犯罪分析システム

ボウガ

第1話

「本当に世のためになったんでしょうか」

 哀愁を漂わせながら電子タバコを一服。若い刑事は年配の刑事にたずねる。

「ああ、そりゃわかんねえが、そういうものだろう」

「Bさんの生きてきた時代とは違うんですよ、いまはほら、ITだか電脳だか、AIなんて難しい問題、課題が山積してるんですよ、今回だってホラ」

 スマートフォン上方にホログラムで投影された。そこかしこに事件の情報が投影されると、その一部をひっぱりだした。

「ニュースですよ、見てください、この事件」

「お前はまだわかかったんだ、いつまでも気にするな」

「トラウマもんですよ、デウスエクスマキナが稼働しはじめてからこっち、世界は豹変したんだ、あらゆることの予測精度があがり、それは過去に関するものだった、子の批判はもっともです」

「どれだって?」

「この記者、斎藤といってますけど元警察官で、どうやらずっとあらさがししてるみたいですね、そのせいで、いや、そのおかげというべきか」

「お前が気にすることじゃない、お前は前を向け」

「どっちが前かわからない」

「誰でもそうさ、つくっちまったものはしかたない、それで責任をとる、そうやって世界はまわってる、ただそれだけのことだ、個人に責任はない」

「そうですか、彼にもそうやって言ってやれる人がいたならいいですけど」

 デウスエクスマキナは、過去のある一家惨殺事件を調査、その父の実父が犯人だとつきとめた。その一家で唯一生き残った息子は、長らく記憶喪失にあったが、事件当時を思い出し、そのことで突然PTSDを発症。やがて、おとなしい人格さえ変異し、強行にいたる。

 若い刑事はいった。

「笑えないですね、事件を未然に防ぐはずのAIが、事件を生むなんて」




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

犯罪分析システム ボウガ @yumieimaru

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る