第23話
「はあ、はあ、クエス様、寝ている時にその起こし方は体に悪いです」
プリムラが股とお尻の上を手で押さえる。
「きゅきゅう(悪かった。でも緊急事態なんだ)」
「それは、どのような?」
「きゅきゅう(夢を見た。予言の可能性がある。みんなを呼んで話をしたい)」
「分かりました」
俺はプリムラに浄化の魔法をかけて汚れを無くした。
プリムラが服を着て部屋を出て行く。
ラムザは学園を休んで兵士と共に北の辺境に行っている。
ネズミの魔獣を倒してから数カ月が経過しているが邪神教の抵抗は思っている以上に激しく中々討伐が進んでいないらしい。
邪神教も魔獣もゲーム中盤以降に出てくる敵だ。
簡単にはいかない。
俺はその間頑張った。
エリスが学園に通う際はエリスの胸元に収まり目を光らせた。
眠っている間も悪い気配があれば察知する。
更に学園内でエリスの地位を向上させる為女子生徒からお菓子を貰って可愛がられた。
学園が終わるとラムザ抜きのパーティーで皆を癒しつつ白き叡智なる手でサポートした。
皆のレベルアップに貢献した。
拠点に帰ると食事をあーんしてもらい、パーティーのみんなとお風呂に入った。
夜になっても俺の仕事は終わらない。
プリムラを気持ちよくすることで分からせ教育を施した。
そう、俺はありとあらゆる手を尽くしてみんなを守り、そしてレベルアップに貢献してきた。
今のラムザレベルまでみんなを強く育てるのは大変だが俺は頑張っているのだ!
邪神はまだ力を得ていない子供状態。
北の辺境にいる可能性が高い。
そしてエリスの代わりとなるルナを手に入れた。
みんなで北に行く事になるだろう。
「クエス、おはよう」
エリスがしゃがみこんで手を差し出す。
俺はエリスの胸を見た。
手を伝って素早くエリスの胸元に入り込む。
「ん! プリムラから聞いたわ。さあ、行きましょう」
「きゅきゅう(行きましょう)」
部屋に入るとプリムラとノワールが席についていた。
その後ろには紙とペンを持った文官が控え兵士も立っている。
「食事を食べながらではありますが、クエスのお話を聞かせて欲しいですわ」
俺は夢の内容をプリムラに通訳して貰った。
「……それは、重要なお話ですわね。ただの夢である可能性はありますの?」
「きゅきゅう(あります)」
「ありますと言っています」
「それでも夢で無かった場合は厄介ですわね。邪神が魔獣を産む適合者を手に入れた……すぐにお父様、王に知らせるのですわ」
「すぐに知らせます!」
兵士と文官がせわしなく部屋を出て行った。
残った兵士がノワールに声をかける。
「ノワール様、自ら王の元へと赴かないのですか?」
「恐らく、わたくしたちはラムザを追って北に行く事になるでしょう。それはほぼ確定ですわ。それよりもやることがありますの」
「そ、それは?」
「ノワールう、マインを呼んだんじゃねえのお? いつまで待たせてんだよお」
ゲーム序盤パーティーのメスガキが入ってきた。
マイン・ガキライラメス。
桃色髪のツインテールで背が低く子供のような体つきだ。
世の中を舐めたような笑顔で犬歯が少し見えている。
「マイン、まだ呼んでいませんわ」
「もう入ったしい、マインの力が必要なんだろお?」
兵士が動揺する。
「ま、まさかマインまで巻き込むつもりですか!」
「私はこの前炎魔法を撃たれました。危なく当たる所でした」
「抑え役のラムザがいない今マインは危険です!」
「るさいなあ。また燃やしてあげようかあ?」
マインが兵士に杖を向けた。
背が小さいせいかその杖が大きく見える。
「マイン、お部屋の中で炎を使うのはよくありませんわ」
「んだよお、じゃあそこの兵士、マインと外に出ろよお」
「マイン、兵士に杖を向けるのはいけませんわ」
「あっちがごちゃごちゃ言ってきたんだろお。あれえ、ビビったあ? ビビってるう?」
「く、マインの力だけは認めます、ですが性格に難があります」
「ええ、言わんとしている事は分かりますわ。そこで聖獣であるクエスにマインをパーティーに入れるかどうか、その判断をお願いしたいのですわ」
マインがにやにやと笑みを浮かべてエリスの谷間から俺を抜き取った。
そして片手で俺の背中を掴んで持ち上げ視線を合わせる。
「こんなちっちゃいモフモフに何が分かんだよお、うりうり」
マインが俺の頬を杖でグリグリと突く。
「きゅきゅう? (好きにテストしてもいいの?)」
「好きにテストしていいか聞いています」
「構いませんわ」
「きゅきゅう (白き叡智なる手で見極める。外に出ようか)」
「白き叡智なる手で見極めます。外に出ましょうと言っています」
「きゃははははは! マインと勝負すんのお? やってやるよお」
マインが見下したような笑みを浮かべた。
みんなで外に出る。
マイン、ノワールのお墨付きを貰った。
好き放題してやんよ!
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