第23話 私情警察6 ~中編~
「どうぞ、おかけください…加納さん」
「失礼します………」
中年女性の名まえは加納登美子。依頼者の母にあたる。
彼女は静かに腰掛けた。
「話しは聞いております…。息子さんの無念を晴らしてほしい…ですね?…」
「はい。息子には愛犬がいました。その仇を取ってほしいのです…」
「犯人は動物虐待の常習犯で…今回息子さんの愛犬が被害にあわれた…」
彼女は頷いた。
「私と息子は犯人に何度か注意しましたが…聞く耳をもちませんでした。それどころか私たちをターゲットにして、犬のウルフィーにもいたずらをしてくるようになりました。家の庭に爆竹を放り投げたり、犬や私たちを改造銃で撃ってきたり…そして先月…ウルフィーはヤツのボウガンを腹部に喰らって…」
(亡くなったというわけか…)
「犯人は犬より知性がないですね…」
「警察にも相談したのですが…。立証が難しいとのことでした」
(…裏の人間とつながりがあるか…もしくは誰かの入れ知恵か…)
「そいつはいつも言ってました。動物はイジメても訴えられないから楽だと…。そして、それ以来…息子は部屋に閉じこもってしまってしまいました…」
すべてを話すと加納さんは手をギュッと握りしめた。
「あいつは…反省なんかしていない!ヤツにとってはただのペットなんでしょう…。でも!わたしたちにとっては家族も同然だった…!!」
ギュッと握った拳は悔し涙で濡れていた。
「あなたの事情は理解できました…」
だが…オレには必ず聞かなければならないことがある。
「加納さん。オレがすることは法に反することです。そしてあなたはその犯罪に加担するのと同義…。その意味がわかりますね…?」
「ええ…!息子とウルフィーの無念と晴らせるなら…かまいません!」
その瞬間…加納さんの顔が豹変した。
「もう一度!息子の笑顔が見たいのです!お願いします!!」
すべてを話し終えた加納さんは、オレに頭を下げてきた。
「わかりました…。あなたの無念…オレがはらしましょう……!」
「ありがとうございます…!」
「オレも犬を飼ってたんで…ペットは家族同然という感覚…わかりますよ」
「そう…なんですね…ここに来てよかった…!」
外道が生み出す負の連鎖…。それによってうまれた無念。
覚悟するがいい…!外道が…!貴様は人生を謳歌おうかする資格はない…!
おまえがしてきた虐待の数々…すべておまえ自身に味あわせてやる。
人生のツケは必ずまわってくるということを…オレがその体に刻み込んでやる…!
~~~
資料によると、外道は神出鬼没なようで今回は場所を特定できなかった。
だから自分で探す必要がある…。
一つ分かっているのは…半グレとつながりがあるらしいとのこと。
まぁ…それだけ分かれば、充分だ。
歩くこと20分。資料の半グレ集団がいた。相手は10人か…。
ツカ……ツカ……ツカ……
「よう、アホども。コイツを探しているんだが…知らないか?」
オレは手に持っていた写真を見せた。
「あ?なんだぁ?」
「ここはなぁ!オレら大乱闘集団【巣魔武羅】が…ぐべ!」
「質問に答えろよ、アホ。おまえらの名まえなんて聞いてねーよ」
オレの右足がヤツの顎にキレイに当たっていた。自然と体が動いてしまった。
ムシャクシャしてやった。今は反省している。
「すまんなぁ、オレは外道アレルギーなんだよ」
「こ、このやろぉ~やっちまえ~」
ここからはいつもと同じ展開だ。
この間の投石で肩が少し痛むので、今回は足技だけで闘うことにした。
ローキック、前蹴り、テンカオ、旋風脚、水面蹴り。
…そして最後はストンピング(踏みつけ)!
もっと二段蹴りとかやりたかったが…フェイントが必要な相手ではなかった。
(オレが出す技ぜんぶに当たりやがる…つまんねぇヤツらだ。)
「お、ううう…」
「俺たちが、手も足も出ない…だと…?」
「クソが…!なんて強さだ…!」
「おまえらが弱いだけだ。よく言うだろ?吠えるイヌは噛まないってよ」
どれがリーダーかわからないが、とりあえず一番近いヤツを鷲づかみにした。
「無駄口はいらない。知っていることだけを話せ。こいつはドコにいる?」
「今日は…中央区の金持ちの犬をからかいに行くって…」
「そうか、情報提供ありがとよ」
オレは10人のサイフからそれぞれ金と免許証を奪って、その場をあとにした。
「ちょっとバイク借りてくからな」
「や、やめろぉ、やめてくれぇ~」
「おまえ…!それは窃盗だ!犯罪だぞぉ!?」
「あ?おまえら不良がいつもやっていることだろ!?じゃな!」
ブロロロロォォ……
オレはその場をあとにした。バイクで走ること約10分…。
例の中央区に行くと、ヤツは一人で薄暗い路地に入っていった。
オレは背後から忍びよる。
「よう、アホ。断罪の時間だ」
「うお!?なんだ急に!?いつのまにオレの背後を…?」
外道はあわててボウガンをオレにむけるが……遅い!!
ヤツの両肘をつかんで肘のくぼみをグリグリしてやった。
「あがが!しびっ…れる!」
外道がボウガンを地面に落とした。さらに間合いを詰めて…背負い投げ!
「か~ら~の!全体重を掛けたエルボー…だ!!」
ボグ!
「…………がぁ!う、うあ…!!」
こうして、ターゲットを捕獲したオレはいつもの場所に連れ込んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます