転生したら最強運メンダコでした〜魔王を倒して錬金パティシェリリスとスローライフを目指します〜

マカロニ

第1話:フワフワ転生! メンダコだけど、運は最強!?

俺は星野タクミ、25歳。

朝焼けが海面をキラキラと染める土曜日の朝。

いつものように釣り竿を手に、海辺に立っていた。


平日は仕事に追われ、残業ばかりの平凡な会社員だ。

休日までの日数をカウントダウンしながら生きている。

特別な才能もないし、釣りが上手いわけでもない。

ただ、波の音を聞きながら竿を振る時間が、俺のささやかな幸せだった。


ただ――一つだけ悩みがあった。

運がない。

本当に、コント並みにないのだ。


先週の休日、電車に乗ったら、目の前のおじさんが俺と同じチェックシャツ。

気まずい空気が流れた。

コワモテ顔なのに、少し恥ずかしそうに目を逸らすおじさん。

俺もそっとスマホに逃げた。


さらに、駅の自販機でスポーツドリンクを買おうとしたら、謎の「納豆ソーダ」がガコン。

「最強粘りをあなたに!」と書かれた缶が出てきた。

開けた瞬間、プシュッと納豆臭が爆発。

周りの女子高生に「うわ、納豆!?」とジロッと見られた。


友達には「タクミの不運、漫才にできるぞ!」と腹を抱えられた。

でも、俺だって、キラキラ輝く運のいい人生を夢見てたんだ!


そんなことを思い出しながら、コンビニの塩昆布おにぎりとホットコーヒーを手に、テトラポッドに腰を下ろす。

朝の冷たい空気が気持ちいい。


水平線を眺め、コーヒーを一口……と思ったら、フタが緩んで熱々の液体が手にドバーッ!


「うわっ、熱い!」


飛び上がり、バランスを崩す。

次の瞬間、足が滑り、テトラポッドからズルリ。

頭をガツンと打ち、海に沈んでいく。


波がゴボゴボと飲み込み、意識が遠のく。


その時、ふとつぶやいた。


「もう少し……運のいい人生、欲しかったな……」


それが、俺の最後の記憶だった。


ふぁ……なんだ、この感覚?

体がフワフワしてる。まるで水に浮かんでいるみたいだ。


目を開けると、目の前はキラキラ輝く青い世界。

光の粒がチラチラ舞い、柔らかな水流が体を撫でていく。


ん? ここ……異世界?

ついに俺、転生したのか!?

勇者か、それとも剣聖なのか!?


ワクワクしながら自分の体を見下ろした瞬間――


「ん? 体が……プニプニ?」


じっくり見直して、思わず叫んだ。


「ス、スライム!? いや、待て、これ……メンダコ!? 俺、なんでメンダコなんだ!?」


勇者でも剣聖でもなく、深海のプヨプヨ生物!?

スライムより地味じゃないか!

プニプニの体にピョコピョコ動く触手。

星柄の模様がキラキラ光ってるけど……。


見た目はちょっと可愛いとしても、どうやって冒険すりゃいいんだよ!


心で嘆きながら、触手をプルプル震わせた。


でも、よく見ると、このメンダコ、なんだか特別だ。

星柄が夜空みたいに輝いている。

コンビニの限定スイーツみたいなプレミアム感!


普通のメンダコじゃない。きっと何かすごいんだ!


そう励ましつつ、名前を決めた。


「そうだな……フワフワ漂ってるし、フワルって呼ぼう。シンプルでいいよね」


よし、フワルとして新人生を始めるぞ!

転生ならチート能力があるはず!


触手をピョコピョコさせ、周りを見渡す。

海の中を探索だ!


海はまるで絵本の世界のようだった。

ピンクやオレンジ、紫のサンゴがキラキラ輝き、貝殻がチカチカ光る。

熱帯魚がヒラヒラと泳ぎ、遠くに大きな海の街が見えた。


サンゴに囲まれた水色の看板には、異世界の文字で《アクアステラ》と書かれている。

冒険の始まりを予感させる名前だ。


「よし、アクアステラに行ってみよう! メンダコでも、面白いことが待ってるはず!」


触手をゆらゆら、フワフワと街を目指す。


アクアステラ――海底都市。

都市全体が巨大な魔法の泡に包まれており、人も海の生き物も呼吸ができ、地上と変わらない生活ができる場所のようだった。


巻き貝の建物が立ち並び、ヒトデ型のランプがチカチカ光る。

市場では魚たちが「新鮮な海藻、買わない?」と呼び合っていた。

クラゲたちがフワフワおしゃべりしている。

人間っぽい人も普通にいる。


通りすがりの魚が笑顔で声をかけてくる。


「新顔だな! ようこそ!」


市場の広場では、ヒトデ楽団がキラキラな音色を奏で、小さな魚がクルクル踊っている。


お菓子屋のおばちゃんが声をかけてきた。


「新顔のメンダコ? これ食べて元気出しな!」


甘いサンゴのお菓子をくれた。

ポリポリかじると、黒砂糖のお菓子を思い出すホッコリ味。


「ふふ、ありがとう! この街、めっちゃいいね!」


おばちゃんは「またおいで!」と手を振る。


広場では「海の守護者のお祭り」の準備が進んでいた。

住人が「今度のお祭りに来なよ!」と声をかけてくれる。

アクアステラ、ほんと温かい街だ。


市場の片隅で、小さな貝が話しかけてきた。


「オレにもお菓子くれ!」


目がパチパチ、愛嬌たっぷりだ。

触手でツンツンしてみる。


貝くんにお菓子を差し出しながら尋ねた。


「貝くん、名前は?」


「オレか、パチルだぜ! メンダコのお兄ちゃん、名前は?」


「フワル! そうだ、パチルくん、冒険者ギルドみたいなの、あったりする?」


パチルがパチパチ目を輝かせた。


「冒険者ギルドなら、街の中心のデカい巻き貝のビルだ! キラキラしてるからすぐわかるぜ!」


「ありがと、パチル!」


「頑張れよ、フワルお兄ちゃん!」


パチルがパクパク見送ってくれる。


街の中心にそびえる大きな巻き貝のビル。

「冒険者ギルド」の看板がキラリと光っている。

異世界といえば、やっぱりギルド!


フワフワと中に入った。


ギルドは大賑わいだった。

サメ頭の大男が「次のクエストは俺が!」と吠え、クラゲの女の子が「回復なら任せて!」とニコニコ。

カウンターには、ピンクの髪がサラサラの受付嬢、アネモネ。

首のお守りがキラッと光っていた。


「新人さん? 冒険者登録する?」


アネモネの声は、海の波みたいにキラキラ。

メンダコなのに、心がポカポカ!


「あ、はい! 登録、お願いします!」


触手をプニプニ動かし、サインしようとしたその瞬間。

ステータス鑑定盤がバチバチッ!


火花を散らし、ドカン!

キラキラ破片がポップコーンのように弾け飛んだ。


「うそ、壊れた!? ごめんね、ちょっと待って!」


アネモネが奥に消える。


ドスドスッと重い足音が響いた。

巨大なシャコのギルドマスター、ボスシャコ登場!

赤と緑の甲殻がピカピカ。ギョロッと俺をガン見した。


「お前か、新人! ステータス、俺が見てやる!」


ボスシャコが股間からゴソゴソ、水晶玉を取り出す。


俺は心でツッコんだ。


(股間から!? いや、衛生的にどうなの!)


 水晶玉をゴロッと転がす。


 ボスシャコの目がバコーン!


「なんだこの運!? お前、最強の運のメンダコだぞ!」


「え、運いい!? 俺、初めてだよ、そんなの!」


 シャツお揃い、納豆ソーダの俺が、最強の運!?


 さらに、アイテムボックススキル《スターボックス》持ち。

 物を無限にしまえる空間だ。めっちゃ便利!


「海の生き物と海の魔物の違い、知ってるか?」


 ボスシャコが突然ドヤ顔で尋ねる。

 俺、考えて答えた。


「え、魔物の方が、なんかインフルエンサーっぽい?」


 ボスシャコが甲殻をガチガチ鳴らした。


「バカモン! その“淫なるフルフィーちゃんっぽい”発言、詳しく聞かせろ!」


「いや、フルフィーちゃんじゃないです! 影響力のある人みたいな……」


「体への影響力か! その淫なるフルフィーちゃんは、どんなキラキラオーラで誘惑する!?」


 ボスシャコが暴走モードに突入。


 アネモネが飛び出し、叫んだ。


「ボス、淫なるってうるさい!」


 バチン!


 アネモネのパンチが、ボスシャコの顔面にクリティカルヒット。


 ボスシャコは激しく転がり、ゴロゴロ転がり、壁にドーン!と激突。

 甲殻がカチカチ鳴り、「ぐわ、すまん……」と気絶した。


(海の生き物と海の魔物の違い、結局なんだったんだ……)


 アネモネ、ナイスパンチ!

 俺、触手をプルプル震わせる。


「フワル、気にしないで。ボス、たまに暴走するの」


 アネモネの笑顔は、海の星みたいだ。


 俺、ふと気になって尋ねた。


「アネモネさん、もしかして昔は冒険者だったりする?」


 アネモネは懐かしそうに微笑んだ。


「ふふ、懐かしいな。昔ね、わたし、冒険者パーティを組んで旅をしていたの。海底の遺跡を探索したり、凶暴なシャークドラゴンと戦ったり……。まあ、この話はこの辺にしておくわね」


 アネモネが意味深に微笑む。


 ギルドが落ち着き、アネモネが新しい鑑定盤を持ってきた。


「フワル、他のステータスも見てみる?」


 触手を置くと、火花なしで光がキラキラ。


《運:MAX》《スターボックス》《スター・エアリアル》


 《スター・ヴォイス》で地上の生き物とも話せるし、《スター・エアリアル》で呼吸も大丈夫みたい。

 メンダコなのにすげえ!


「フワル、こんなステータス、ギルドでも珍しい。素晴らしい冒険者になれるよ!」


 アネモネの言葉に触手がプニプニ。


 でも、不安も少し。


「でも、プヨプヨな姿で、冒険者やっていけるかな……」


 近くの魚の子供が、キラキラした目で近づいてきた。


「ねえ、お兄さんの星柄、めっちゃキラキラ! 絶対ヒーローになれる!」


 無邪気な笑顔に、触手をピョコッ。


「ふふ、ありがとな! ヒーロー目指して頑張るよ!」


 アネモネがカウンターから身を乗り出し、ニコッと笑う。


「じゃあ、さっそくクエスト受けてみる? 新人さん向けの簡単なの、あるよ!」


 そのキラキラな笑顔に、断れるわけない。

 触手をプニッと上げて答えた。


「うん、受ける! どんなクエスト?」


「サンゴの掃除! アクアステラのサンゴ礁に溜まったゴミをキレイにしてほしいの。メンダコの触手なら、細かいところも得意でしょ?」


「なるほど、プニプニの特技、活かせるかも! よし、引き受けた!」


 アネモネが依頼書にサラサラとサイン。

 依頼書を渡してくれた。


 触手をピョコピョコさせ、ギルドを出た。


 サンゴ礁はアクアステラの外れ。

 キラキラ輝くピンクや紫のサンゴが広がるエリアだ。


 ゴミって言っても、海藻の欠片や貝殻の破片が主。

 触手をスルスル動かし、ゴミを拾う。


 《スターボックス》にポイポイ放り込む。

 無限収納、便利すぎ!


(ふふ、これならメンダコでもバッチリじゃん!)


 なんて調子に乗ってたら、サンゴの隙間にキラッと光る何か。

 触手でそっとつつくと、輝く真珠がコロン。


 普通の貝の真珠じゃない。

 星屑みたいにキラキラしてる!


「なんだこれ……めっちゃキレイ!」


 思わず《スターボックス》にしまっちゃおうかと思った。

 でも、クエストの報告ついでにアネモネに見せることにした。


 だって、俺の“最強の運”が引き寄せたアイテムかもしれない!


 ギルドに戻ると、アネモネが手を振ってくれる。


「フワル、おかえり!」


 触手をプニプニさせながら、クエストの報告。


「サンゴ掃除、完了! ゴミ、全部スターボックスに片付けたよ!」


「さすが、早い! メンダコの触手、優秀だね!」


「でさ、掃除してたら、こんなの見つけたんだけど……」


 《スターボックス》から星屑パールを取り出し、触手で差し出す。


 アネモネの目がパッと見開く。


「これ、どこで……?」


 彼女の声が一瞬、硬くなる。


 いつもキラキラな笑顔が、ちょっと真剣な表情に。


 ボスシャコがドスドスと現れ、呟いた。


「星屑パールか……運命の日が近いな」


 アネモネが静かに続ける。


「かつてこの街を救った勇者が残した言葉。星屑のパールが現れる時、世界に危険が迫る……」


 その瞬間、海底がゴゴゴッと揺れた!


 サンゴがガタガタ震え、ヒトデ楽団の音が止まる。

 市場の魚たちが「なんだ!?」と騒ぐ。


 巻き貝のビルがミシミシ鳴り、遠くの海底ダンジョンから不気味な唸り声。

 アクアステラのキラキラな光が一瞬揺らぐ。


 アネモネの目が鋭くなる。


「フワル、準備して。これは……魔物の気配かもしれない」


 星屑パールが、フワルの触手でキラッと光る。

 まるで警告するように震えた。


 海底ダンジョンの奥――

 蠢く魔物の影が、アクアステラに迫る――!


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