第2話 会社と後輩

 私が勤める会社は小さな商社だ。


 大学卒業と同時に新卒でこの会社に就職したから28年目となる。


 幸か不幸か私の能力的には可もなく不可もなくごくごく平凡であるが、大きなミスもないが大きな成果もない。


 細々とした営業を繰り返し、細々とした成果で会社に貢献する。


 ただ幸いなのは得意先や会社内での人間関係は良好で世間でいうところのブラックな上司や、理不尽な得意先とは無縁であることか。


「先輩!ヘルプっす!」


 新人というには無理がある10年目の後輩、夏野夏生(ナツノナツキ)が私を呼ぶ。どうやら発注でミスをやらかしたらしい。彼女の新人教育を私が行ったせいか、彼女は私をよく頼ってくる。


 小柄な小動物のような彼女は部署内でも得意先でも可愛がられているらしいが、彼女はそそっかしいのかよく同様のミスをする。


 ただ、彼女の何事も全力で取り組む姿を好意的に見ているものも多いため幸い大事故にはなっていない。


 だが、元教育係ととしては彼女への小言を言わなければならない。あと、ついでにフォローも。


 こんないつもの毎日が繰り返されていく。


 「先輩、何か悩み事っすか?」


 夏野が聞いてくる。


 一瞬ドキッとしたが、「なんでもないよ」と返す。


 時々彼女は鋭い洞察力やカンを発揮する。彼女曰く「女のカンっす」らしいのだが、私の悩みは今朝のダンジョンの事だ。流石に国家反逆罪が絡んでくるとおいそれと人に相談なんて出来やしない。


 なんとか誤魔化し、「ちゃんと確認しろよ」と告げて彼女のフォローを終える。

 「お礼に今晩ご馳走しますよ」と彼女の言葉をあしらい私の仕事に戻る。



 さて、ダンジョンは最終階層まで攻略すれば消滅する。

 ダンジョンを放置すればモンスターが溢れてくる。

 モンスターが溢れる時期は予想がつかないが、今日明日に溢れる事はないだろう。

 あの庭のダンジョンの最終階層が何階まであるのかは今のところ検討がつかないが、生まれたてのダンジョンであればそこまで深くはないだろう。


 私は考えをまとめた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る