異世界マイホーム第一巻

宮本ヒロ

プロローグ

 軒沢学(のきざわまなぶ)はマイホーム持ちだ。

 妻帯者でもなく、結婚の予定もなく、年の頃もまだ二十代。だというのに。

 「……人生、何があるかわからんもんだな」

 幼いころに両親が他界し、親代わりとなって育ててくれた祖父も先日亡くなった。そして学は、祖父が遺してくれた家を相続した。

 それ自体はよくある話に思えるかもしれない。だが、一点だけ奇妙な点がある。

 「“祖父の家”って聞いて、和風の古民家とか思うじゃん? ねぇよ、こんなの」

 その家は、祖父から譲り受けたとは到底思えないほどの最新鋭住宅だった。

 太陽光発電は同じ規模の一軒家が24時間稼働できるほどの発電量があり、夜間も大容量蓄電池でしっかり補える。浄水機能に非常用設備、そして広い庭には菜園までついていて、ちょっと頑張れば自給自足が可能なほどだ。

 「いやもう、サバイバル番組とかでこの家出てきたらチート扱いだよな……」

 祖父が生前どれほどこの家に入れ込んでいたのか、あるいはそれ以上の“なにか”があるのか。

 とにもかくにも、学は今、この家で一人暮らしをしている。感謝しつつ、便利な設備をフル活用しながら。

 「ありがたく、使わせてもらってますよ。じいちゃん」

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