく終わってほしい。

この人生がはやく___


言葉にする前に強い衝撃と共に世界が反転した。目の前には横になったバイクと血溜まりと彼。


誰かの叫ぶ声がする。頭が真っ白になる。


あぁ、死ぬってこういうことか。







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