つる

@yamanakataku

伸びる


 うねうねと空へ突き上げていく巻き付くような弦状。青々とした木漏れ日から光が差し込み、真っ白な太陽に向けてそれは希望のように伸びていく。


 しかし、その木は生命の形をしており樹の中をめぐる栄養が広く長く延びるようにせっつき、その枝は急かされるように自分の意に沿わないところまで覆い尽くしてしまう。


 始まりの場所から別れを告げ、それは木にへばりついたまま吸盤のようなものを作り、より効率的にその中身を吸収しようと試みる。


 より面積が大きい方が多くの場所へ延びることができると言わんばかりに。日差しは燦々と照らしている。大きな木は動かず、それに寄生する植物はただただ、広がり続ける。


 その夜に、雨が降る。風を伴い、雷さえ呼ぶ激しい雨。このようなことで大木は折れたりはしない。しかし弦はもっとしぶとく、より水分を吸収できるように葉を広げた。弦は大きな木を覆い尽くした別の植物になってしまったのだ。


 日の光が当たらない中の木は少しずつ腐り、崩れ落ちた。


 中身がすっからかんの弦の木は、地面に根をはっていないので崩れ落ちた。そして今度は、地面を覆い尽くすように広く広く広がっていく。


 しかし、もう日の光は当たらない。本来成長するはずの所から栄養を取った木は、他の木に覆い隠され、真っ暗になってしまった。


 土の中に潜り、少しでも栄養を得る。だが、最初の時みたいな成長は望めない。


 また、他の木にくっつくことはできないのか?弦は検討なんてしない。何も考えていない。自分の足元にある大木の残骸を覆い尽くすように、地を這っていくのみである。

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