第43話:バーチャル喫茶・春風で、もういちど、扉をひらこう。
配信が終わったあと、
私は、パソコンの画面をじっと見つめていた。
──今日は、同時視聴者25人。
少しずつ増えてきたとはいえ、
画面に映る数字は、まだ小さい。
だけど、それでも、
この数字の向こうには、
確かに笑ってくれた顔がある。
──もっと、みんなに楽しんでもらいたい。
──もっと、春風を広げたい。
私は、
胸の奥にふわっと生まれた想いを、
そっと両手ですくい上げた。
「よしっ。」
小さく息を吸い込む。
──何か、できることはないかな。
私は、ノートを広げた。
「週に一度、テーマトーク配信をしてみる?」
「リスナーさんが参加できるハッシュタグを作る?」
「たまには夜遅い時間にも配信してみる?」
思いつくまま、
ペンを走らせる。
──小さなことでも、いい。
──少しずつでも、いい。
私は、
自分の手で、
また扉をひらいていきたい。
ふわりと、春風を呼びこむために。
次の配信告知には、
新しく作ったハッシュタグをつけた。
【#春風おしゃべり会】
「みなさんのお話、たくさん聞かせてくださいっ!」
そう、ポストしたあと、
私は画面の向こうにそっと祈った。
──どうか、この春風が、
誰かの心にふわりと届きますように。
──また、あしたも。
誰かの今日に、
そっと春風を届けられますように。
私は、エプロンのすそをぎゅっとにぎった。
バーチャル喫茶・春風。
今は、画面越しに咲く、小さな春風たち。
だけど──
きっと、もっと大きな輪にしていける。
私は、
胸いっぱいに、次の扉を見つめた。
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