第27話:バーチャル喫茶・春風で、はじめての春風ミーティング。

カランコロン。


バーチャル喫茶・春風に、

今日もやさしい光と、ふわり甘いハーブティーの香りが広がった。


だけど、

今日はいつもより、ちょっとだけ空気がそわそわしている。


あかりちゃんも、

花音ちゃんも、

ユウくんも、

ハルノさんも。


みんなが、わくわくした顔でカウンターに集まっていた。


「じゃあ──はじめますっ!」


私は、胸いっぱいに声を出した。


「第一回っ! 春風ミーティングですっ!!」


「わーっ!」


「ぱちぱちっ!」


あかりちゃんと花音ちゃんが、ぱたぱたと手をたたいた。


ユウくんも、

カフェオレをくるくる回しながら笑った。


ハルノさんは、

静かに微笑んでいる。


「今日は、リスナーさんたちと一緒に楽しめる、

 小さなイベントを考えたいんですっ!」


私は、エプロンのすそをぎゅっとにぎった。


「まだ、ちいさな輪だけど……

 だからこそ、みんながあたたかくつながれるようなことがしたいなって!」


「いいですねっ!」


あかりちゃんが、ぱあっと顔を輝かせた。


「たとえば、

 リクエスト曲を歌うとか、どうでしょうっ?」


「リクエスト配信かぁ!

 それ、楽しそう!」


ユウくんが、カフェオレを飲みながらうなずいた。


花音ちゃんも、

そっと手をあげた。


「私は……

 リスナーさんたちと一緒に、春風のイラストを募集するのも楽しそうだなって思いました!」


「春風のイラストっ!」


私は、ぱあっと顔を輝かせた。


──リスナーさんが、

画面の向こうで、

自分たちの春風を描いてくれる。


それだけで、

胸がジュワジュワあたたかくなる。


ハルノさんは、

コーヒーをひと口飲んでから言った。


「みんなで何か作るっていう方向、いいと思う。

 参加しやすいし、思い出にもなる。」


「うんっ!」


私は、思いきりうなずいた。


「ほかにも、

 みんなで同じハッシュタグを使って、春風を広げるっていうのも、素敵だと思いますっ!」


「『#春風を届けよう』とか?」


あかりちゃんが、目をきらきらさせた。


「いいっ! それっ!」


ユウくんも、

にかっと笑った。


花音ちゃんも、

両手をぎゅっとにぎった。


「やりたいですっ……!」


私は、ノートを広げながら、

みんなのアイディアを一つひとつ、丁寧に書き留めた。


──どれも、小さくて、あたたかいきっかけ。


──どれも、春風をもっと遠くに運んでくれそうな、やさしい種。


ジュワジュワと、

胸のなかにあたたかい音が満ちていく。


「春風ミーティング、大成功ですねっ!」


私は、にこにこしながら言った。


「うんっ!」


「はいっ!」


「もちろん!」


「だな。」


みんなが、

笑顔で答えてくれた。


バーチャル喫茶・春風。


今日もここには、

ちいさな奇跡たちが、

やさしく、にぎやかに芽吹いている。


──また、あしたも。


誰かの今日に、

そっと春風を届けられますように。


私は、エプロンのすそをぎゅっとにぎりしめた。

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