第11話 子が子なら親も親

「しかし、ウィンフィールド公爵……」

「君は自分の娘を蔑ろにし、十人以上の未婚の女性達と淫らな行いをする男の元に可愛い娘を嫁がせるかね?」

「ア、アネモネ嬢は……了承の上だと」

「そんなことある訳がないだろう? 誰がそう言ったんだ、ナルクだろう? その世迷言を信じたのか、訳が分からないよデニス侯爵。さて、デニス家に融資した金額だが、中々の額になっているよ。アネモネが小さな頃から行った婚約だったからね……私も言われるままに君に金を貸し続けたけれど、君は一体何をしていたのか」

「そ、それは……鉱山を買ったり、投資をしたり……」

「掘り尽くされて何もでなくなった鉱山を騙されて買ったり、潰れる寸前の会社の株を買い、すべて失ったり? 奥方と娘、息子の浪費を止める事もなく、自身も随分ギャンブルに入れ込んでいるようじゃないか」

「そ、それは当たればすぐに取り戻せる!」


 次の日にもっと悪い顔色のナルクの父親であるデニス侯爵が我が家にやって来たけれど、この方も酷い物だった。こんなに愚かな義父を慕っていたなんて……反吐すら出ないわ。


「ア、アネモネ嬢! アネモネ嬢はナルクのことを愛している! そうでしょう!? 愛しているからこそ、ナルクをすべて許すといってくれたのでしょう!! 」

「絶対に許しませんが? あと愛してなどいません。父上にいわれ、貴族の義務として婚約者を続けていた……それもご子息の気持ちの悪い行動で二度と顔も見たくありません。さっさとお金を返していただけます? 早く縁を切りたいので」

「そ、そんな……」


 デニス侯爵は床に這いつくばりながら涙を流すけれど、泣きたいのはこっちだわ。


「し、しかしアネモネ嬢はこれから新しい婚約者を探すのは至難ではないですか!? ナルクを……ナルクの心を入れ替えさせます! 父親であるこの私の全権を持って! ですから、ナルクをもう一度信じて……」

「嫌です。二度とナルクには会いません。ナルクを我が家に迎え入れることは絶対にありえません」

「そ、そんなぁ……」


 デニス侯爵は項垂れて今日は帰ります、と帰って行った。今日どころかもう二度と来ないで欲しい。デニス侯爵が去ってからもお父様の表情は険しかった。


「しかし……この年で婚約者がいないとなると次の婚約者は本当に見つからないぞ、アネモネ。どうするつもりだ、公爵家の娘が婚約者も持たぬとは外聞が悪い」


 お父様、お父様がそうおっしゃることは分かっていました。でも、それで良いのです。過去から戻った私は気が付いたことが一つあるのです。私とナルクが結婚してすぐ、お父様は馬車の事故で亡くなった……。首を傾げる者が多かった不審な事故。それはなぜ起こったかということを。


「良いのです、外聞は多少悪くなった方が良いのですよ、お父様。ウィンフィールド公爵家はいます。お父様は、手腕が良すぎた……敵を作りすぎています」

「……アネモネ、それは」

「突出する杭は打たれます。お父様、打たれる杭にならないでくださいませ」


 お父様の事故、あれは仕組まれた物ではないかと今の私は思っている。


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