第7話 従兄弟と再会

ゲンが午睡に襲われ不規則にその首を傾ぎ戻しで30分、ゆっくりと応接室の扉が開かれた音を彼は拾った。

急いで背後を見れば、そこには11年ぶりの従兄弟がいた。


「ありがとう。お客様と話をしたいので、庭の手入れをお願いできますか?」

どこかの貴族かと思うほどに気品に満ち溢れた物腰と、言葉の端々から感じられる高尚な響き。

「かしこまりました」

使用人アンドロイドが扉を閉めて去ると、柔らかな笑みをたたえた男から位の高そうな輝きがきれいさっぱり抜け落ちた。


「・・・っ?」

「久しぶり。元気にやってる?」

ぱたぱたと歩いてソファに座った従兄弟は、先ほどとは違い人懐こい笑みを浮かべて用意されていた紅茶をぐびっと一口飲んだ。


「あっつ!」

「えっと・・・すみません、俺・・・」

「あー、困惑させちゃってごめんね。顔も憶えてるかわかんない従兄弟にこの状況じゃ、わかんないよね」

ははっと楽観的に笑い声をあげて、従兄弟は身に纏った高貴な服を気にせず脚を組んだ。

「えっと、俺は23で、ってことはゲンはー・・・」

数とともに折られる指の数は、3と5の間を行き来していた。


「ん?あれ?」

数えなおしに夢中になった従兄弟は、だんだんと前のめりになって体勢が崩れゆくのに気づかない。

組まれた長い両脚がその主の重心を保つ一助を担うことは、残念ながらなかった。

「あの、あぶな・・・」

「うわぁっ⁉︎」

ガシャンッと大きな音がしたかと思うと、案の定従兄弟は前のめり気味にソファへ倒れ込み、同時に勢いよく払われた陶磁器のカップも盛大に床に叩きつけられて割れていた。


「ごめん!またやっちゃったよ。せっかく庭の手入れをお願いしたのに、呼び戻さなくちゃいけないね」

申し訳なさそうな笑みを見せると、従兄弟は指を少し動かしてシステムを起動させ、庭にいる使用人アンドロイドを呼び出した。


「どうされましたか」

「申し訳ないのですが、手が滑ってしまって。片付けをお願いしても良いでしょうか」

「もちろん、よろこんで」

ゲンの目の前の従兄弟は再び、先ほどのお貴族様へと戻っていた。


使用人アンドロイドは従兄弟の失態の痕跡を器用に片付けたが、破片を片付ける途中、その鋭さに指からは赤い液体が一筋流れていた。

拾い集めていた手を一瞬とめ、顔が引き攣ったのはそのせいだった。

人間さながらに造られた柔軟な肌は、年代物の陶磁器の鋭さには敵わなかったらしい。

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