宝石色の向こう側

どこんじょう

ゴーストマシンカフェテリア

1,機械化した喫茶店

「幽霊が出るって聞いたからやってきたのに、拍子抜けね」


 そう呟いたのは、エメラルド色の髪をした少女『翠川みどりかわ 望美のぞみ』。彼女は喫茶店らしくコーヒーを飲みながら、携帯をマナーモードに切り替えた。

 そうして携帯を鞄へ仕舞った彼女はデフォルメされたネコのような配膳ロボからチョコケーキを取り上げ、自分のテーブルに移動させる。


「最近じゃどこもかしこも配膳ロボ。便利なのは良いけれど、これなら昔ながらの静かでオシャレな喫茶店が良かったわ」

「そういうお店は大抵、既に誰かが見つけてるでしょうね。そうして口コミが広がって、気付けばまたこういうロボを導入するでしょう」

「夢がないわ〜。少しぐらい期待したって良いでしょ?」


 大正ロマンな着物を着た少女が、これまた喫茶店らしく本を読みながら横槍を入れる。アメジスト色の髪が煌めく彼女は『酔月すいげつ 紫澱しおり』と言い、望美とは大学での友人同士だ。

 着物と本と喫茶店。これだけなら実にピッタリな組み合わせだが、配膳ロボとテーブルに置かれたノートパソコンが「此処は現代だ」と主張する。どうやらここにも、現代的な機械化の波が訪れていたらしい。

 更に言えば、そのパソコンは紫澱の髪と同じようにアメジスト色に煌めいていた。そこに関して言えば、現代どころか未来的と言えるかもしれない。

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