第20話 無人島の経済学
(誰もいなくても、価値は生まれる)
どんぶらこ、どんぶらこと流れ着いた先は、見事なまでの無人島だった。
【レイ】「……えーっと、どこからツッコめばいいのかな、これ」
【トト】「うーん、まず“なんで海に流されたか”ってとこから?」
【レイ】「いや、そこは記憶をあえて曖昧にしておこう。そっちのほうが物語として味が出る」
【トト】「現実から逃げる系主人公……」
◆
無人島といえば、まずやるべきことは食料確保――ではない。
【レイ】「まずは経済だ」
【トト】「サバイバルどこ行った!?」
【レイ】「異世界商人にとって、生存より大事なのは“取引”」
【トト】「……で、相手は?」
【レイ】「このヤシの木」
【トト】「経済が虚空と取引始めたぞ」
とりあえず、持ってたポーションと干し肉、
落ちてた貝殻と木の実を並べて“簡易マーケット”を開設。
【レイ】「ふふ……これで誰か来れば交渉成立」
【トト】「いや誰も来ないって! 島だよ!? 人いないよ!?」
【レイ】「いや、経済ってのは“想定”から始まるから」
【トト】「思想がもはや資本主義の亡霊」
◆
一時間経過。
風が吹く。波が寄せては返す。木の実はちょっと乾いた。
【レイ】「……誰も来ないな」
【トト】「だろうね!」
【レイ】「そろそろ貝殻に“購入意思あり”の目線を感じるんだけど」
【トト】「病んでない!? それ大丈夫!?」
◆
そんなとき、小舟が向こうから近づいてきた。
乗っていたのは、見覚えのある村人。
後ろにはレイの商売道具が積まれていた。
【村人】「あっ、レイさん! 拾った荷物届けに来ましたー! あと、ついでに迎えも!」
【レイ】「あっ……え? 迎え!? えっ、助かっちゃう系!?」
【村人】「あとその干し肉、ちょっと分けてもらっていいですか?」
【レイ】「あっ……じゃあ、そのヤシの実と交換で……」
【村人】「了解です!」
【トト】「……今、経済が生まれた瞬間、見た」
◆
帰りの舟の上で、レイは空を見上げた。
【レイ】「……なあ、トト。取引って、誰かと何かを交換することじゃん?」
【トト】「うん。だから?」
【レイ】「たとえひとりきりになっても、“交換できるかもしれない”って信じて準備してること自体が……たぶん、商人ってやつなんだよ」
【トト】「え、なにその名言。無人島で生まれるやつ? 流木に書くタイプ?」
【レイ】「黙ってろ、今いいこと言ってるんだから」
◆
今日のまとめ:
“誰かがいるかもしれない”と思って準備することが、経済の始まり。
貝でも、木の実でも、きっかけになれる。
【トト】「次は“カニに価格交渉する男”とかやってみる?」
【レイ】「絶対に成約しない未来が見えるからやめとこう」
次回 、 第21話「ゴブリンが店員募集してきた件」
「雇用の形、異世界にもあり。」問題児ゴブリンとゆる就職活動編!
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