お守りの中身

AIRO

お守りの中身

 実に様々な、お守りがあります。


 安産・学業・健康・縁結び————。


 皆さんは気になったことはありませんか?


 お守りの””について。


 神社やお寺で手に入るあの小さな布袋——、開けてはイケナイとされています。


 それには理由があるのです。




 このお話は、その開けてはイケナイ理由について——、

 本当か嘘か定かではないお話です。




 ある神社には、不思議な風習がありました。

 参拝者たちは願いごとを書いた紙を、境内のご神木に結び付けていくのです。

 これらは当初、社寺の関係者にとって悩みの種でありました。


 願いを聞き届けてもらいたい参拝者たちは、あるものは願いが届くように、またあるものは毎日参拝に来られない代わりに、ご神木に願い札を巻きつけていきました。


「大切なご神木になんてことを……」


 初めは、一つ、二つだったものが人づてに広がっていき、白い葉が生い茂ったような木になってしまいました。人々の願いごとを処分するわけにもいかず、お焚き上げをすることで対処していました。


 天に近いほど願いを聞いてもらえる。

 なんの根拠もなさそうな噂でしたが、どうしても願いを叶えたい人は危険を顧みず登って行き、落ちてしまう人も後を立ちません。


 これは何か対策しなくてはならない。どうしたらいいのか、解決策がなかなか見つからなかったある晩の日。巫女が不思議な光景を目の当たりにしたのです。


 ご神木に巻かれていた願い札のいくつかが、淡く光っているのでした。

 人一倍、祈りの念が強いものだった。のかもしれません。


 てっぺんに巻きつけていなくても光る札はありました。このことがきっかけで、

 ご神木の代わりに、お年寄りや子供も巻きつけやすい結び所を設置しました。これが、現在のおみくじ掛けの始まりです。


 同じ願いを持っていた巫女は、神主にお願いして、お焚き上げをする前にしばらく光を放つ札を持たせてもらえないかお願いをしたそうです。


 巫女の願いは無事成就したことから、参拝者たちにもご利益が行き届くようにと、

 淡く光る願い札を、巫女たちの手で丁寧に回収し、清められたのち、慎重に裁断される。その紙片は、小さな布袋の中に収められ、最後に紐で封じられる——。


 そうして出来上がるのが「」。


 願いの力が封じられている。

 だからこそ、それを開けてはイケナイ。

 中の願いが抜けてしまわぬように。


 お守りはただの飾りではない。””が、静かに、確かに宿っているのです。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

お守りの中身 AIRO @airo210

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ