第20話 無人島の経済学

(誰もいなくても、価値は生まれる)


どんぶらこ、どんぶらこと流れ着いた先は、見事なまでの無人島だった。


【レイ】「……えーっと、どこからツッコめばいいのかな、これ」


【トト】「うーん、まず“なんで海に流されたか”ってとこから?」


【レイ】「いや、そこは記憶をあえて曖昧にしておこう。そっちのほうが物語として味が出る」


【トト】「現実から逃げる系主人公……」


 



無人島といえば、まずやるべきことは食料確保――ではない。


【レイ】「まずは経済だ」


【トト】「サバイバルどこ行った!?」


【レイ】「異世界商人にとって、生存より大事なのは“取引”」


【トト】「……で、相手は?」


【レイ】「このヤシの木」


【トト】「経済が虚空と取引始めたぞ」


 


とりあえず、持ってたポーションと干し肉、

落ちてた貝殻と木の実を並べて“簡易マーケット”を開設。


【レイ】「ふふ……これで誰か来れば交渉成立」


【トト】「いや誰も来ないって! 島だよ!? 人いないよ!?」


【レイ】「いや、経済ってのは“想定”から始まるから」


【トト】「思想がもはや資本主義の亡霊」


 



一時間経過。


風が吹く。波が寄せては返す。木の実はちょっと乾いた。


【レイ】「……誰も来ないな」


【トト】「だろうね!」


【レイ】「そろそろ貝殻に“購入意思あり”の目線を感じるんだけど」


【トト】「病んでない!? それ大丈夫!?」


 



そんなとき、小舟が向こうから近づいてきた。


乗っていたのは、見覚えのある村人。

後ろにはレイの商売道具が積まれていた。


【村人】「あっ、レイさん! 拾った荷物届けに来ましたー! あと、ついでに迎えも!」


【レイ】「あっ……え? 迎え!? えっ、助かっちゃう系!?」


【村人】「あとその干し肉、ちょっと分けてもらっていいですか?」


【レイ】「あっ……じゃあ、そのヤシの実と交換で……」


【村人】「了解です!」


【トト】「……今、経済が生まれた瞬間、見た」


 



帰りの舟の上で、レイは空を見上げた。


【レイ】「……なあ、トト。取引って、誰かと何かを交換することじゃん?」


【トト】「うん。だから?」


【レイ】「たとえひとりきりになっても、“交換できるかもしれない”って信じて準備してること自体が……たぶん、商人ってやつなんだよ」


【トト】「え、なにその名言。無人島で生まれるやつ? 流木に書くタイプ?」


【レイ】「黙ってろ、今いいこと言ってるんだから」


 


今日のまとめ:

“誰かがいるかもしれない”と思って準備することが、経済の始まり。

貝でも、木の実でも、きっかけになれる。


【トト】「次は“カニに価格交渉する男”とかやってみる?」


【レイ】「絶対に成約しない未来が見えるからやめとこう」





次回 、 第21話「ゴブリンが店員募集してきた件」

「雇用の形、異世界にもあり。」問題児ゴブリンとゆる就職活動編!

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