第7話 教えて、レドルト先生!

「——これより、偉大なるレドルト大先生の特別授業を始める!!」


 俺の気合の入ったハキハキとした声が魔法修練場に響き渡る。我ながら中々に良い。声優目指そうかな。

 なんて自画自賛する俺に反発する者が若干名。


「まだ生物学の補習が終わっていないのに何を言っているのですか?」

「うんうん。それに自分で偉大を付ける辺り、高が知れてそうだね」


 なんか五月蝿い生徒だな。


「はいそこ静かに。授業での私語は厳禁だって学園に入って1番に習わなかった? 今回は俺の大きな器に免じて見逃してあげるけど、次からは見つけ次第直様つまみ出すからな」

「私が居ないとここは使えないけどね」

「今日の錬金魔法の授業で私語を注意された人が言えた義理はありませんね」


 ちょっとー、ルイルイ〜、リアリア〜、少しは乗ってよー。


「……何故でしょう、物凄く寒気がしました」

「奇遇だね。私も震えが止まらないよ」


 なんて、不思議そうな顔をしつつ、寒そうに震えて自らの腕を抱いてさするルイーゼとセルフィリア。

 二人とも平熱が低いのかな。

 因みに俺は高い方。いつでも手を温める準備は出来てます。まぁ手を握ってくれる彼女は居ないけどね。


「それで、結局私はなんで今日のギリギリに呼ばれたの? レドルト先生って何?」


 独り身なことに気付いて萎える俺を他所に、俺の知り合いで魔法修練場の鍵を持って来れる唯一の人間——ルイーゼ先生が首を傾げる。

 全く、せっかちさんめ。直ぐに教えてあげるからちょっとくらい待ってよね。


 コホンッと咳払いを1つ、説明する。


「実はそこのナチュラルストー——もとい、セルフィリアに、昨日の《弾丸》を撃った方法をどぉーしても教えて欲しいって言われたですよ。そこでこの場所を借りれる先生の出番ってわけです」


 決して、学園外まで付き纏われるのが嫌なんじゃない。じゃないが……チョロチョロ周りを嗅がれるのも好ましくない。

 だから、1つくらい手札を見せてもいいだろうと承諾したのだ。


 しかし、俺の言葉を信じてない者が1人。


「……絶対嘘じゃん」

「本当です」

「ほら、やっぱり嘘——ええっ!?」


 スンッとした表情で俺の言葉を肯定するセルフィリアの返答に綺麗なノリツッコミを熟すルイーゼ先生。

 驚き過ぎて端整な顔がデメキンみたいな顔になっていた。そんなに信じられないのか……。

 

 些か俺の信用度が低過ぎる気がしないでもないが、これ以上考えるのはやめて、言葉を続ける。


「あと、先生が居てくれた方が安心ですし」

「れ、レドルト君……」

「主に俺をセルフィリアから守ってくれる要員として」

「教師をなんてことに使おうとしてるの!? 折角ちょっと嬉しかったのに、全部台無しだよ!」


 いやでも切実な問題なんですよ。

 セルフィリアは何処に地雷があるか分からんから、俺を守ってくれる人がいてくれないと、教師なんてやってられない。謂わば安全装置。銃でいうストッパーだ。


「ついでに先生には、この1ヶ月間大変お世話になったので、成果を見せたいんですよ」

「……いきなりは、ズルいと思うよ……」


 赤くなった頬を隠すようにフイッとそっぽを向くルイーゼ先生の姿に、俺の中の悪戯心が燃え上がりそうになるが。


「お二人がどのような関係でも良いので、早く教えてください」

「ちょっ、待って!? わ、私達は別に恋人とかそういう関係じゃ……」

「? 私は別に恋人とは一言も言ってませんよ」


 見事に墓穴を掘ったルイーゼ先生は、さらに顔を真っ赤に染め……ダダダッと駆け出したかと思えば、隅に膝を抱えて蹲った。

 当分使い物になりそうにない。俺の安全装置を1発KOとはやるじゃないか。

 

「レドルト先生、早く授業を」

「わーってるよ。お前にバレずに《弾丸》を撃った方法だったな?」

「そうです。普通そんなこと出来な——」



「——《弾丸バレット》」



 セルフィリアの言葉を遮るように、俺は魔法名を唱えた。

 同時に俺の人差し指からハンドガンの弾丸と同じくらいの魔力の弾が放たれ——驚愕に目を見開くセルフィリアの後ろにある的に当たった。


「これで分かったか?」

「……障壁、ですか……?」

「大正解」


 やはり理解の早いセルフィリアに、俺は満足気に頷いた。お陰で早く帰れそうだ。


「俺が昨日やったのも同じだよ。お前が目より魔力で戦況を感知・把握してると踏んで、俺の身体を守る障壁を作るついでに、俺の人差し指とその周囲のほんの僅かな空間を障壁で隔離したっつーのが真実だ。どうよ、いざ種が分かればつまらん技だろ?」


 天才には必要ない、技術とも呼べない技だ。

 あんだけ食い下がっておいてこの程度。さぞセルフィリアはガッカリしたことだろう。

 ま、彼女にどう思われようが俺の知ったこっちゃないが。


 なんて固まったセルフィリアから視線を切る俺に、隅で蹲ってたはずのルイーゼ先生が声を掛けてくる。


「へぇ……本当に上手くなってるね。始めに君が言い出した時は無駄だと思ったけど……魔力消費も極小。展開も速くて、しかも大きな障壁の陰で二重で使えば、あのセルフィリアさんでさえ気付かない隠密性……凄いよ、レドルト君!」

「そうでしょうそうでしょう! 先生、もっと褒めてくれてもいいんですよ!?」

「まぁ精々が《弾丸》レベルの魔法までしか隠せないのが玉に瑕だけどね」

「だめっ、言っちゃだめっ! それは言わないお約束!」


 俺がルイーゼ先生のお口のチャック代わりになろうと手を伸ばしつつ、セルフィリアに言った。


「これが昨日の種明かしだ。それじゃあ俺に付き纏うのはやめてよね」


 これにて万事解決。我ながら見事な手腕だ。

 少なくともこの時は、そう自負していた。










「——何してんの?」

「——貴方の生活が気になりまして」



 次の日の放課後、寮の俺とレイの部屋で、ニヤニヤと笑みを浮かべるレイと共にクッションに座っていたセルフィリアの姿を見るまでは——。


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