後悔も感謝も、全てその指輪に
しがない女子高生
第1話
「はじめまして。今日からこのクラスの担任をします。
私がこのクラスになったことが悪かったのか。はたまた、この先生が担任になったのが悪かったのか。私には分からないけれど、某映画のようにこれを表現するならば、「何かが始まる音がした」。
「よかったぁ、レイナ同じクラスだ!」
小学校時代からずっと仲が良かったユカと、二年生も同じクラスになり、私の心は踊っていた。担任の先生誰だろうね、なんて話していたら、一学年の時からの学年主任が
「イケメン先生の登場です!」
と茶化した。そっと入ってきたその"イケメン先生"はウルフヘアの若い男の先生だった。
「入りにくいじゃないですか」
その声は落ち着いていて、柔らかかった印象がいまだにある。
その先生は中川優斗と言うらしい。「このクラスに「ゆうと」って居るんでしょ?」なんて笑いながら言うから、この人は距離の詰め方が上手なんだと思う。年齢は23歳。好きな食べ物は給食のカレーライスで、好きな芸能人は新垣結衣。新垣結衣が好きな男は信用ならないと、新垣結衣が好きな男と結婚した母親が言っていたことを思い出した。
「先生、人の名前覚えるの苦手だから時間かかるかも。あと、先生基本呼び捨てだから呼び捨て嫌な人は言ってね。」
今までに呼び捨てをしてきた先生はもちろんいたけどここまで配慮してくれる先生は居なかったなと思う。
「あと質問ある人いる?居なかったらもう配布物配ろうかなって思うんだけど」
「ある!中川先生彼女いますかー!」
周りは「それ聞くの?」と笑いながら困惑している声も、「いけいけー!」という声も聞こえる。中川先生は少し困った後に
「さぁね」
と答えた。この人は嘘が下手なんだろう。このクラスの大抵の人が「この人彼女居るんだ」と思っただろう。私の胸が、少し鳴いた気がした。
その後は別のクラスの友達が
「レイナの担任、超イケメンじゃない?」
とわざわざ言いに来たりした。
「そうかな」
と何も知らないように笑ってみた。
「レイナさん、だよね。ごめん通るね。」
教室の扉の前で屯していた私にそう伝えて、私に触れないように通って行った。名前覚えるの、苦手って言ってなかったっけ。また、胸が鳴いた。
「すみません…」
職員室に向かうその背中を、じっと見つめていた。この感情が何なのかを、理解するために。
後悔も感謝も、全てその指輪に しがない女子高生 @shiganaijk
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。後悔も感謝も、全てその指輪にの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます