第2話 ラフィ殿下は黄身がお好き
さあさあやってまいりましたわよ、王都一番人気のスイーツ専門店!
何にいたしましょうか。
どれもとても美味しそうですので、少し迷ってしまいますわね。
「ここはクレーム・ブリュレが美味しいんだ」
「では、それにいたしますわ」
ラフィ殿下おすすめのクレーム・ブリュレ……楽しみですわっ!
「クレーム・ブリュレは、どうやって作られているのか知っているかい?」
「申し訳ございません。浅学ゆえ、存じませんの」
「そうか」
しょぼん、ですわ……。
ラフィ殿下を失望させてしまっていたら、どういたしましょう……。
「温めた生クリームに卵黄と砂糖の混合物を混ぜ合わせ型に入れて焼き、冷ましてからカラメルをのせるんだそうだ。幼き頃、あまりの美味しさに自分でも作ろうとしたが、厨房に行こうとしたら教育係に止められてしまったんだ……」
「まぁ……」
かわいい、ですわぁ……!
ラフィ殿下の幼少期のお姿が目に浮かびますわ。
「ところでアリア」
「はい」
非常に真剣な顔……な、何を言われるのでしょう?
「きみって、かわいいな」
・・・?
きみ……黄身……。
やっぱりわかりませんわ、黄身の一体どこがかわいいというのでしょう?
「そう、でしょうか?」
「あぁ。目を閉じてもはっきりと
「は、はぁ……」
これは……ほんとに、ラフィ殿下なのでしょうか?
恋する少年のように頬を赤らめ、熱く黄身のことを語る――こんなこと、想像もしてみませんでしたわ。
「お待たせいたしました、クレーム・ブリュレでございます」
「ありがとう」
「もったいなき御言葉」
いつの間にかラフィ殿下は普段通りのお顔になっていらっしゃいますわ。
さすがは
シャロウン家の馬車がガタゴトと窓の外を通ってゆく音で、そんなくだらない思考から脱却いたしましたわ。
「アリア、食べるぞ」
「はい、いただきますわ」
……!
お、美味しいですわぁっ!
クレーム・ブリュレって、こんなに美味しいお菓子でしたの?
ここまでカスタードとキャラメルの食感と味の対比が美しいのは、初めていただきましたわ。
ほっぺがとろけてしまいそうなほど、至福、ですわ……。
「美味しいな」
「ええ、とても美味しいですわね」
ラフィ殿下が……満面の笑みを……浮かべて……いらっしゃる……。
もう、このまま土に埋もれてもいいですわ。
いえ、むしろこの気持ちのまま埋もれてしまうべきなのですわ!
「……気に入ったようだな?」
「とても好きですわ! 毎日食べたいくらいでございます!」
「……そうか」
なんででしょう、ラフィ殿下がちょっと不機嫌そうですわね……。
「アリアのためにいくつか持ち帰りを頼む」
・・・!
ラフィ殿下、ほんとに、紳士ですわ……わたくしの、
本業は王太子殿下でございますけどもね~。
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