トゥインクルデイズ

みっこごっこ

第1話

1.序章


あちゃー!

やっちゃった。

ドンガラガッシャーン

ピーポーピーポー…


なんと、私、今、天国に旅立ちました。

瀬戸智子25歳の人生、ジ・エンド。

お腹にはこうちゃんと大事な大事なベイビーがいるってのに。

自転車ごとトラックに跳ねられちゃった。


さよならベイビー

さよならこうちゃん

さよならお父さんお母さん

みなさまさよなら…


私がね、ベイビーのパパ、こうちゃんと出会ったのはライブハウスだったの。

こうちゃんはまだ22で私も20だった。

友達の付き合いでちょっと面倒臭いなあ、なんて思いながら行ったライブ。

4バンド出ていて、こうちゃんのバンド、Mars Peterはトリだった。

他のバントは恋愛の歌ばかり歌ってるのに、この金髪マッシュ君ときたら古着屋の仲間の歌なんて歌ってわけわかめ。

でも、どうしても気になって気になって視線は釘付けになったのよね。

対バンメンバーに友達の彼氏がいたので、私はどうにかこうにか飲み会に参加する事に見事成功!

酔っ払って既成事実作ってしまおうって目論見だった。

だけど蓋を開けたら、こうちゃん下戸なんだもん。

なんだかなぁって思ってカルピスサワーをちびちびやってたらこうちゃんが隣に座った。


名前なんての?


え?私?


君しかいないじゃん、俺が話しかけてるの。


そこから何の話をしたんだっけな。

そうそう、ラブソング、なんで歌わないの?って聞いたんだった。

そしたらこうちゃん


聞きたい?


って。


うん。


って言ったら


じゃあ智ちゃんのために作るからさ、とりあえずインスタ交換しない?


って。


軽っ!と思ったけど、やったー!と内心ガッツポーズ。

この飲み会の為に、今朝はフェイスマスクもしたし、バニラの香りのボディークリームも念入りに塗ってきた。

涙袋、ちょっと描きすぎたかな?って思うくらいラメラメさせてきた甲斐あったね、


いいよ、あんまり見ないし更新しないけど…


ってウソウソ。

めっちゃインスタはチェックする。

でも私の日常なんてアップするような出来事ないんだもの。


じゃ、そゆことで


スタスタとこうちゃんは2000円をテーブルに置いて出てっちゃった。

幹事らしき子が


少なくねぇか?こうき


と、ボヤいてる。


いーじゃないケチくさい!


と、私はフォローしてみた。


じゃあ智ちん多めに払ってくれる?


って。


よくもまあ、言うよなあって思ったけど、私は正社員のOL(実は公務員なのだ)だし、ボーナスも出たばかり。

そもそもここに居るみんなお金なさそーだし!

あとは、こうちゃんへの印象良くしたくて…

4000円を払って、こうちゃんを追っかけた。


ねえ!待ってよ!


走って追っかけると、ひょいと振り向いたこうちゃん。

照れくさそうに、にへって笑った。

あの時の笑顔良かったな…


それから私は、ずっとこうちゃん一筋。


こうちゃんはコンビニのバイトをしている。

バンドの練習が忙しくて、シフトはぼちぼち週4くらい?夜勤もあるから、多分ギリギリ生活だと思う。


家でも暇さえあれば、歌詞を考えたりレコード聞いたり。


なので私は、支える彼女してる。

私だってボーナス月を除けばそんなに稼げてない。だから、ほぼ毎日節約の自炊生活。

でも、こうちゃんは少食だし、グルメでもないから助かってる。

私も料理のおかげで、インスタの投稿が増えた。

いくら、こうちゃんが塩な反応でも、インスタの良いねがあれば、ま、いっかって。

そんな毎日を送っていたんだぁ…

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