第2話 異世界転生準備期間に入ります!
その夜――月が、なんだか妙に赤かった。
ただの気のせいかもしれないけど、その怪しげな色に異世界っぽさを感じた私は、胸が高鳴ってしまった。
「ねぇ、なんかあの月に吸い込まれて異世界転生とかできそうじゃない?」
帰宅後すぐにLINEを開いて、ゆいかに興奮気味で送る。するとすぐに返事が来た。
『たしかに、異世界転生したいよなぁ』
その一言でスイッチが入る。
これはもう運命の前触れだ。私たち、いま異世界への扉の前に立ってるんじゃないかって――そんな気すらしてきた。
「ちょっと試しになんかやってみよ!」
この軽い一言が、私たちの全力異世界転生プロジェクトの始まりだった。
「異世界転生といえば、向こうから召喚されるパターンと――」
「死ぬパターンね」
ゆいかは即答。息ぴったりすぎて怖いくらい。
「さすがに“死んで転生”は、本当に死ぬ覚悟できてからで良いかなって……」
「いやそれな。じゃあさ、召喚パターンって基本“魔法陣”から呼び出されるよね?ってことは……魔法陣書けばいけるんじゃね?」
「それだ!!」
ノリだけで世界が動くタイプの私たち、すぐに実行モードに入った。
私はスマホを取り出して、検索欄にこう打ち込んだ。
『魔法陣 書き方』
出てきたのは、見覚えのあるアニメ風デザインの魔法陣たち。
カッコいいけど……違う、ガチ感が足りない!
「ゆいか〜、ネットのやつ全部アニメ調でダメだわ。なんか本物っぽいの欲しい」
「じゃあ図書館行ってみる? あそこ地味に古くて、なんか怪しい本とかありそうだし」
「それな!明日休みやし、朝から行こ!」
そんなわけで、翌日図書館へ向かうことが決まった。
その夜。私はベッドに寝転びながら、さらに深掘り調査に入る。
『異世界 行き方』『死なずに 異世界 転生』『実在 魔法陣』……
――どれも、ネタ記事や怪しいブログばっかり。
まあ分かってたけど、もうちょいリアルが欲しい!!
ふと、ある考えが浮かんだ。
「魔法陣って……そもそも日本にもあるんじゃね?」
そこで思い切って検索をかけてみた。
『ニホン 魔法陣』
意外にも一つヒット。しかもその内容が、なんと――
私たちの母校・湖端小学校の裏の森に、魔法陣が存在するらしいというものだった。
(え、マジ? でも……小学生の頃、あの森に行ったときは小さな広場があるだけだったような……)
ちょっと記憶は曖昧だけど、“それっぽい”場所があるのは事実っぽい。
さらに検索は続く。
『魔法陣 使い方』
すると謎の儀式マニュアルが出てきた。適当に一番上を開いてみると、出てきたのがこれ。
⸻
《異世界転生儀式》
・設立が1880年以前の図書館で、
・目に入った本に新品の赤いペンで名前を書くこと。
・服装は制服(セーラー服が好ましい)。
・7月7日、17時17分に魔法陣の上に立ち、
・詠唱「アンブラナンガスアラタワんーほい、んーほい、ほいほいほいほいヨッシーーー!!!」を唱える。
(……ダサい……詠唱ダサすぎる……)
しかも“ヨッシーーー”って何!? 誰!??
でも、必要な道具は揃ってるし、とりあえず試すだけならアリかもしれない。
「ま、まぁ……明日ゆいかに伝えてみよ」
異世界へ向けた、ちょっと本気の準備が静かに始まろうとしていた――。
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