第4話、初めてのダンジョン3

 side ルル


 アイツらはズルいにゃ。


 いつも私たちを馬鹿にして、小さいだの、弱いだの、可愛いだの…… そんな事を言われるより、私は強くなりたい!


 強くなって、他の皆んなを見返して、どうだ私は強いだろう! って言いたい。そして、その力で仲間を守りたい……。


 「いたたた……」


 何とか四層までは逃げ回る事で辿り着けた。けれど、ここからはゴブリンも出てくる。


「気をつけるにゃ」


 ゴブリンを避けて隠れていると、ギルドで一緒になった二人が降りてきた。丁度良いのでコッソリ後をつける。


「アイツらもズルしてるにゃ……」


 アイツらは、ゴブリンをアッサリ倒した。


 あれは武器が良いのだ! コッチは一生懸命相手の動きを避けて、僅かな隙にナイフで少しづつ傷つけて、やっとの思いで倒すのに……なのに、アイツらは簡単に近づいてサクッと倒してしまう。


 どうしてこんなに差別するのか! 私たちは強いとダメなのか!?


 アイツらは五層でも簡単に魔物を倒して進んだ、途中六層の階段を見つけて下りて行ったのには驚いたけど、直ぐに戻って来たので覗いただけだったのだろう。


 その後、帰るつもりなのかコッチに向かって歩いて来たので驚いて慌てて隠れた。


「六層……いけるにゃ」


◀▶︎ ◀︎▶︎ ◀︎▶︎ ◀︎▶


side アベル

 

「居ないなあ」


 取り敢えず五層まで降りてきた僕たちは、ルルの匂いを探して歩いていた。


「まさかもっと下に?」


「それは無いだろ、初めてのダンジョンで五層までってのも危ないのに、一人でなんて無茶だ」

 

 やっぱりテツにぃもそう思うよね。

 

「そうなんだけど、十層までの地図を欲しがってたなんて何でだろうって気になって」


「取り敢えず六層の階段まで行ってみるか?」


 ・

 ・

 ・


「ルルの匂いだ!」


 間違いない、階段にルルの匂いが残っている。


「マジか……下に降りたのか?」


「階段の先に匂いが続いているから、間違いないよ!」


「チッ、仕方ない。アベル急ぐぞ! 流石に六層は危なすぎる」


 六層に下りてきた僕たちは、貰った地図を確認して七層への階段に近い方向からルルを探していた。もし匂いが七層に向かっていなければ六層を探せばいい、そう思い七層の階段に向かったんだけど……。


「下に行ったみたい……」


「くそッ!」


 最悪な事に、七層への階段は比較的分かりやすい場所にあって、地図がないルルにも簡単に見つけられたみたいだ。


 七層……。


 流石に危ない感じがする、ここからはゴブリンも金属の武器を持った奴らが複数現れる。上手く連携取らないとテツにぃと一緒でも危ないだろう。


 テツにぃも緊張しているのが伝わってくる。こんなに危ない場所で、ルルは一人で心細い気持ちでいるんだろうな。


「ッや!」

 

「!!」


 声が聞こえた!


「あっちだ!」


 テツにぃが声が聞こえた方へかけ出す。七層を出来るだけ急ぎながら、途中出会った魔物を上手く倒しながら進む。


「ルルッ!!」


 四匹の魔物と、うつ伏せに倒れた人影が見えた!


 間に合え!


 テツにぃが走った勢いのまま盾を構えて一匹のゴブリンを跳ね飛ばす。ゴブリンが驚いて止まっている隙に僕が一匹を切り倒し、のこり一匹は……テツにぃが槍で突き刺していた。


 僕は、押し倒されてたゴブリンに止めを刺す。


 テツにぃは、辺りを確認して他に魔物がいないか警戒。


「ルル! ルル! 大丈夫?!」


 倒れているルルに声を掛ける、こんな時は身体を揺すっちゃダメなんだとテツにぃのお父さんから教わった。


「っ、んん……」


「気がついた!」


 ルルは気がついたようだけど、身体を動かす事はできないみたいで横たわったままだ。


「仕方ない、背負って行くか」


「背負うの? テツにぃ大丈夫?」


「軽そうだから何とかなるだろう、だがオレが戦えなくなるからアベルはその分負担が増えるぞ、行けるか?」


「大丈夫!」


 テツにぃがニッコリと笑ってくれて、ルルを背負う。


「で、次はどうするか……だな」


「?」


「一層までルルを背負ったまま移動すれば、距離があるだけその分戦闘も増える。もし十層に向かえば戦闘は二層分で済むが魔物の強さは格段に上がる、さてどっちに進む?」


 時間も遅くなっている、ルルの状態も心配だ。少しでも早く地上に戻る事を優先するなら、十層でボスを倒して移動ポータルを使えば!


「十層に行く!」


「良いんだな?」


「うん!」


 地図を頼りに十層を目指す。出来るだけ魔物との接触を避けながら、時には遠回りしながら先へと進む。


 お前たちはズルいにゃ……身体も大きくて力もあって……それなのにそんな良い武器まで使えて……絶対ズルしてるにゃ……私がこんなに頑張っているのに……どうして同じにしてくれにゃい……ズルいにゃ……ズルいにゃ。


 背負ったルルからそんな寝言が聞こえてきたが、オレは何も聞かないフリをして十層を目指した。

 


「見えた!」


 十層の階段だ、十層まで降りれば後はボス部屋しかないから休憩してボス戦に入れる。


「よし、あと少しだ!」


「よいしょ、クーーッ!」


 ルルを降ろして背伸びをするテツにぃ、ずっと背負ったままだったものね。


 十層の広くなった空間には、真ん中付近にボス部屋があり、その横に移動ポータルの柱があった。


 僕たちは移動ポータルを眺めながら、絶対ボスを倒してルルを連れて帰ると決意した。


 帰ってから知ったのだけれど、移動ポータルはその階層に辿り着くと使えるようになるので無理にボス戦をしなくても帰れたらしい。興奮していた僕たちは全く知らずに無茶な挑戦をしたのだ。


 途中での戦闘もあって二人ともヘトヘトになっていたから、ボス戦の前に休憩出来るのは助かった。水の魔石を使って水分補給と少ない保存食を食べて出来るだけ体力を戻す。


「さあ、行くか!」


 初めてのダンジョンで初めてのボス戦だ!

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