喫茶・De・キッサ
リガル
1組目 : 時川計 x 綾藤希凪
「お、あそこ空いてる。
「助かる。テーブル席が空いててよかったな」
「だね。それにしても、意外といい喫茶店知ってるじゃん計。どこで知ったの?」
「前にちょっと騒がしい街に行った時に、たまたま入った店が当たりでな。そこの支店だよ」
「騒がしい街? 新宿とか?」
「いや、もっとおかしな……まあそれはいい。言ったって信じられないだろうしな」
「ふーん? まあいいけど。それで、何頼む?」
「そうだな……コーヒーは避けたいが……」
「そういえば計コーヒーダメなんだっけ? やーい子供舌~……まあ俺も飲めないけど」
「同類の癖に何煽ってるんだ。お前砂糖山盛りでも飲めないだろ」
「ちょっとでも苦いのは苦手なんだよ……コーヒーゼリーとかも。あれ食べれる人凄いよね」
「コーヒー味のアイスとかもあるよな。あれを食べる未来が俺には見えない」
「まあ無くていいんじゃない? 他にも美味しい飲み物は沢山あるんだし」
「ああ。ここの店もコーヒー以外もちゃんと置いてるからな。ほら、メニューだ」
「ありがと。俺は紅茶かな……ミルクティーにしようっと。計はどうする?」
「俺は……そうだな。カフェラテにする」
「え!? コーヒーは飲まないんでしょ!? どういう事!?」
「……カフェラテとコーヒーは違うだろ」
「一緒だよ!? いや違うんだけど、コーヒー嫌いにとってはほぼ同じでしょ!?」
「……この前飲んでみたら案外美味しかったんだよ。別にコーヒー無理でもカフェラテ飲めるやつはいるだろ」
「そりゃいるけどさ、そもそもなんでカフェラテ飲んでみようと思ったの? コーヒー苦手なのにカフェラテ、あんまり飲まないよね?」
「まあ、その……成り行きというか……」
「え、なんか怪しい。計、なんかあったでしょ。俺のカンだと交友関係で」
「……………………そんな、ことは、ナイ」
「これは計の為を思っていうんだけど、計嘘つくの向いてないから今すぐやめた方がいいよ」
「なんでだよ!? ああもう、似たようなもんだ」
「そ、まあ今は一旦聞かないでおいてあげるよ。色々ありそうだし」
「色々あったんだよ、本当にな。できればそうしてくれ」
「うん、じゃあ今は聞かない。――まあ今度
「おい、お前の彼女その手の話題大好きだろうが!」
「なんかすごい目をキラキラさせて聞いてくる気がするよね」
「あれが悪意だったらもっとどうにでもできたんだけどな……」
「なんて言うか計って、純粋な善意に弱いよね。心から計の事を思って言ってる言葉を拒絶しにくいって言うか。優しい人に弱いの?」
「そんな事は……まあ、無いとも言いきれないな……」
「大丈夫? 将来ツボとか買わない? 俺心配だよ、計の家に要らない現代絵画が山積みになってたりしないか」
「買うわけないだろうが。……とは言いきれないのがああいう商売の怖いところなんだよな。
「えー? 流石に分かるって。子供じゃないんだから」
「そう思ってる奴が一番危ない。もしお前が高額商品を買う事になったら、必ず俺を通せよ」
「なんだかんだ言いつつ心配してくれるのが計の良いとこだよねー。もう少し素直になったらもっとモテると思うんだけどなぁ?」
「余計なお世話だ! っと、飲み物が来たぞ。――ああ、ありがとうございます」
「ありがとうございますー。ふう……やっぱこれだよね……」
「美味そうに飲みやがって……ん、このカフェラテもかなりいいな。次回候補だ」
「へー、開拓成功?」
「そういう事になるな」
「おめでと。これで美味しくなかったら安物買いの何とやらだもんね」
「ここは安めとは言っても、400円払って不味い液体を飲む羽目になることもあったわけだからな。心にも財布にもダメージだ」
「時給幾ら分が消えるかな……そういえば計ってまだバイトしてるんだっけ?」
「ああ。父さんの会社の一部門でな。名目上はインターンって事になってる」
「その辺の大人より全然働けてそうだよね。実は400円とかそんなに痛くないんじゃない?」
「なわけ無いだろ。そもそも最近は稼働も減らしてる。来年は受験だからな」
「あー……そっか計は来年受験なんだ……うわー、考えたくないな……」
「希凪の方こそどうなんだ。前にイタリアンレストランのバイトに通ったって話してただろ」
「あ、そうそう。結構楽しいよあそこ。お客さんも親切だし、先輩たちも優しく教えてくれるから。あと、パスタが美味しい」
「お前ちゃっかり宣伝しに来てないか? しかし、なんかそういう所は大学生くらいじゃないと採用されないイメージだったが、意外と働けるんだな」
「それ俺も同感」
「おい、お前は理由くらい知っとけよ」
「うそうそ、まあ多分色々理由はあったんだろうけど、小学生の時から毎日料理してたのが大きかったっぽいよ」
「そういや、希凪の家もそうだったな。それで自分で料理する発想になるのがすごいが」
「まー、俺はそれしか選択肢なかったしね。計の家とはまた事情が違うと思うよ。俺の家にはメイドさんいないしねー」
「メイドってなんだ、ただのお手伝いさんだろ」
「合鍵まで渡してる女性が何度も計の家に来て二人きりなんて……!」
「気持ち悪い言い方すんな!!
「え、そうなんだ。前に会った時ケーキ作ってくれた人だよね。なんかめっちゃ恰幅のいい」
「ああ、合ってるぞ。男四兄弟の母親って言ってたっけな……異常に家事スキルが高いのも納得だ」
「せめて可愛い女の子だったら良かったんだけどねー。流石に母親世代は厳しいか」
「忍たま乱太郎のおばちゃんみたいな相手にどうやって可愛さを感じるんだって話だな。まあいい人ではあるんだが」
「すごいいい人だったよね。めっちゃ笑うし、話し上手で聞き上手だし。……ああいう人がお母さんだったら、毎日楽しかったのかな」
「かもな。じゃあお前、あそこの家の子供になりに行くか?」
「あはは、答えなんて分かってるくせに。計こそどう?」
「その言葉、そっくりそのまま返してやる」
「ま、そういう事だよね」
「そういう事だ」
「……なんか湿っぽくなっちゃったね。話題戻そっか」
「ああ、どこまで戻る?」
「じゃあ話を戻すとして、計はメイドさん好きなの?」
「どこまで話戻してるんだよ!? そこなのか!?」
「そりゃここでしょ。ここが一番面白い話なんだから」
「いつかのフェチの話といい、こういう話に食いつくなよ!!」
「あの時は計にも聞かれたんだからお互い様でしょ!? で、どうなのさ実際」
「まあ……ぶっちゃけ、嫌いなやつはいないだろ」
「おおー、意外。もっとなんか恥ずかしがるかと思ってた」
「俺の事をどう思ってるかがよく分かるな。実際
男の夢みたいなもんじゃないか? 可愛い子がメイド姿で働いてくれるっていうのは」
「正直、否定できないね……」
「色々言った割には希凪も同類なのかよ」
「だってまあ……ぶっちゃけ好きだし……」
「程度の差はあるだろうが、大体みんな好きなものではあるよな。メイド喫茶なんてものが商売として幾つも成立してるんだから」
「メイド喫茶ねー、俺まだ行ったこと無いんだよなー。1回くらい行ってみたいんだけど」
「なるほどな、希凪はメイド喫茶に行きたがってる……と」
「悪意ある切り抜きだって!? 興味本位!! 興味本位だから!!」
「お前の彼女に連絡しておくぞ。今度二人で行ってこいよ」
「やだよ!? いや、詩音と二人で行くのは別に全然良いけど、なんで計から告げ口されるの!? それくらい俺から誘うって!!」
「ほんとか? 聞いてる限り、お前最近バイトが忙しくて誘えてないんだろ」
「待ってそれ誰から聞いたの!?」
「当人だが?」
「なんか俺の知らないところで詩音と計が仲良くなってるの嬉しいけど複雑だよ!? 前バレンタインチョコもらってたよね!?」
「お前に渡す前にな……あの後にお前に渡してる時の顔を見せられて、俺はどうすればよかったんだ」
「流石に俺に言われても困るんだけど……。美味しかったなら良かったくらいしか言えない」
「まああの時もらったやつはどれも美味かったな」
「そっかそっか。ん? なんか今気になること言ったような……」
「どうかしたか?」
「いや、なんでもない。多分気のせいだと思う」
「そうか。ならそろそろ、やるとするか」
「えー……ほんとに? もうちょっと話しててもいいんじゃない?」
「お前の方から誘っておいてそれを言い出すか? いいからさっさと教科書を出せ」
「まったく、なんで世の中にはテスト勉強なんてのがあるんだろうね……」
「お前は基礎はしっかりしてるんだから、ちゃんとやればそれなりに取れるだろ。愚痴ってないでやる気を出せ希凪」
「はいはーい。ていうか計、最近結構勉強してるよね? やっぱ受験?」
「ああ。一応志望校も決まってる」
「へー、どこなの?」
「それはまだ秘密だ。次の模試でいい結果だったら教えてやる」
「えー、もしかして低い判定取るのビビってる?」
「うるさい、そういうわけじゃ……」
「大丈夫でしょ。計頭もいいし、努力家だし。落ちる心配とかしなくたって」
「……ふん。そういう希凪の方は、直近のテストすら厳しそうだけどな」
「マジで助けて!! 物理基礎なんにも分からない!! 合成力ってどういう事!? 固定端って何!?」
「あーもう、一つずつ順番に教えるから待ってろ。まずはだな……」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます