第5話  筆が進まず一か月……

転生ものが苦手だ。


読み物としては面白いものもあるし、設定の自由度も高い。

バトルもできるし、読者も多い。Web小説界ではド本命の王道ジャンルだ。


だけど、自分の手では書きたくない。



理由は、あまりにも“男性作者の願望”が透けて見えてしまうからだ。



こんな風にモテたかったんだろうな。

自分をバカにしてきたやつらを見返したいんだろうな。

無双して、誰にも否定されない世界で、理想の自分として生き直したいんだろうな。


……わかる。めちゃくちゃわかる。


 


創作の源泉は、願望や劣等感の裏返しだってことも理解はしている。


でも、どうにもそれが**“むき出し**のまま世界観に乗っかってる作品を見ると、

自分の中で何かがザラついてしまう。



だからこそ、TL(ティーンズラブ)ならいけるかもしれないと思った。


願望が「他人のもの」なら、客観的に見られるんじゃないか。

女性の願望なら、ちょっと一歩引いたところで観察できるんじゃないか。

自分にはない感性だからこそ、新鮮さで書けるかもしれないし、読者にとっても新しい体験になるんじゃないか……と、思っていた。


 


──けれど、それは大きな勘違いだった。


実際に書こうとしてみると、「距離があるから書ける」どころか、まったく“乗れない”。

感情が動かない。

キャラクターの気持ちに共感できない。

言葉が出てこない。


「他人の願望」って、そもそも書くのめちゃくちゃ難しい。


 

この辺りで、気づいたら1か月が過ぎていた。



最初に「小説を書こう」と思ったのが、2025年の1月2日。

そこから、ネットでの調査、ジャンル研究、ネタ出し。

メモ帳に構想だけは書き溜めた。

多分、仮タイトルだけなら50くらいは出来ていたと思う。


でも、本文は1行も書けていなかった。

いや、本文どころか起承転結のプロットすら出来ていなかった。


 


当然、仕事もしながらなので時間は限られている。

しかも、これは報酬が出る作業ではない。

つまり、「金にもならない上に、苦しみだけが発生する作業」だ。


若い頃なら、「自分を磨くため」とか「夢があるから」とかで突っ走れたかもしれない。

けど、40を超えた今、この「無報酬で何かを作る行為」というものは。思っていた以上にかなーり、しんどい。


生活もある。

仕事もある。

疲労もある。

もう、人生の“ある程度の形”は決まってしまっている。


その中で、まだ何者でもない自分が「何かを始めよう」とする。


だけど、形にならない。

誰にも見られない。

評価もされない。


これはなかなかに重たい旅になる。

分かってはいたつもりだったけど、思った以上に厳しい道のりなことが分かり始めてきた。

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