後ろの席の心が読める君
@sakura_sumie
お天気雨の喫茶店
——カラン、カラン。
階段を登って静かな街角の喫茶店のドアを、ようやく開けた私は少し緊張していた。
どっしりと重みのあるドアにかかっている金属のベルの音が、どこか懐かしく鳴り響いた。
ふと、ベルの音が鳴り止んだとき、自分の肩がふっと軽くなった気がした。
気のせいかな。なんだか視界もいつもよりひらけたような。
「おや、久々の新しいお客さんだ。」
私はその店員さんの顔を見た瞬間、毎晩うちの近所にたむろっている不良たちすら一掃できるほどの眼力で目を見開いていただろう。
背が高くて整った顔立ち。
真っ白な髪を括った髪型もとても似合ってる。
普段ならあまり目を奪われないタイプなのに、あまりにも綺麗な男性で、つい驚きと同時に見惚れてしまった。
けれど店員さんはそんな私の様子に動じることもなく、やわらかく微笑んで、窓際の席に案内してくれた。
「ここに来てくれて良かった。もうすぐ雨が降るからね。止むまでいつまでもゆっくりしていきなさい。」
「あ、はい。」
(雨?天気予報では特に言ってなかったけど、今も晴れているし。)
少し疑問に思いながらカウンターに戻っていく店員さんの背を眺めた。
店員さんが淹れてくれた紅茶はりんごのような甘い香りがして、味は、甘みがあってちょっとスッキリした爽やかなものだった。
紅茶を飲みながらホッとして
一息ついた時、どこからか視線を感じた。
気になって店内を見渡したが、私以外にお客さんもいない。店員さんも何か作業中の様子だった。
(私以外誰もいないし、気のせいかな)
そう思い、そのまま窓の外を覗くとなんと、晴天の中、雨が降り始めていた。
(え、本当に降ってる…!お天気雨?)
と驚いていたその時
「あれ、千歳さん?」
声は静かで、でもよく通った声が後ろから聞こえた。
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