第12話 嘗ての親友と似ている人(途中からセルフィリアside)

「——あのクソメイド、性格悪すぎだろ。流石の僕もびっくりだよ」


 俺にとっては一瞬、現実時間にして——5時間強。

 アイデンティティとも言える俺のスキル【凡人強化デマイス・アップグレード】が無事発動し、五体満足で生き返った俺は、胸に刺さっていた短剣を《解析アナライズ》しつつ顔を顰める。

 どうやら確実に殺すために、この世界でもトップクラスの猛毒を塗りたくっていたらしい。いやいややり過ぎだよ。雑魚相手になんて物使ってるんですか。 


 因みにこの剣に塗られた猛毒——『竜殺し』は、文字通り竜すら殺せると噂されるほどの代物だ。オマケに臭いもなく流通量も微々たる物ときた。チートです。

 まぁ実際のところは竜の化け物再生力を下回るレベルで殺せないが。


 ……うん、効きすぎな。

 人間に使うのは反則だろ。これには審判もビックリだよ。イエローカード抜かしてレッドカード10枚出すよ。審判、永久追放を所望します。あのクソメイドはラフプレー専だと思います。


「……でもラッキー。コイツ、闇市でしか売ってないんだよなー」


 しかもバカ高い。1度見たことある。マジ、目ん玉落ちて踏み潰すくらい高い。

 アレを買うのはマジで金持ちな奴らだけ。しかも悪徳。ご禁制だし。


 俺は《解析アナライズ》と錬金魔法で失敗した時に使う汎用魔法——《分離》を駆使して血と毒を分ける。

 あとは劇薬用の小瓶に念動魔法で入れて終了。

 小瓶があるのはレオパタ先生に貰ったからである。レオパタマジ愛してる。


「……さて、と」


 よっこらしょ、と爺さんみたいな声と共に立ち上がる。

 空を見上げれば、まだまだ星々が我が物顔で君臨していた。お前ら元気だね。

 

「これからどうやって仕返ししよっかなー」


 俺はもしもアイツらが戻ってきた時用に血はそのままにしつつ、第二の実家(森の中の小屋)に向かいがてら、思考を巡らせる。


 今回のスキル発動で手にしたのは、主に3つ。


 1つ——ちょっとした毒の免疫。しぶっ、もっとくれ。

 2つ——前回の発動から溜まっていた経験の昇華。まぁ多少って感じ。

 3つ——クソメイドの魔法。これ、ヤバいっす。


 上2つは正直いってあんまり喜べた物ではないが……最後はマジで有能。俺の戦い方にベストマッチ。……あのクソメイドの魔法じゃなかったらなぁ。

 まぁでも、それを込みに考えても素晴らしい力だ。なんとか死ぬ前までに結論が出せてたお陰。良くやった俺。愛してるぞ俺。

 ただもちろん、使うにあたって問題がないわけないのだが……。

 


「——んじゃ、早速準備に取り掛かるとしますか」



 俺は小さく笑みを零し、闇の帳に姿を消した。

 服に血が付いてるから殺人鬼みたいだった。









 ——私は、また人を死に追い込んでしまった。


 これで、2人目だ。


 1人目は、私——セルフィリア・クラウス・ソラスリストが10歳の頃の親友。

 2人目は、親友に良く似た思考を持った同級生の男の子。


 どちらも、私に真実を突き付けてくれた人だった。

 どちらも、私の話を聞いて無下にせず、寄り添ってくれた人だった。彼の場合は心の内がどうだったのか分からない。もう聞くことは出来ない。



 そして、どちらも——凡人で、諦めない人だった。

 

 

 嘗ての親友は言った。


『リアちゃんの考え方……私、好きじゃないな。私は、過程も大事だと思う。もし結果が良くなくても良いんだよ。今回はこうだったけど、次はこうしたら……って色々考えられるでしょ? 私はそんな考える時間が好きだな。それに——結果ばっかりだったら……心が持たないよ』


 親友は、酷く大人びた人だった。とても私と同い年だと思えなかった。

 勉強熱心で、私の魔法を、特訓を見ては、良い所と悪い所を的確に教えてくれる人だった。彼女のお陰で今の戦闘スタイルが確立していると言っても過言ではない。


 ——親友であり、家族以上に信頼出来るお姉ちゃん的存在だった。


 でもある日、結果が芳しくなかった私はお父様に親友との話をしてしまったのだ。

 こんなに頑張った。だから次は出来る、そう言いたかったけど……その言葉を聞いた瞬間に、お父様は血相を変えて私を追い出した。


 その話を親友にしたら……彼女は優しくも儚い微笑を称えて言ったのだ。


『——私ね、お姉ちゃんがいるんだ。でも、お姉ちゃんはリアちゃんと同じことを言うの。そして、いつも1人で泣いてるの。だからね、リアちゃんに見守ってて欲しいんだ。——約束だよ』


 最初、その言葉の意味が分からなかった。

 どうしてそんなことを言うの、と聞いても笑うだけで教えてくれなかった。


 その言葉の意味が分かったのは——1週間後。

 

 再び呼ばれた私がお父様に呼ばれてお父様の部屋に行ったら——親友は、首だけになっていた。

 美しい輝きを放っていた黒い目は濁り、焦点は合わず、いつもの笑顔はない。首にはアザのようなモノがあった。

 目の前が真っ暗になった。怒りも、悲しみも感じない。あまりの非現実的な光景に夢だと思った。



 でも、涙の跡のあるその顔は——酷く冷たかった。



 呆然とする私に、お父様は言った。


『お前にあんな腐りきった考えを植え付けたのは、この屑らしいな。しかも才能の欠片もない雑魚。そんな塵と付き合って良いなどと、私は一言も言ってないが? 良く覚えておけ——結果が全てだ。結果の残せん塵は、死ぬだけだ』


 それから私は死に物狂いで結果を出し続け——学年首席に登り詰めた。

 そこになんの喜びも、感慨もなかった。



 そんな時私の前に現れた——親友と同じ、凡人で、諦めない人。

 私が嘗て憧れ、大好きだった黒い瞳をしていた。


 

 親友が生まれ変わって私の前に現れたのかと思った。そんなことあり得ないと分かっていながら気になって仕方がなかった。

 だから、なんとしても彼のことが知りたかった。

 家の力は頼れないから、自分でなんとかするしかなく……結果的にストーカー紛いの方法になってしまったが。


 我ながら強引な手段だと思う。

 でも、それでも——彼のことが知りたかったのだ。

 

 この学園内なら家の力も及ばないし、校則で付き人を寄越すのも禁止になっているため、私は完全に独立している。だから大丈夫だと、そう思っていた。



 その結果——2日前、嘗ての親友と同じ末路を辿らせてしまった。



 全て、私のせい。私が彼を殺した。私が、悪い。

 本当に死ぬべきだったのは、私。生きていてはいけない存在。

 死ねばよかった。あの場で一緒に死ねばよかった。


 きっと2人は私を恨んでいるだろう。

 でも、それで良い。赦さなくて良い。

 寧ろ、恨んでいて欲しい。

 そして再び私の前に現れて、首を締めて。首を斬って。心臓を穿って。ありとあらゆる方法で私を殺して欲しい。


 …………あぁ、死にた——


 



「——ふーん……王都のセントリエ公園に男子生徒の亡霊、か」





 誰かが言った。

 それが誰か分からない。だが、そんなの関係なかった。

 

 その誰かは言った。——セントリエ公園と。

 そして彼が殺された場所は——セントリエ公園。


 気付けば——私は走り出していた。

 皆んな驚いている。これから授業をしてくださる先生も何か言っている。


「——すみません、早退します!」


 だが、それら全てを無視して——私は衝動に任せて足を回した。








「——ったく……これで借りはチャラだからな、相棒」


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 第1回補足のお時間です。

 レドルトが使った《解析》は、自身の知っている物しか解析出来ません。

 知らない物は《???》と表示されます。文字は魔力が空中に描きます。

 

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