第6話 初心者の平均

「あ、気になったんだが、モンスターの死骸ってどうするんだ?このまま放置ってわけにはいかないだろう?」



 もしそうなら今頃ダンジョンは死骸と腐臭で溢れ返っているはずだ。



『それについては、私にお任せを』



 メナスはそう言うと、さっき倒したゴブリンの死骸にゆっくりと近づいて、機体のレンズ部分から青い光を放つ。



 するとその光に触れた死骸は光の粒子となって空中に溶けるように消えていった。



『このように、モンスターの素材および魔石は私が自動的に回収し、久住5等に割り当てられた個人領域にて保管、管理いたします』


「それって上限はあるの?」


『今のゴブリンと同程度の情報体であれば、3,000体ほど収容可能です。また、有料にて拡張も承っております』


「はえ~すげえ便利」


『魔石に関してはこちらで抽出し、管理局を通じて自動的に換金されます。法律によって、魔石は管理局の独占的な管理下に置かれていますのでご了承ください』


「素材に関しては別なのか?」


『魔石以外の素材に関しては、探索者様の個人の財産となります。多くの方は売却されるか、鍛冶職人へ持ち込み、武具や装飾品の素材として利用されます』


「じゃあ今のゴブリンの素材も売るようにしておいてくれる?」


『承知いたしました。……素材買い取り業者を選定中……現在、最高買取額は1,400円となりますが、よろしいですか?』


「じゃあそれでお願い」


 ゴブリン1体丸々買取で、1,400円か……高いのか安いのか微妙なところだな。



 最上層の一番弱いモンスターとしては高いんだろうが、こいつらに囲まれて死ぬ人もいると考えれば、安いともいえるかもしれない。



「にしても……自動で買い取り業者の選定までしてくれるとか、優秀すぎるだろ。メナス様様って感じだな」


『!……賞賛の言葉は忌憚なく発することをM.E.N.U.S.は推奨します』



 つまり、もっと褒めろってことか?……意外とかわいいやつかもしれない。



 俺の周囲をゆるゆると飛び回る白いキューブ。


 どこか無機質だが、期待のまなざし(?)を浮かべながらこちらを観察する視線を感じ、ちょっとだけ愛着がわいた。




 しばらくして————



 ゴブリンを十数体倒しながら、一層の洞窟を一直線に進んでいくと下のほうにつながる階段のような構造物が現れた。



「……あれは?」


『おめでとうございます。あれは、第2層へと続く階段。つまりここが第1層の終着点です』



 もうそんなに進んでいたのか。まだ1時間半くらいしかたっていない気がするが。


 

 体感的にはまだまだ余力がある。となると、ここで終わるのは少し物足りない。



「うーん、普通の探索者って初日でどのあたりまで潜るんだ?」


『一般的な初心探索者の皆さまの約6割はこの第1層終着点で初日の探索を終了します。残りの方々はご自分の限界を確かめるべく、可能な範囲で下層へと進まれます』



 なるほど、初日で自分の今の実力を知っておくのは大事なことだよな。俺もそうしよう。


「大体みんなどのあたりまで行くんだ?」


『統計によれば、4層終了地点まで攻略される方が最多です。その先の第5層は、監境種セントリーと呼ばれる強力なモンスターの生息域となっている為、多くの探索者様がここで引き返します』



 監境種セントリー……確かダンジョンの5層おきに出現する中ボス的なモンスター。基本的に5の倍数の階層はそう言ったボスモンスターの専用領域だ。



 たしかに初日に挑むには少しハードかもしれない。



「ちなみに、歴代の探索者で初日の最高記録は?」


『東京ダンジョンにおける初日の最高攻略階層記録は第24層、3名の探索者によるパーティによって記録を保持されています』



 24層か……その下の25層は、境界層と呼ばれるクォーターライン。上層と中層を隔てる試練の間ともいわれ、級外種オーバークラスというモンスターが守っている。


 今まで初日でそこに到達した探索者は3人しかおらず、25層を突破したものに関しては存在しない。



————もし超えられたなら……



 まあ、ひとまず5層まで行ってってみよう。考えるのはそのあとだ。


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