第21話 あ、あかーん!
「——レドルト、今日は何が食べたいですか? この部屋、食材はなんでも揃っているらしいんです。なんでも貴方が望むモノを作りますよ。初めての私の腕の見せ所ですね」
セルフィリアが冷蔵庫のような魔導具の中身を確認したのち、ひょっこりキッチンから顔を出して少し弾んだ声で聞いてくる。なんで美少女ってエプロンを着ただけでこんな可愛くなるんだろうね。
「そうだなぁ……食いたいもんなぁ……」
正味俺が食べたいモンなんて、この世界には無い物が殆どだからなぁ。
「リネア、なんか食いたいモンある?」
「んー、やっぱ唐揚げっしょ! レドレドも唐揚げ好きだったくね?」
「味覚お子ちゃまよな、お前。いや、俺も唐揚げは好きだけど。寧ろ大好物だけど」
「では、今日はスメリーバードの唐揚げにしましょうか」
「「スメリーバード!! やったー!!」」
セルフィリアの言葉に、俺達は両手を上げてどんちゃん騒ぎ。
スメリーバードとは、世界で最も上手い鶏肉とされる超絶希少な食材だ。流石金持ち学園。備蓄している食材もレベルが違いますね。ほんと、人生で一番感謝してますミリアちゃん。
「それでは少し待っていてください。腕によりをかけて作りますから」
「「サンキューリアリア!」」
「リネアさん、その呼び方はやめてください」
「えー、ぶーぶー」
鋭い目を向けられたリネアが不満そうに頬を膨らませるが、セルフィリアはガン無視して料理に取り掛かり始める。やっぱりリネアには駄目だったらしい。俺もイケると思ったんだけどねー。
「ちぇー、やっぱダメだったかー」
「惜しかったな。でももう数日経ってればイケるんじゃね? ——つーか、話は変わるんだけどさ、目星は付いてんの?」
「ん? もちもち。ほら、あーしは天下無敵のギャル諜報員だしー?」
リネアがキャピーンと自己発光してそうな明るい笑顔でピースをする。てか自分で言うなよ。どう考えても自分で言うもんじゃないでしょ。まぁ俺が言ってるのもお前の受け売りだけどさ。
「はぁ……ミリアちゃんは何してんのよ。アイツの手に掛かれば諜報員くらいちょちょいと消せるくせにさ」
「ミリアちゃんはそんなことしないっしょ。あの子はあーしかレドレドが何かないと動かないじゃん」
「……ま、それは確かに」
ミリアは——最強だ。
確かにセルフィリアは学園の中でもトップクラスに強いし、この世には強い奴はごまんといる。それは疑いようのない事実だ。俺だって何人、何十人、何百人と見てきたつもりである。
だが、それでも俺は断言しよう。
——最強は、ミリアだ。
アイツは文字通り次元が違う。
ミリアちゃんミリアちゃん揶揄っているが……仮に真剣勝負、なんでもありの死闘になれば——どれだけ俺が画策しようが。どれだけ用意周到な準備をしようが。どれだけ【死亡強化】を発動させようが……辿り着く結末は変わらない。
——完膚なきまでの敗北。
俺は多分、死ぬまで彼女を越えられないだろう。いや、越えられない。
人生で初めてだった。前世も合わせて、生まれて初めての感覚だった。
彼女と出会った時、彼女の戦いを見た時——俺は悟ってしまった。
——ああ、彼女は俺の理想の姿なのか、と。
理想とは、叶うものではない。
理想とは、夢や目標ではない。
理想とは、幻想で現実ではない。
つまり、ミリアちゃんを見た瞬間、俺は彼女を越えられないと理解したのだ。
同時に、俺は彼女を越えることを諦めたのだ。
とまぁ俺の昔話は置いておくとして、何が言いたいのかというと。
ミリアちゃんがその気になれば諜報員とか一瞬だよね〜という話だ。
「はぁ……ほんと、物騒な世界」
「それなー」
「お前も十分物騒な部類に入るけどな」
「レドレドもねー」
ほんと、物騒な世界。
俺は天井を見上げ、小さくため息を吐いた。てか鬱陶しいくらい綺麗だね、照明魔導具。
あと、スメリーバードの唐揚げと結婚したいくらい美味しかったです。
「——なぁ、どうしてお前ら付いてくんの?」
次の日の朝、俺は死んだ顔で左右に目線だけを向ける。
左には、紆余曲折あってお姉ちゃんとなった地雷アリ、ヤンデレのセルフィリア。
右には、昔の相棒で、この学園に潜入してきた天下無敵のギャル諜報員のリネア。
だが、その内情は知らない者には——ただの美少女にしか見えない。
まぁつまりは、だ。
——物凄く視線が痛いんですけど!!
俺は視線だけを周りに向ける……が、直ぐに生徒の内の誰かと目が合う。
そこからスッと目を逸らせど、時を待たずに直ぐ様別の生徒と目が合う。いや見過ぎだろ。俺はサーカスの道化じゃないぞ。これ以上見んなら金取るぞコラ。
「おいなんだよアレ……」
「なぁ……あの人ってセルフィリアさんだよな……? なんであの赤点と一緒にいるんだ?」
「いや俺に聞くなよ、知らねぇよ。てかなんかもう一人めっちゃ可愛い子いるし。なんなんだよあの赤点、ズルすぎるだろ……!!」
おい誰が赤点だよ、せめてもうちょいマシなあだ名付けてよ。もうその名前は人間じゃないじゃないか。俺は人間です。
「なぁ、1つ提案があるんだけどさ」
「却下です。弟を護るのはお姉ちゃんの務めですから、登下校という一番危険な時間帯に貴方を1人にするわけにはいきません」
頑として意見は変えないと言いたげな強い意志の灯る瞳を俺に向けるツートンカラーの少女。まるで俺の提案を分かっているような口振りだが……。
「俺、まだ何も言ってないんですけど」
「あーしもヤダよ? そもそもあーしら3人一緒に住んでるわけだし、別々に行くのとかちょー効率悪くない?」
「あ、おいバカッ!!」
俺は咄嗟にリネアの口を塞ごうとするが——もう遅かった。
「「「「「「——一緒に住んでいる?? しかも3人で……??」」」」」」
か、帰りてぇぇぇぇぇぇ……!!
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