Chapter9〜親友、行方不明*永井成海目線〜

ある夜のことだった。


「碧流が帰ってこない?」


タブレットで電子書籍を見ていたらスマートフォンに風花から着信があったので出てみたら、3日前から碧流が帰ってきていないと言うことだった。


「碧流くんから何か聞いていない?


どこにいるとかどこへ行ったとか」


「いや、聞いてないけど…」


碧流が帰ってこないなんてどう言うことなんだ?


そもそも、3日前から碧流は家にいなかったって言うことなんだよな?


「碧流から何か連絡があったか?」


俺が聞いたら、

「何にも…」

と、風花は答えた。


「警察には行ったのか?」


「まだ行ってない、1週間待っても帰ってこなかったら警察に行こうかなとは思ってるけど」


「そうか」


碧流のヤツ、一体どこへ行ったんだ?


しかも、風花に何も言わずに出ていくなんて何を考えているんだか。


「俺もあいつに連絡してみるから、風花はそのまま待ってろ」


「うん、わかった」


風花から返事がきたことを確認すると、

「じゃあ、おやすみ」


「おやすみなさい」

と、言ってスマートフォンを耳から離したのだった。


「あいつ、何してるんだ…?」


メッセージアプリをタップして、碧流から何かメッセージが届いていないかの確認をした。


何にもきていなかった。


俺は息を吐くと、碧流に送るメッセージを作成した。


『風花から電話があったぞ


何かあったのかは知らないけれど、電話くらいはしておけよ』


こんな感じでいいか…と思いながら、作成したばかりのメッセージを碧流に送った。


「やっぱり、何かあったのか…?」


碧流が突然家を訪ねてきた日の出来事を俺は振り返った。


風花に嫌われたとか何とか勝手に大騒ぎしていたけれど、よくよく考えてみたら何かあったのかも知れない。


喧嘩でもしたかと思ったけれど、アホみたいにのろけてきたから…やっぱり、違うだろうな。


そもそも風花が自分から喧嘩を吹っかけてくるような短気な性格の女じゃない以前に、他人に興味も関心もない女だ。


それは俺にも碧流にも同じことだ。


「親から成績がどうこうよりも協調性がどうだこうだって、すっごい言われてたよな」


それに対しても、やはり風花はどこ吹く風であった。


風花は弟の目から見ても美人だけど、何が彼女をそうさせたのかはよくわからないがここまで他人に興味や関心がないともはや尊敬すらも感じた。


美人だけじゃなくて、そう言った強かな一面もあったから誰も風花に近づくことはできなかったのかな…知らんけど。


他人に興味や関心もない風花が碧流とつきあって結婚したことには驚いたし、碧流が風花にベタ惚れなのも驚いたし、とにかく何もかもに驚いたと言う思い出しかない。


それなのに、

「風花を置いてどこへ行ったって言うんだ?」

と、俺は呟いた。


心当たりを考えてみるけれど、やはり思い浮かばない。


先ほど送ったばかりのメッセージを確認したけれど、それを読んだ形跡はなかった。


「あいつ、何か妙なことを起こした訳じゃないよな…?」


もちろん、そんなことを起こす訳がないと信じたいところなのではあるが…送ってからまだそんなにも時間は経っていないし、まだ見ていないのも納得はできる。


「碧流のヤツ、大丈夫か…」


急に行方不明になってしまった親友に、俺はそう呟くことしかできなかった。

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