優しい魔法陣

ボウガ

第1話

「私たちは、難しく考えることをやめよう、もともとしっかりとした魔女だったんだ」

 サミュエルがつぶやくと、リリナもまた頷いた。彼らの幼馴染の一人は死んだ。リリナと婚約をしていたが、いまはサミュエルが彼女の側にいる。そして彼女もそのことに満足しているようだ。


「僕らは影にしか生きられなかった、同じ人生が繰り返されたとしても、同じことを選ぶだろう」

「そうね、私たちに選択肢はない、けれどその選択こそが自由なのだから」

「僕らは実験して試したんだ、そのことでようやく成長ができた、それでも未来をしっていたけれど」

「だから、彼は常に自由な行動をしていたのかも、他に女をつくったり、魔女狩りに喧嘩をうって私たちに尻ぬぐいをさせたり、ひどい時には彼に敵対する組織の魔女の存在を人間にばらして、火刑になんてさせたわね、時に彼は人間よりひどかった」

「その時、彼が言ったことをおぼえている」

 サミュエルは腕をくみながら、今日まで蓄えていた貴重な黄色い液体をフラスコに注いだ。

「お前たちは、いずれ俺の優しさをしる」

 リリナはサミュエルの背中をだきよせて方に首をもたれさせた。

「私たちに家族はできないけれど、私は満足よ、だって子供が埋めないのは仕方がないもの」

 かさかさにひびわれた唇をみて、サミュエルは申しわけなくなった。彼女を思って続けた実験は、この極寒の地で人間の目から逃れるために、ひどい苦痛を敷いてしまった。 

「僕らは、彼の為に実験したんだ、グウェン……彼の尊い犠牲をわすれない、彼こそが僕らの背中を押してくれた、彼の口癖は、この日の為にあったんだ」

「彼はいったわね“父さん母さん忘れないで”でも彼に親はいなかった、でも彼は僕らを信じていた」

「そうね、新しい時代がくる、私たちが差別されない時代が」

 

 二人は魔法陣を敷き、その中央の星型の紋章を杖でなぞった。するとようやく、その中央から、身に覚えのない赤子がうまれた。

「ああ、おめでとう」

「やったわ、ついにやったのね」


 グウェンは人殺しだった。僕らは、彼のどこか憎めない性格と魔女たちに対する優しさに畏敬の念をいだいていた。そのわけがようやくわかった。彼は魔力を失って生まれなおした。グウェンは僕らに謎の魔術のノートを残したが。ようやく僕らは解読を終えた。

「転生術」

 ただの転生術ではない。彼は力をうしない、そしてまた数百年という時を生きる。やがて人々が魔女に対する敵意を失ったとき、また目覚めるだろう。


「ありがとう、あなた、あなたが魔術の材料に使う人の狩りを始めたころ、グウェンと同じような人間でに感じる特異な恐怖を感じたわ、けれどそれは、優しさの表れでもあった、心配しないで、あなたを軽蔑しない、魔女狩りは行われたのだし、冷酷なのは、お互い様よ」






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

優しい魔法陣 ボウガ @yumieimaru

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ