もし、見てしまったら最後かも知れないけれど…。

甘さの一切感じられないホラー掌編集。 
本作品を紹介するならば、先ずはこの
一言に尽きるだろうか。連ねられる掌編は
何れも不穏で悍ましく
            恐ろしい。

誤魔化しなど一切、寄せ付けないこの
作品の魅力は、言うなれば 潔さ か。
コメディやモキュメントには一切寄らず、
只管に構成力と文字表現で 恐ろしさ を
追求したこの作品には、人の 根幹 を
揺さぶる恐怖(ホラー)が宿る。

もう既に、乗っけから不安と恐怖とに
黒々と染め抜かれた第一話。何故、病院に
いるのか。包帯を巻かれた顔、そして
失われた記憶。祖母の死に際しての何やら
得体の知れない不安と根源的な嫌悪。
 第二話は、地方の御国言葉で語られる
無惨な歴史の記録。更に第三話に至っては
想像を絶する状況下での絶望感が。

 読み手の身体機能を、ゆっくりと
       いつの間にか奪って行く。

呼吸を忘れる、心拍数が跳ね上がる。
手に汗握り息を詰めて固唾を呑む様な読書
体験は、なかなか出来るものではない。

目を逸らしたい。
         だが、許されない。

いつの間にか、次の話を心待ちにする。
ホラーとは、実にそういう類のもので
あるのかも知れない。


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