第19話 日記


「ハデルくん……なかなか良さそうな家ね」


「本当にそうだね。」


貴族の別邸というだけあってなかなかつくりが良さそうに見える。


レンガで出来たその家は小さな屋敷と言える程の大きさで、パッと見た感じはそんなに痛んでいる様な感じはしない。


「入ってみようよ」


「そうだね」


預かったカギを使い扉を開け中に入った。


入った瞬間、気温が数度下がった気がする。


それだけじゃない。


霧みたいな物が漂っている。


「ハデルくん、ここ凄く居心地がよいね」


「本当にそうだね、なんだか体が軽くなった気がする」


恐らく闇属性の何かが働いている気がする。


普通の属性の人間なら気持ち悪くなり、体が重くなるかも知れない。


これが恐らくは『呪われた家』と呼ばれる一つの原因だ。


聖女のマリアンヌ辺りが此処に立ち入ればきっと、物凄い心地悪さを感じるだろう。


「私も同じ、気のせいじゃないと思う。 私も同じように感じるから」


此処は屋敷なのに、まるで『冥界の洞窟』の中に居るように感じる。


きっと、冥界の騎士の俺と冥界から来たルミナスさんだからの心地良さだ。


これでこの家は『呪われている』という可能性は兎も角『闇』や『冥界』に関わりがある事は間違いない。


これから、中を見てからだが、俺やルミナスさんにとっては他の人間と違い今の所『此処は良い家だ』


あとは、この力がどう言う風に呪いに関わるのか、その原因がわかり俺達に害がないなら、この家は買いだな。


「折角だから、色々見て回ろう」


「うん、だけど、見れば見る程立派なお屋敷だわ、家具も見た感じそのままだし、凄く贅沢な作りだわね」


天井からはシャンデリアがぶら下がり、この世界では貴重な大きなカラクリ時計があり、価値は分からないが美術品もそのままだ。


この屋敷が呪われていなければ、異世界は家が安いとはいえ、それでも、豪商ですら手が届かないかも知れない物件だ。


ルミナスさんと一緒に1階の奥から見て行くことにした。


1階の奥は大浴場と言えるお風呂で10人位でも入れるような、前の世界で言う旅館にあるような大きな石造りのお風呂だった。


「「大きいね」」


二人してその大きさに驚いた。


その横には洗面所に洗濯場……どれもしっかりと機能しそうだった。


そして、トイレは水洗だ。


ただ、お風呂から、トイレまで機能させるには『魔石』を買う必要がありそうだ。


他には広いキッチンに恐らく使用人ようの部屋なのだろう。


小さめ目の部屋が5つと倉庫を兼ねた物置があった。


「1階だけで、こんなに部屋がある」


「うふふっ、私とハデルくんなら1階だけでも持て余すわね」


「確かに、これで充分だね。下手したら2階は使わなくて良いかもね、1階でこれなら2階はきっと凄いと思う……行ってみようか?」


「確かに……寝室に大きなベッドとかあると良いわね」


「……」


思わず顔が赤くなった。


「ああっーーハデルくん、変な事想像したでしょう? 変な意味で言ったんじゃないだからね!」


「変な意味って?」


知っててわざとそう答えた。


「もう、知らない!」


ルミナスさんは顔を真っ赤にしてそっぽを向いた。


年上女性のこう言う仕草って本当に可愛い。


俺はルミナスさんの手をそっと握った。


だが、二階に上がってから、闇属性の何かが強くなった気がした。


『呪い』の秘密が多分2階にある。


気を引き締めた方が良いだろう。


◆◆◆


二階にも無数に部屋がある。


一つ一つドアを開けていくと、どの部屋も1階に比べ豪華な部屋ばかりだった。


家具や日常生活に必要な物が残されているのが何気に嬉しい。


「このベッド、立派で凄く大きいわ、流石貴族様のお屋敷ね!」


ルミナスさんがそう言うのも解かる。


前の世界でいう、キングサイズのベッドに沢山の装飾品がついていて豪華だ。


他にも豪華な机に本棚……本当に凄いな。


「これなら、一緒にゆったりと眠れるね」


「そうね、本当にこれなら……何でも無いわ……」


まぁ、色々とベッドの上で楽しめる。


此処までは本当に豪華な部屋を見て回るだけだったんだが……


ドアが壊れた部屋があった。



中を覗いた瞬間……凄惨な光景が目に飛び込んできた。


血塗られた部屋、血液がこびりつき赤から黒に変わっている。


そして、その中央のソファにガイコツがある。


そのガイコツに覆いかぶさる様にもう一つのガイコツが重なっている。


そこから、何か気の様な物が流れている気がする。


多分、これが呪いの原因だ。


◆◆◆


「なかなか、凄い部屋ね、昔の私なら気を失うわね」


「確かに凄惨な光景だけど、それだけだね」


「ええっ……」


冥界の騎士のジョブのせいか、この光景を見ても『怖い』とは思わない。


ルミナスさんも『昔の私なら』と言っている様に『怖い』とは余り思ってないようだ。


この部屋で一体なにがあったんだ。


手掛かりを探すと……机があり、その上に日記があった。


◆◆◆


『日記』


3月4日

最愛の妻と娘が流行り病で亡くなった……全てのヤル気が無くなった。


3月7日

執事から、死人を蘇らせる方法があると聞いた。

『冥界の洞窟』にその為の道具があるという情報だ。

妻と娘を蘇らせる事が出来るなら……私は何でもするつもりだ。


3月9日

すぐに部下達と共に『冥界の洞窟』へ向かう。

冒険者パーティ『希望の翼』が潜った後の為上層ではお目当ての物は見つからなかった。

仕方なく中層に向かう。

沢山の犠牲を出し『精気の指輪』を見つけたが、肝心の『冥界の書』が手に入らない。


3月30日

中層を探したがもう一つ『精気の指輪』が見つかっただけだった。

『冥界の書』を探す為に下層に向かう。


4月15日

最下層にたどり着いたが、謎の壺があるだけだった。

結局『冥界の書』は見つからなかった。

もうこれ以上探しても見つかる事は無いだろう。

新しい宝箱が再生するまで数年……この計画は頓挫したまま……


6月17日

『冥界の書』の写本が裏社会でオークションに出るという噂を聞いた。

私も参加する事にした。


6月24日

莫大なお金を掛けてオークションで『冥界の書』の写本を落札した。

これで妻と娘を蘇らせる準備が出来た。

早く蘇らせたい……気がはやる。



7月15日

流石に部下たちに迷惑を掛けたくないから、禁呪を行う為、1人別宅に向かった。


7月25日

まずは妻から蘇らせようと『受肉反魂』を行う……蘇がえって来たのは化け物だった。

体を腐れさせた妻とは言えない邪悪な存在だった。

突き飛ばし、この部屋に逃げてきた。

さっきからドアを叩く音が聞こえる……そのうちこのドアを壊し中に入ってくるだろう。


死者に会う術式などない……


この術は、本人でない無い邪悪な者を呼び出すだけだ……禁呪など行うべきではない。


◆◆◆


此処で日記が終わっていた。


床には『精気の指輪』が転がっていた。


だが、おかしい……


反魂を失敗しただけで……なぜ呪われているんだ。
















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