幕間 カティのリコーダー練習日記2
10月某日
今日も音が「ぷひー」と外れた。
子供たちにはもちろん「変な音!」って笑われる。
でもお嬢様はそういうところで、カティは失敗した音も可愛いという。お嬢様のことは好きだけど、こういうところはずるいと思う。
……あ、こういうのを嫉妬っていうのかも。日記には書いてもいいよね?
10月某日
レガート(音と音をなめらかにつなげて演奏する奏法)がちょっとだけ分かったかも。お嬢様のリュートに合わせて吹いたとき、ふと”繋げる”ってこういうことかなって思った。
いつもの「プッ、プッ」じゃなくて、「プーーー」って続けたら、気持ちよかった。ちょっと誇らしげにしてたのを、お嬢様は見逃してくれなかった。
「いい音出してたわね」って言われて、顔が熱くなって吹けなくなっちゃった。
うう……見逃して欲しかった。
10月某日
先日、村の子たちにもリコーダーを配った。
子供たちにもリコーダーの難しさを実体験させて、私が変な音を出した時に、「へたっぴ」と子供たちに笑われるのが嫌になったからではない。
でもお嬢様ではなく、なぜか私が教えることに。
そしたら村の子に「先生」って言われた(やめて)
ヴァルトバッハの子たちが「カティ先生〜」とか言ってきた。冗談なのは分かるけど、むず痒い。そんな私を見てお嬢様が笑ってる。くっ。
基礎を教えてからこれが練習曲だよって、グリーンスリーブスを吹いたら——
横で見守ってたお嬢様に「あれ?前よりうまくなってない?」って言われた。
子供たちもうんうんって頷いてる。
う、うれしい……けど……ちょっと照れ死ぬかと思った。
10月某日
音を外しても戻ってこれた。
今日はちょっと調子が悪かった。指もずれて息も続かなくて、
「あれ、どうやって吹いてたっけ?」
ってなった。
でも焦って音を外しても、落ち着いて深呼吸したら、最初の音に戻れた。
それだけでなんだか自分を少し褒めてもいい気がした。
お嬢様が「今日はちょっと疲れてる?」って聞いてきたけど、
私は「ううん、大丈夫」って笑えた。
嘘じゃない。ちゃんと前より吹けるようになってるんだ。
10月某日
お嬢様はずるい(2回目)
お嬢様がまたリュートで「Lemon」弾いてた。あれ反則。
気づいたら手が止まってて、聞き入って涙が出そうになってた。
……何よ、あんなに綺麗に弾けるなんて。
せっかく練習してたのに、負けたみたいな気がしてちょっとだけ悲しくなった。
でも私、リコーダーは誰よりも好きでいたい。下手でも好きでいたい。
10月某日
今日はちゃんと笑えた
今日、お嬢様と一緒に子どもたちと遊んだ。
リュートに合わせて、私もリコーダーで参加した。最初はドキドキしたけど、
「カティの音、あったかいね」って言われてびっくりした。
うそ……?って思ったけど、嬉しくてちゃんと笑えた。
練習ちゃんと伝わってたのかな。
……リコーダー、やっぱり好き。
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