#02 空の向こうに、君がいる

@tka__a0211

第2話

「空ってこんなに広かったんだ」


 飛行機の窓から見える景色に、私はただ息を呑んだ。

 

「明日ついに会える ── 」

 そんな言葉をぽつりと呟き、私はまぶたを閉じる。




 

「ねえ!!彩花、月乃どうしよう!!これどっちがいいかな?!」


「葵、落ち着いて?」


 私は、仲の良いオタク友達 彩花と月乃と昨晩泊まった。

 推しが違うのに、優しいふたりは私の為に手伝ってくれている。



「葵ー!髪の毛するよー!!」

 月乃はそう言い私を呼んだ。



「⋯かわいい」

 


 私は鏡に映る自分をみてそう呟く。

 パッチリとしたまつ毛 プルっとした桃色のリップ クマ耳ヘアー

 悩んでいたあの時間が、馬鹿馬鹿しく感じてしまうくらい幸福感で溢れている。


「葵、かわいい!!晴翔くんもこれは可愛いって思うね」

「いや〜、これは可愛い。月乃ナイス!」



 彩花と月乃に背中を押され、私は2人と一緒にホテルをでた。



 揺れる電車、駅のホーム。

 見慣れた景色のはずなのに、初めて電車を乗った時のようなドキドキ感と不安さに襲われた。



「⋯着いちゃった」



 嬉しいはずなのに、複雑な感情。


 緊張を誤魔化すために、ふたりと喋り尽くす私。

 "ふたりが着いてきてくれてほんとによかった。"

 そう思った。



「〜部の方はこの列に並んでください」

 スタッフの呼び掛けが会場中に響き渡る。



「葵、がんばれ!!!晴翔くん見てくるんだよ!」


「ねえ待って!私変じゃない?髪とかメイクとか⋯」


「自信もって!!かわいいよ」



 彩花と月乃はそう言い、私が見えなくなるまで見送ってくれた。


 

「えっと、確かこれ見せればいいんだったよね⋯」

震える手で参加券と身分証を取り出す。


 "うわ、どうしよう。あと少し ── "



目の前の列が少しずつ進み、ブース手前。

 "この奥には、晴翔くんがいる。"



 私は心の中で何度も何度も言いたいことを繰り返す。



「どうぞ〜」


── 心臓の音が一段と大きくなった

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