第3話 口にしなかっただけで
「覚えてる?君が最後に送ってきたLINE」
彼の言葉に、ミルクティーのストローを止めた。
わざとゆっくり視線を上げる。
「『気が向いたら話そ』だっけ」
「正解」
「うん、送った。気が向かなかったから既読つけなかった」
「いや、ついてたよ」
「……は?」
「通知で見たでしょ。だから、“ついてた”んだよ。
僕は、ずっと“待ってた”のを知ってた」
笑って言われると、余計に腹が立つ。
でもそれ以上に、心の奥がざわつく。
「……なんで、今さらそんな話するの?」
「もう、会わないと思ってたから。
こうして偶然会ったの、奇跡みたいなもんじゃん?」
「奇跡って呼ぶには、気まずすぎるでしょ」
「うん。でもさ――」
彼は少し言い淀んで、
でもちゃんとこっちを見た。
「なんか、
“ほんとはあの時、言いたいこといっぱいあったんだろうな”って
思ってたから」
「……」
「それって、さ。
“恋”って言葉使えば簡単だったんだけど、
そうじゃない気がして、言えなかったんだよね」
ストローを噛んだまま、
僕は少しだけ息を吸い込む。
「……わかるよ。僕も、そうだった」
それは、たぶん今でも。
ただ、口にしなかっただけで。
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