魔封じの腕輪
「お待たせしました」
「おう、よく来た」
「さっそくだが、今後、私たち紫魔法を使うものは、平時は全員魔封じの腕輪をつけることになった。お前の分ができてきていたのを預かってきたぞ」
見ると、ピオニー女騎士はもう同じ腕輪を右の上腕にはめている。
「ピオニーさんが前から着けてたのとは違う腕輪ですね」
「そうだ。私もいままで自主的に着けていた魔封じの腕輪を外して公国支給の品を着けることになった。これは公国政府の許可なしでは自分では外せないようになっている」
「勝手に頭の中を覗かれるのは厭だから有事以外には魔法を封じる、て趣旨はわからないでもないですけど、封じないと勝手に使うだろと疑われている、て思うと不愉快ですね」
「それは仕方ない。自分にはなくて他人には備わっている能力については、理屈では他人の善性を信じたくても、感情では疑心暗鬼になる。人間というのはそういうものだ。
周囲の他人を安心させてやるのが目的だから、外からよく見えるように着けておけ」
瑪瑙のような材質の冷たい緑灰色の腕輪に優梨が右腕を通すと、上腕まで上げたところで、どういう加減か腕輪の内側が膨れてサイズがピッタリになり、ずり落ちなくなった。
「これでピオニーさんとも以心伝心というわけにはいかなくなるんですね」
「さあ、
それはそうと、今日は珍しいものが見られるようだから一緒に来い」
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