第6話、ダンジョンクリア
移動ポータルで戻ると、ギルド職員のミミさんが出口で待っていてくれた。
「皆さん! 無事だったのですね!」
「はい、ルルも無事に連れて帰りました」
ミミさんは泣きながらルルの帰りを喜んでいたけれど、ある事に気づく。
「三人は…… 階段ではなくてポータルから帰って来ましたよね? もしかして十層まで降りたのですか?」
僕はテツにぃと顔を見合わせて。
「あー、成り行きで?」
「…… 分かりました。とりあえずギルドまで戻りましょう、話しはそこで」
何だか難しそうな顔をしたミミさんだったけど、ポータル使っちゃダメだったのかな?
ダンジョン前のギルドに戻ると、他の冒険者は居なくなっていてギルドマスターだけが残っていた。
「無事見つけてくれたんだな、ありがとう」
ギルドマスターの部屋に通されると、最初にギルドマスターからお礼を言われてびっくりしちゃった。
「説明で聞いていたと思うが、本来なら冒険者のダンジョン内での行動に他の冒険者が関与する必要は無い。が、可能であれば手助けや声掛けをして互いに助け合う事はお願いしているつもりだが」
ギルドマスターがミミさんをチラッと見る。
「今回のように、帰りが遅い冒険者を探しに行くまでは、やる必要はなかった」
「申し訳ありません、私がお願いしました」
「ミミさんが悪いんじゃないよ、僕たちがやりたくて行ったんだから!」
ミミさんが謝ろうとするので、僕たちは慌てて止める。
「私のせいにゃ」
「ゴホンッ! ともかく、三人とも無事で良かった。よく無事に帰ってきたな!」
褒めて貰えたよ、良かった。
「それで……だ、十層から帰ってきたと聞いたんだが、確かか?」
ギルドマスターの目が急に鋭くなったので、テツにぃが慌てて説明する。
「すみません、ルルが気を失っていて七層から一層まで背負って戻るより十層からポータル使った方が早いと思ったので……」
「なるほど、それで十層のポータルから帰って来たわけか…… それだけか?」
ギルドマスターの目がさらに厳しくなる。
「あ……ボス部屋に入ってボスを倒しました」
テツにぃが、気まずそうに答える。
「「!!」」
「あっテツにぃのせいじゃないよ! ボスを倒さないとポータルが使えないと思ってたから、僕たちそう思ってボス部屋に入ったんだ!」
「……」
ギルドマスターが顔を手で覆って天井を見上げる。
ミミさんも何か考えて。
「すみません、最初の説明内容を改善致します」
「そうだな、我々の説明不足だ……それで? ボスを倒したと言ったな。ではダンジョンクリスタルの部屋にも入ったのか?」
「入りました」
「ダンジョンクリスタル綺麗だった!!」
「ボスのドロップは?」
言われて、僕は慌てて鞄からのボスの魔石と……。
「あっ! アベルばか!」
ボスが使っていた金属の棒を取り出そうとして、手を離した……。
スッと鞄の中に消える金属棒。
「「……」」
顔を見合わせるギルドマスターとミミさん。
「誰もいない時間で良かった…… マジックバックだな?」
「はい、宝箱からでました」
「ミミ、調べてくれ」
ミミさんが、僕の方へ回ってくる。
「アベル君、少しソレを借りて良いかしら?」
僕はマントを外し、鞄の紐を首から抜いてミミさんに渡す。
ミミさんは鞄のフタを開くと手を中に入れて、少しだけ金属の棒を出すと戻した。次にポケットの時計を出して時間を確認、鞄の中に入れて暫く……。
「ホッ」
取り出した時計を確認すると、何故だかホッとした顔をした。
「間違いなくマジックバックです。空間拡張、重量軽減で時間遅延……なし」
「ふーっ」
ギルドマスターの緊張も霧散した。
「お前たち助かったな」
「「?」」
僕たちには意味がわからない。
「このマジックバックはサイズは小型だが中にはこの入口の大きさの物までが入る。重量軽減は重い物を入れても重さを感じない。時間遅延は無しだから、中に入れた食い物とかは腐っちまう、分かるか?」
「何となく?」
鞄より大きいその長い金属棒が入るから中は広いのかな? そして中に入れると全然重さを感じ無い。だけど中の時間経過は変わらないからナマモノは危険と言う事だね。
「このサイズでこの機能だと、まあ金貨五千枚位だろうから、気を付けて持つようにすれば大丈夫か?」
「「金貨五千枚!?」」
「それとも売るか? 売ってくれりゃギルドとしては大助かりだが」
「売ると、どうなるの?」
「売ると金がガッポリ入るが、面倒事もたっぷりやってくる」
ギルドマスターがとても嫌そうな顔をする。
「だよな……」
「使うのなら使用者登録をしろ、登録すれば使えるのは登録者だけになるから面倒は少なくなる」
「無くなりはしないんだ」
「何事も裏道はあるからな、でどうするんだ?」
「途中でも相談していたんですけど、自分たちで使います。これから旅をするのにこんな便利な鞄はないですから」
「そりゃそうだよな。よしミミ、登録してやれ」
「準備しますので、少々お待ちください」
そう言ってミミさんは部屋を出ていきました。
「お前達、もう一度宝箱が出た時の状況を教えてくれ。ボスを倒して出た宝箱を開けたら、その鞄が入っていたんだな?」
「えーっと、ちょっと違くて、ボスを倒した後は魔石と金属棒が出たんだけど。鞄はダンジョンクリスタルの部屋の中にあった宝箱を開けたら入ってたんだ」
「何? ダンジョンクリスタルの部屋の中?」
ちょうど部屋に戻ってきたミミさんも聞いたのだろう、ギルドマスターと顔を合わせて不思議な表情をしている。
「通常。ボスを倒すと魔石と、稀にアイテムが残る。今回は金棒だな。そして一緒に宝箱も出るってのが定説なんだが」
「レア?」
「ん?」
ミミさんが、何か心当たりがあったのか。
「聞いたことがあります。ダンジョンのボスを倒したタイミングや手順によって、稀に。ごく稀に普通の宝箱より良い中身が入っている事があると」
「今回がそのレアってわけか……うん。コイツらの場合、初めて登録したタイミングで初めてダンジョンに入りその日に十層まで辿り着いて初めてボスを倒した」
「ははは……」
僕たち、出鱈目だね。
「初めて尽くしだ、そりゃダンジョンも大盤振る舞いしたくなるだろうな。この件は絶対にヒミツだ、他の人や親兄弟でも言うんじゃ無いぞ。こんな事が知れ渡ったらダンジョンがとんでもない事になってしまう」
「僕だったら新人連れて真っ先に十層に行くもんね」
ギルドマスターもミミさんも、折角言わなかったのにと言う顔して睨んでる。
「とにかく、この件はギルドの最高機密として扱う。慎重に検討した上でどう公開するか、隠したままになるのか上と相談だ」
「お前達にはコレを情報料として支払おう」
机の上にドスッと大きな袋が置かれた。
「一人金貨千枚だ、コレで今回の情報を売って貰いたい」
「「せんまい……」」
「少ないかもしれんが、これ以上になると俺の個人判断ではどうしようもなくてな。色々な所に書類を出す必要があるから、お前達の名前が漏れる可能性も高くなる。それだけは避けたいだろ?」
ギルドマスターも面倒くさそうな顔してる。
「分かりました」
「助かる」
それからミミさんにマジックバックの登録とボスの魔石の買取り、ルルと情報料の分配をして別れた。
ルルは最初、情報料も要らないと言ってたけれど、これは口止め料も込みで、受け取らないとギルドへの反抗意識ありと取られるから受け取るべきだとミミさんに言われ渋々受け取っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます