いそしぎ

海翔

第1話

 暑い夏の日差しから爽やかな風が吹く頃に、洋介は麻由美と出会った。

 江ノ島の海は八月の中旬になると土用波が出てきて人出も減り静かな海に戻る。

そんな砂浜に腰を掛けて、海を見ていた女性がいた。

歌にもあったが、誰もいない海の歌詞のように哀愁を思わせるような女性だった。

 洋介はバイクを降りて、岸壁の上からその女性を見ていたら、ふっと、その女性は立ち上がって洋介のところに歩いて来た。

「あの、、、もしよろしければ、バイクに乗せてくれませんか?」とその女性が言った。

洋介は「構いませんが、どこまで行きますか?」と聞いたら、

「海の風に当たりたいので、どこでもいいですよ」

そう言われ、洋介はバイクの後ろに積んであるヘルメットをその女性に渡した。

 その女性はスポーティーな服を着ていたので、そのままヘルメットをつけて、洋介のバイクの後ろに乗り、海岸通りを30分ぐらい走ったら、シーサイドレストランでバイクを止めアイスコーヒーを飲んだ。

 洋介は「何かあったんですか?」とその女性に聞いたら、

「失恋してしまったの」と低い声で話した。

その女性の目には涙が溢れていて、時たまハンカチでぬぐっていた。

「夏が終わった後の失恋は辛いですね。それでどうしてこの江ノ島に来たんですか?」

「彼と結ばれたのが江ノ島で、ふっと、楽しかった思い出にしたりたくて来てみたんです」

「海を見ていたら、貴方が私を見ていたので、何となく海岸通りをバイクで走ってみたくなったの」

「貴方の後ろに乗せてもらい、彼に乗せてもらったような気分になりました」

「あぁ、、紹介まだでしたね」

「私は朝井麻由美といいます。今年、二十歳になったばかりです」

「俺は、園辺洋介といいます。現在、26です」

「彼女は現在いません」

そう話したら、麻由美は笑っていた。

「私と同じですね」それにつられて洋介も笑った。

「麻由美さん、今日はこの後どうしますか?」と洋介が聞いた。

麻由美は「今日はこのまま、洋介さんと一緒に過ごしたい。せっかく出会ったのでこのまま帰るには、、、」

「じゃ、場所を変えて、ゆっくり過ごしましょう」

 洋介は友人のホテルに電話して空いてる部屋を貸してくれと言ったら、オフなのでいいよと返事が来た。

「ここのホテルは俺の後輩が専務でオフの時はいつでもどうぞといわれているんだ、、」

「結構いい部屋なのでいいですよ」

 バイクで20分ほど走ってそのホテルについた。

話が通っていたようで、最上階の部屋に案内された。

「おいおい、、こんな高い部屋、代金払えないよ」といったら、専務が「半分でいいよ」と言われ、なら「OK」ということで話がまとまった。

「ついでに、飲み代は専務のおごりということで」参ったなと言いながら「飲みたいだけどうぞ」と言ってくれた。

 洋介は「専務とは幼稚園の時からの知り合いでよく遊んだ仲なんだよ」

麻由美は「そうだったんですか」と二人の仲を見ていた。

洋介が麻由美さんに「この奥にお風呂があるので、入ってらっしゃい」と言ったら、麻由美は浴衣をもってその部屋に行った。

 そこには露天風呂があり空にはたくさんの星が見えた。

麻由美は風呂に入り、星空を見上げたら今までの悲しみが、ふっと、消されていったようだった。

外から洋介が「いいお風呂でしょ」と言った。

麻由美は「うん、気持ちいいです」と返事をした。

しばらくして、浴衣姿の麻由美さんが戻ってきた。

入れ替わりに洋介もその風呂に入った。

 実際この風呂に入って見たら結構広いのにはビックリした。

風呂から出てきたら、食事の用意がされていて、さっそくビールの線を抜いて麻由美さんと飲んだ。

料理は海の幸でいろんなものが振る舞われた。

 洋介は専務をおかずにして面白おかしく話したので、麻由美さんは転げ回って笑っていた。

だいぶ話が続いてしまい食器の片付けが遅れてしまったが、一段落して片付けてもらい布団を引いてもらった。

それから二人は寝る前に風呂に入り床についた。

 暫くして、麻由美は「洋介さんそちらで一緒に寝ていいですか?」と言ったら、

洋介は「どうぞ」と布団を広げ、そこに麻由美がとなりに入ってきた。

一人で寝るのが寂しくて「洋介さん私を抱いてくれませんか?」洋介がいいのかと確認したら、麻由美は首を縦に傾けた。

洋介は麻由美の浴衣を脱がしてブラジャーを外した。

洋介の唇が麻由美の唇を求め、そして、洋介の舌が麻由美の舌に絡んで行った。

そこから、麻由美の乳房を揉みながら、乳首に舌先が絡んできた。麻由美はたまらず悶え始めた。

洋介が麻由美のショーツを指先で刺激したら、ショーツはびっしょり濡れて湿っていた。

洋介はショーツを指先にかけそれを脱がした。

洋介も着ているものを脱ぎ、麻由美と一つになった。

洋介が体を動かして行くと、麻由美は悶えながらその気持ち良さを徐々に言葉にして逝った。

洋介もその後に麻由美の中で逝った。

 麻由美はSEXが終わった後に涙を流して天井を見ていた。

何かが吹っ切れたような感じだった。

 そして、しばらくして二人は再度風呂に入って、体を暖めてから床に着いた。


 翌朝起きて、早々に風呂に入った。

昨日はアルコールも入って、麻由美さんの裸をあまり見ることもなかったが、今日、麻由美さんの裸を見たら、二十歳の弾けるような美しい肌をしているのにはビックリした。

 しばらくして、中居さんが朝食を持ってきてくれた。

軽い朝食で腹ごしらえをして、専務にお礼をいってホテルを後にした。

 洋介は麻由美さんに「これからどうしますか?」と聞いたら、ひとまず家に帰りますと言うので家までバイクで送った。

麻由美さんの家は海の見える海岸の近くにあり分かりやすいところにあった。

麻由美は洋介に「いろいろお世話になりました」

そう言って、連絡先を書いた紙を渡し、

「近いうちに会いたいですね」そう言って、手を振って自分の家に向かった。

洋介は「いつでも連絡ください」といって、バイクに乗り自分の家に向かった。

 麻由美は両親に会い「連絡をしないで、ごめんなさい」と謝って、2階の自分の部屋に上がった。

そして、部屋のエアコンをつけてバスタオルを持ってバスルームに入った。そして、シャワーを体一杯に浴びてすっきりした気分で部屋に戻ってきた。

 朝早かったこともあり、ベットで裸で軽い睡眠を取った。

部屋は涼しい風が吹いて寝るには十分な温度だった。

 昼過ぎまで寝てしまい、時計を見たら2時ぐらいだった。

麻由美は起きてからそのまま、シャワーを浴びて、バッチリ目を覚ましてからTシャツと半ズボンをはいて居間に降りてきた。母親が遅い昼食を用意してくれた。

麻由美はそれを食べ腹ごしらえして、冷たいコーヒーを飲みながらテレビを見ていた。

 母親の静子は麻由美に「昨日はどこに行っていたの」そう言われ、、、

麻由美は再度「昨日は連絡しなくてごめんなさい」と言ったら、

静子は「もう、成人の女性だからとやかくはいいませんが連絡だけはしてくださいね」

そう言って、テレビの方に顔を向けた。

 しばらくテレビを見ていたら、麻由美の携帯がなり、取ってみたら高校のクラスメートの真紀からだった。

「麻由美元気してる、失恋したと言っていたから気落ちして無いかなと、、、」

麻由美は「心配ないよ、また新しい彼氏で来たから」

真紀は「もう彼氏出来たの。それにしてもいつ出来たの?」

「うん、昨日出来たよ」

真紀は、麻由美に「これから会わない、いつものマックで」

「うん、いいよ」と話して、1時間後に会うことにした。

 麻由美がラフなスタイルでマックで待っていたら、真紀が手を振って近付いてきた。

麻由美「新しい彼氏ってどんな人、、」

「昨日、浜でいたらそこで出会ったのバイクに乗ってる26歳の人だよ」

「失恋してがっくりしていたら、何となく話に乗ってくれて元気がついちゃった」

真紀は「いいなーーーーこっちはストレスたまるよ」

「彼氏ができたら、そんなことないのにね、、、、、、」

 真紀は麻由美に「例のマッサージ受けにいかない」そう言われて、麻由美は躊躇したが気分転換にいくことにした。

このマッサージは真紀がネットで探したオイルマッサージで結構はまりこんでいた。

オプションでついている、ストレス解消マッサージは一番のお気に入りだった。

 15分ほど歩いてそのビルに着き、けっこう流行っているのか30分待ちだった。

 店の中で本でも読んで時間を過ごしていたら、呼ばれたので、部屋の入り口で真紀は麻由美と別れた。

 真紀が部屋に入るといつもの人が出迎えてくれた。

マッサージをしてくれる人は、30代初めの女性で尚美さんという人で、もう、この仕事を始めて5年になるといっていた。

真紀は「いつものコースでお願いします」と尚美さんに言った。

「では、シャワーを浴びてこの台に横になって待ってください」と言われ、真紀はさっそく、着ているものをすべて脱いでシャワーで体を流した。

そして、バスタオルで体を拭いて、全裸のまま台の上で横になった。部屋の中では波の音が聞こえてきて、いかにも南国の国に来たみたいな気分にさせてくれた

 そして、尚美さんは足の方からオイルを付けてマッサージを始めた。

そこから腕に入り、乳房にもオイルを塗ってマッサージを始めた。下から上へと指を動かし、乳首は指先で挟んで引っ張るようにマッサージをした。

そして、お腹をオイルで塗ってマッサージをして背中を上にした。

 真紀は背中を触られたときに切ない声をあげてしまった。真紀にとって背中は性感帯だった。

そこをマッサージしてもらい夢うつつで過ごした。

 そして、状態を上げて、大腿部の付け根にオイルを塗られ、マッサージが始まったときは、時たま指先が下半身に触れて声を殺すのも大変だった。

 真紀はここから始まるオプションが好きで、尚美さんは真紀にお尻を高くするように言った。

そこからオイルをお尻の間に垂らしくるくる回し始めた。

真紀は正常ではいられなくなり声をあげて悶えた。

 そこから尚美さんの指は真紀さんの膣の中に入り、指先がくの字を曲げて奥深く入ったところで激しく動かされ、一気に潮を吹き出してしまい、たまらなくなって逝ってしまった。

 しばらくして、真紀は「気持ちよく逝けてありがとう」と尚美さんにお礼を言った。

 麻由美さんは真紀さんと別れ、となりの部屋に入った。

部屋で梨花さんが待っていた。

始めに紹介され、現在24歳とのことで結構若い人がついた。

まず「シャワー浴びてください」と言われ、麻由美は全裸になりシャワールームで体を暖めて、バスタオルで体を拭いて台の上に横になった。

 梨花さんは足からオイルを塗られマッサージをしてきた。

爽やかな香りと部屋の中では波の音が聞こえて、眠りを誘ってきた。

そこから腕、乳房、乳首とオイルを塗られマッサージで気持ちよくなった。

 女性にこうやってマッサージされると男性とは違う柔らかな刺激に真由美は微かな興奮をしていた。

乳首を刺激されたときは少し悶えてしまった。

 そしてお腹が終わったときに「オプション付けますか?」と梨花さんが聞いたので「お願いします」と言ったら、

では「後ろ向きになってお尻を高くしてください」と言われ、そのようにしたら、お尻の間にオイルが流れてきて、

凛花さんはそのまま小指を使って、くるくる回し始めた。麻由美は今までに感じたことのない快感で頭の中が白くなった。

 そこから凛花さんは麻由美さんの膣の中に指を指をくの字に曲げて動かし始めたらあまりの気持ちよさで一気にエクスタシーを感じ逝ってしまった。

 しばらく動けない状態だったが、徐々にもとに戻りシャワーを浴びて、お礼を言って部屋を出てきた。

 外には少し先に真紀さんが出て待っていてくれた。

そして料金を払って店を後にした。

真紀は「ここのマッサージはいつきても気持ちいい」といっていた。

 二人はレストランに入り、夕食を食べてその日はそのまま家に帰った。

夜の8時過ぎに洋介から電話があり、週末に会いたいと連絡があり会うことを約束した。


 週末の土曜日に洋介と会った。

まだまだ夏の残暑が残り、昼間などは海で泳いでいる人もいるぐらいで、もうしばらく江ノ島の夏も終わらない感じだった。

 洋介に会う前に電話でボートを借りたので、冲にボートで行こうということになり、水着で着てくるように言われた。

洋介の道案内でボートのあるとこに行き、そこから冲に船で漕いだが風もなくべたなぎでボートも揺れなかった。

 そこで周りに人がいないところで真由美は泳ぎだした。

洋介もそれにつられ泳ぎだした。

麻由美は「それほど海水が冷たくないので泳ぎやすいですね」と言った。

洋介も「そうだね」と相討ちを打った。

こうやっていると、周りに人がいないので、二人だけの世界のように感じられた。

 洋介は麻由美の唇にキスをした。麻由美も洋介のされるままに身を預けた。

二人はボートの上で全裸になり我を忘れて抱き合った。

洋介はボートが揺れるタイミングに合わせて、麻由美の中へと入っていった。その動きに合わせて体を動かした。

麻由美もその流れに合わせてエクスタシーへと導かれそのまま逝ってしまった。

そして、二人は全裸のまま海に飛び込んで抱き合った。

 夕方近くになると少し寒くなってきたので、ボートを元あったところに移動しそこに戻した。

 その後、洋介のバイクでレストランに入り遅い食事を取って麻由美は自宅に戻り、身体中が塩だらけでどことなくベタベタしているのが気になってシャワーを浴びることにした。

 麻由美は着ているものを脱いで自分の裸を鏡に映した。日焼けしてない部分が白く残りその部分だけが眩しかった。

シャワーのコックを捻り冷たいシャワーを頭から浴びた。

冷たいシャワーは一時の癒しを感じた。

 部屋に入るとエアコンの風で涼しく気持ちよかった。

麻由美は何も着けずに椅子に座り、窓の外に見える夕日を見ていると、地平線に沈む太陽は明日の日の出を約束してくれるようだった。

 そして、青春は波のように、小さな波があったり、その後に大きな波も来て慌ただしく変わっていく。

今は小さなさざなみの時なのかも知れない。

 そんな9月の中旬に母から電話が来た。

「麻由美ちゃんよく聞いてね」

「実は話があるの。9月の末にお父さんと離婚をすることになったの。実は会社が不況でダメになりそうなの。

それで二人の生活を考えて、お父さんから離婚をすることを言われ、財産分与として江ノ島の別荘と現金5000萬円で、当面の生活を維持してくれということになってしまって」

「それで、今月末までに東京にある荷物を江ノ島に移動しなければならなくなったの、それで東京に戻ってきてほしいの」

麻由美は何も言えずただ「うん」と言って電話を切った。

 母から受けた電話で麻由美は突然のことだけに、呆然となってしまった。

その日は何も手がつかず、夕方まで海を見ていた。

 その日の夕方、父から電話があり「お母さんからすべて聞いたと思うが、お前には本当にすまないことをした。家庭を守るにはこの方法しかなかったので許してくれ」

「お父さんが立ち直ったらまた前の家庭に戻すのでそれまでお母さんをよろしく頼む、、」

父の声は涙で濡れていた。

 麻由美は「わかった。父さんが戻ってくるまで待っているから、、、」そう言って、目頭にハンカチを当てた。

 次の日に麻由美は東京に戻り、自分の荷物をまとめに行った。

実家に帰ったら、父も母も何も話すことがないのか何も言わないで静かに過ごしていた。

母の荷物は別室にまとめられていた。

麻由美も一日かけて、荷物をまとめた。


 三日ぶりに洋介に電話を掛けた。

洋介は「麻由美、どうかしたのか?いつもと感じが違うようだけど、、、」

麻由美は「うん、実は父と母が離婚することになったの、それで、今実家に帰って荷物まとめているの」

「すごく寂しい、、、今すぐにでも洋介に会いたい」

そう言って泣き出してしまった。

洋介は麻由美に「今すぐにでもそっちにいくから待っていろ」

そう言われて麻由美は小さく「うん」と言った。

 洋介はバイクを飛ばして麻由美の実家に向かった。

2時間ぐらいして洋介のバイクは麻由美の実家についた。

麻由美は洋介に会い、ただ泣きじゃくっていた。

洋介はそのまま麻由美をバイクに乗り、江ノ島の別荘に向かった。

 大分遅くなってしまったが、別荘に着いて麻由美の部屋に入り、洋介は麻由美を抱き締めた。

そして二人は口づけをして静かな時間を過ごした。

 麻由美は父親の会社が駄目になり、離婚をしなければならないことを説明した。

 確かにここに来て、不況の影響で会社が倒産したり、首を吊ったりと大変な事態になったことは新聞で知っているがついにここまで来たのかと感じた。

 麻由美はここまで話し、洋介の腕の中で静かに眠りについた。

洋介は麻由美をベットに寝かせて、その日は麻由美と一緒のベットで寝た。


 翌朝麻由美が起きたら、横に洋介が寝ていたのには感謝をした。

洋介を起こして昨日の事を聞いたら「麻由美が疲れてそのまま寝たので、ベットに運んでそのまま寝てしまった」と洋介は話した。

 二人はそのままシャワールームに向かい裸のまま入って、冷たいシャワーを浴びて目を覚ました。

二人は抱き合いキスをし、シャワーの水は悲しみを流してくれた。

バスタオルで拭いて、洋介は麻由美を抱いた。

麻由美の悲しみを受けとめて、大きなウェーブとなって消し去るように導いた。麻由美もその波に乗って洋介に身を預けた。

そして、大きな波が打ち寄せた後には静かなさざ波が押し寄せていた。


 9月の下旬に母と麻由美の荷物がこの江ノ島に届いた。

1階の奥の部屋を母親の部屋にして、麻由美は2階の部屋に移動した。

家が大きいこともあり、まだ、空いてる部屋がいくつかあるが、今はそのままにしておいた。

 それから半月後に父親の会社がつぶれた。

今回の不況の影響がもろに出てしまった。

ニュースではリストラ、首切りがそこらじゅうであり、

自殺する人も出てきた。

父親からは一週間に一度電話があり、なんとか生活をしているとの連絡があり、

麻由美も早くもとのような生活に戻れることも祈っていた。

 洋介とはその後も頻繁に会って相談相手になってもらっていた。麻由美にとって洋介は掛け買いのない人になっていた。

 10月の中旬に真紀から電話で呼ばれて、喫茶店で出会った。

真紀は先に来て、コーヒーを飲んでいた。

麻由美は「どうしたの」と聞いたら、

真紀は「来月、結婚することにした」と言った。

「相手は見合いで、地元の銀行の人で武市正明と言う人で、今年27の人なんだ」

「母親がよく銀行にいってるうちに知り合った人で、聞いたら独身だと言うので私の娘に一度会ってもらいたいといって、見合いさせられたの、でも、結構いい人なのでお母さんにお願いして決まったの」

「それでとんとん拍子に進んで決まり、11月の中旬に式をあげることになった」

それを聞いて、麻由美は「真紀ちゃんおめでとう」と言った。

真紀は麻由美の現状を知っているだけに話すことをためらったが、話してよかったという気持ちになれた。

麻由美も早く結婚したくなってしまった。

「真紀ちゃんに先を越されたね」

「まあね」

二人は久々に笑顔になれた。


 その日の夜に洋介に会い、真紀ちゃんが結婚することを話した。

相手が武市正明と聞いてビックリした。

「うちの二軒隣の高校の先輩だよ。あいつがねーーー。世の中狭いね」

 真紀ちゃんの結婚に刺激されて、

麻由美も「洋介さんのお嫁さんになりたーーーい」と叫んだ。

洋介も麻由美ちゃんに来てもらいたい。

「もう少し待ってね。必ずもらいにいくから、、、」

そう言われて、麻由美は顔を赤くして喜んだ。

 次の日の昼間に久々に父親に会い、少しやつれた感じがしたが元気でいたので安心した。

父親に真紀ちゃんが結婚することを言ったら「もう、麻由美もそんな年になったね」と寂しげに答えた。

父は「早く仕事をもとに戻して、麻由美と一緒にバージンロード歩かないとね」

「麻由美の結婚式には絶対お父さんに来てもらうから」そう言って麻由美の目には涙が浮かんだ。

家に帰って、母親に父親にあったことを話した「お父さん元気だった?」

「少し痩せていたが元気だったよ」と話した。

「あの人もこれから会社を再生しなければならないから大変だけど早くもとに戻ってもらいたいね」そう母親は言った。

 11月の中旬になり、真紀の結婚式が行われた。麻由美も洋介と一緒に式に参列した。

真紀ちゃんの美しさを垣間見たようだった。

真紀は「次は麻由美ちゃんね。楽しみにしてるから、、」

そう言われて、麻由美は照れてしまった。

横で洋介は笑っていた。

 その日の夜に麻由美は洋介の家で抱かれた。

自分達の愛情を確認しあうように二人はもつれあうように抱き合った。


 今年もあと数日で新しい年を迎えるが、父と一緒に年を迎えることができないのがすごく寂しかった。

 12月の暮れに病院より電話がかかり、父親が心筋梗塞にかかり入院していることがわかった。

状態としては、非常に呼吸困難で一刻を争う状態だった。

年末に無理がたたり、体調を崩したようで病院には行けず自宅待機になってしまった。

 静子も麻由美も生きた気ごちがしなかった。

いつ何がおきるかわからないので、家にいたら、

31日の午前3時に急変して、父親が亡くなったことを知らされた。

急いで母親と病院に行ったがガラス越しの状態でしか会うことが出来ず、そのまま火葬場で焼かれ灰となって帰ってきた。

 あまりにも悲しく寂しい別れだった。

麻由美は父親のお骨を見て「あれほど私のバージンロードを一緒に歩くと言ったのに、、、嘘つき、、、」そういって大泣きをした。

静子も「一緒にまた暮らせると言ったのに、、、」

涙を浮かべていた。

 結局、なにも出来ずに密葬で寂しく終わってしまった。

洋介も麻由美から連絡を受け、後から御線香を上げに来てくれた。

しばらくは、江ノ島の別荘は日が消えたように暗い日が続いた。


 春になり、江ノ島にも暖かい風が吹き、桜も咲き始めた。

麻由美も寂しさをまぎらわすために洋介のとこによく出掛けて時間を過ごすことが多くなった。

 洋介はそんなある日に麻由美に「お互いもう一緒になろうかと思うがどうかな、、、」

麻由美は洋介のこの言葉に一瞬ビックリした。

「洋介さんこれ、プロポーズとして受けていいんですか?」

そう聞き直したら、洋介は「もちろん麻由美と一緒にいたいから結婚してください」

そう言われ、麻由美の目頭には熱いものが流れた。

 麻由美はその日の夜に、母親に洋介からプロポーズを受けたことを話した。

静子は「お父さんがいたら、麻由美のウエディングドレスを見せてやれたのにね」そう言って目頭を熱くした。

「結婚後の生活はここですることに決めました。

洋介さんからも一緒に生活したいと言われ、そうすることにしたの」

「結婚式は喪が明けたらすることにします」

「それまでの間、私、洋介とこの別荘で同棲することに決めたけどお母さんいいですか?」

母親は気持ちよく賛成してくれた。

「じゃ、お母さん、2階の部屋を私たちが使うね」

そう言われて静子は新しい来客を歓迎した。


 翌日に麻由美は真紀に来年、洋介と結婚することを報告した。喪が明けるまで式をしないことを付け加えた。

真紀は「よかったね」ともろ手をあげて賛成してくれた。

それと、真紀から「赤ちゃんできたみたい」といわれ、、、

それを聞いて麻由美も喜んだ。

「早くみたいね」

真紀も自分の幸せを麻由美に分けてやりたくて、、、

二人の女性は幸福を噛み締めていた。



 江ノ島は今年も夏になり、いつもの賑わいが戻ってきた。

麻由美も洋介と一緒にこのしあわせの波に乗って未来の自分達の行く末を見つめていた。





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いそしぎ 海翔 @ukon9

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