BARガンギマリ

しょもぺ

第1話 家庭崩壊したほとんどの人が酒に溺れていた!の巻

ボクがこのBARに勤めるようになって、どのくらい経っただろうか?


お酒も飲めない、BARにも行ったことのないボク。

でも、今ではこうしてバーテンダーとしてカウンターに立っているから、人生おもしろいものだ。


ボクの名前は、『奥外内 真中』(おくそとうち まなか)。 

28歳。独身。(彼女募集中)

特技もない平凡な一般市民。趣味ゲーム。

お酒はたしなむ程度。付け加えると短小包茎。

黒ぶちメガネを買い替えようと、わずかな小遣いを貯めている現在だ。


ボクが勤めているこの店 『BARガンギマリ』。(ばー がんぎまり)

ちょっとオシャレ。それでいて、どこか懐かしい雰囲気の店の佇まい。

店名がちょっとアレだが、なかなかどうして、これが心地よい場所だったりする。


今日も今日とて、一筋縄ではいかないお客さんの相手に四苦八苦。

いつになったら、マスターのようなバーテンダーになれることやら? はてさて。




現在 PM:19時48分 


カラコロ~ン♪


BARとしては、ちょっと早めのお客さん第一号だった。

そう、ちょっとだけ、変わったお客さんの来店だったのだが……


「コノ袋に金を詰メロおぉーーーッ!!」


突如、絶叫して店の入口のドアを蹴破ってきたこの客。

明らかに強盗で、カタコトの言葉に目出し帽に包丁を持って脅してきた。


「あわわ……! はわわ……!」


ボクはPCゲーのマルチのような情けない声を絞りだしてマスターに助けを求めた。


「ほっほっほっ……若いのが血気盛んですなぁ♪」


マスターは、この状況に物怖じせずに冷静な口調だった。

そして、一瞬にして視界から姿を消すと、いつの間にか強盗の背後にまわり、


「ほっほ……ちょっとだけ、痛いですよ?」


そう呟くと、強盗の首(延髄?)あたりに手刀を当て、失神させてしまった。

(ボクにはマスターの手刀すら見えないほど素早い一撃だった)


ドザン!


強盗は、くにゃりとその場に崩れ落ち、数秒後、失禁した。


「マナカくん。お客さんのお漏らし、掃除しといてね♪」


マスターは、そうボクに言うと、強盗の口を開いて銀歯をポキンと抜いた。


「う~ん。金目の物はこれしかないですね。まぁ強盗が金持ってる訳ないですがね♪」


マスターは、気絶した強盗をいとも容易く片手で引きづって店のドアの外に放り投げた。放り出された強盗の体は、大きな音を立てて、店の外のゴミ捨て場に放置された。もしかしたら、気絶ではなく死んでしまったかもしれない。

でも、ここでは警察も、そんな事をいちいち捜査したりはしない。

ここは、そんな街なのだから……


「不景気ですからねぇ……おーコワイ、コワイ♪」


マスターは、ニコニコしながら無邪気に笑い、グラスをピカピカに磨き上げながらそう言った。


そうなのだ。この街には秩序なんて存在しない。

誰もが、明日への糧を稼ぐべく、日々命がけで奮闘する。


ここは、『BARガンギマリ』


お酒を飲んでお金を払ってくれるお客さんよりも、強盗の方が多い店(笑)


ボクも、そろそろ、この店のシステムに少しだけ慣れてきたのかもしれない。

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