壁
Kei
壁
アパートの隣にマンションが建つ。
そこの土地はなかなか買い手がつかず、長い間空き地になっていた。側に住んでいる自分が言うのもなんだが、駅から遠く、周りにコンビニもない。そんな不便な場所で、面積もアパート2棟程度の中途半端な大きさだった。そこにマンションを建てるという。
まもなく工事が始まった。
このアパートは壁が薄い。工事の音は紛れもなく騒音だった。私の仕事は不幸にしてシフト制だったため、休日でも部屋でゆっくり寝ているといったことはできず、工事が始まるとともに外出しては夕方に帰ってくるという過ごし方を余儀なくされた。
そんな状態だったため、工事している様子を実際に見ることはなかった。しかし外から帰ってきた時にはマンションが段々と出来てきていることが見て取れた。
その日は仕事の休みが祝日と重なったため、私は騒音から避難せずに済んでいた。ぼうっとしていると、なんとなく部屋が狭いような気がした。もともと狭いのだが、そういう感じではない。
マンションの建設が始まって以来、日中部屋にいられるのは初めてだった。どうやら感覚がぼけてしまったらしい。
それから数日後、私は酷い風邪を引いて仕事を休まざるを得なくなった。
職場に電話した後、ふらふらとベッドに横になった。
熱にうなされていると9時になった。外では工事が始まった。
ダダダダダダ…
ガガガガガ…
アパート全体が震えるような騒音だ。頭が割れそうに痛い
視界がぼやけてきた
…
何かおかしい…
天井が動いている気がする… いや、そんなはずはない。
… あ…
… “壁”だ…
“壁”が振動と共に迫ってきていた。
壁 Kei @Keitlyn
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます