ボクと彼2

なかひと

正式にお付き合いしたい!

 ボクと彼は大学生になった。ボクは実家で、彼は一人暮らしをしている。

 大学も別々だけれど、お付き合いすることになった。高校の時と違って、毎日会えるわけじゃないけど、ボクは”お付き合い”という部分だけで、毎日が楽しく思える。でも、まだ”正式に”ってわけではない。

 親にはこの事はもちろん秘密だ。まさか付き合っている相手が男の人だなんて言えない。でも、本当は言ってしまいたい。とてもモヤモヤするのだ。なぜって、彼の方は、親にゲイってことを認めて貰えているらしい。とても理解のある、素敵なご両親だ。実際に彼のご両親に彼がボクを紹介した時、「よくいらしてくれたわね。」とか「息子を好きになるなんて大変なことになったな、よろしくしてやってくれ。」とか。ボクを大歓迎で迎えてくれた。

 彼は無理強いはしないが、

「オレと同棲しねえ?」と言ってくれた。

 でも、ボクは断った。だって、ボクの両親には君と付き合ってること話してないし・・・。とボソボソと小さい声で言い訳する。

「お前の気持ちはどうなんだよ。オレと一緒に居たくない?」

「そ、そんなこと・・・!!ボク・・!」

 ボクも君とずっと一緒にいたいよ・・・、と蚊の鳴くような声で続きを言った。

「なら、オレと一緒にお前の両親の所に行こう!オレ、親に相談してたんだ。お前んとこの両親はオレのことはただの友達としか認識してないって。そしたら、なんとかするってさ。」

「え!?」

「もうすでにオレの両親とお前の両親とは面識があるってこと。」

「で、でも、そんな都合のいいこと・・・。」

「それが上手くいっちゃったんだよなー。とにかくオレと一緒に来い!」

 あの時と同じように、手を繋がれ、ボクを引っ張って走る彼。するとたどり着いたのは・・・。


 ボクの家だった・・・。


 ボクは窮地に立たされている。背中に冷や汗をかいている。

 彼はさっさとボクの家の玄関前に立ち、インターホンを押す。そして、彼の苗字と名前を言った。

「だ、大丈夫かな。ボク、怖いよ・・・。」

「心配すんなって。オレがなんとかする!」

 ボクがそわそわしていると、玄関のドアが開いた・・・!

「あら、どうぞ。入って。」

 ボクのお母さんはボクの手元をチラと見ながらそう言った。

 手を繋いでいるのが気になったのだろう。ボクはパッと彼の手を離し、自分の胸へと自分の手を持っていく。

 お邪魔します、と丁寧に頭を下げながら家の中に入っていく彼。ボクは固まってしまってまだ玄関に居た。

 すると、お母さんが言った。

「ほら、あなたも入りなさい。」

「う、うん・・・。」

 遠慮がちにボクも中に入る。

「コーヒーでいい?ケーキも買ってあるのよ。一緒に食べましょう。」

「すみません。お構いなく。」

 そう言いながら、彼はお母さんの機嫌を損ねることなく、会話をしていく。

 こういう時の彼はとても大人に見えた。大学生なのだから、大人には大人なのだが・・・。でも、とても男らしいし、かっこいい。ボクは立ち尽くしながら彼に見とれている。

 

 コーヒーとチーズケーキが用意されて、3人で席についた。ちなみにお父さんは仕事で出ている。そして、なにやら彼とお母さんは会話していた。でも、ボクの耳には何も入ってこなかった。実家で彼といる状況に驚いてしまって、ぼーっとしてしまった。

そこで、なにやら叫んでる声が聞こえる。

「・・・おい!・・・しろ・・・!聞こ・・・るか!?」

 彼の声だ。

「え!?」

 ボクは何も聞いていなかったことに気づき、大きな声で、え!?と言ってしまった!

 彼はあきれて、

「許可、取れたよ。」

「え?・・・なんの?」

「同棲の。」

「え!?ええええええ!!!??」

 ビックリして、ボクは椅子から立ち上がった!!

「お、お母さん・・・いいの・・・?」

「ええ。いいわよ。彼のご両親からもこのことは前から聞いてて、お父さんとも話し合っていたの。だから、ね。遠慮しないで。」

「ほ、ホントに・・・?」

「ホントよ。」

 優しく語りかけてくれるお母さん。

 本当なんだ・・・夢みたいだ・・・。

 ボクはボロボロと涙をこぼして、その場にくずおれた。

「まあまあ、だらしない子ね。こんな子だけど、よろしくね。」

 と、彼に語り掛けながら、ボクの背中をさすってくれるお母さん。

 お母さんお父さんありがとう、としゃくり上げつつ言いながらしばらく泣いた後、彼とボクは一緒にボクの家を後にした。


 手を繋いで、彼と歩きながら、ボクは前を見ることができなかった。これは現実なのか?そんな問いに答えるように彼は言う。

「な?上手くいっただろ?」

 ボクは顔を上げるとニカっと得意げな顔をする彼が見えた。

「ありがとう。」

「これで、思い切ってキスマーク付けられるなー。」

「え!?」

「これからオレの部屋行ってお前を抱く。」

「えええええええええ!?」

 ボクは何度えええ、と言っただろう。

 ボクは顔を真っ赤にして、

「君はデリカシーがないんだから・・!!!」

 ぷいっとそっぽを向く、ボク。


 そう言いながらも、彼の部屋へ行き、キスして、身体を剥かれ、抱き合った。

 初めての体験だった。

 疲れる限り抱き合っていた気がする。

 そして、朝が来た。


 ボクが起きると、その隣には彼がいて。

 ボクの髪の気をかきあげて、優しく微笑んでいる彼。

 ボクはおもわず、ふふっ、と笑ってしまった。

「なんだよ。」

 微笑みながら彼は問う。

 そして、ボクが応える。


「だって、とっても幸せなんだ。本当にありがとう。」 

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