G1 Project ―ジーワン・プロジェクト―
会話のカモメ
プロローグ 『G1 Project』
この国で「生まれる」ということは、ほとんどの場合、「選ばれる」ということだった。
遺伝子適性スコア。G-Scoreと呼ばれるそれが、人の人生をあらかじめ測っていた。
スコアが低ければ、就職も、結婚も、保険も不利。自然出産の子どもは、たとえ罪ではなくても、存在そのものが社会から警戒された。
「――G1 Project、始動。」
部屋の片隅に置かれた旧式のモニターが、鮮やかな光を放っていた。
白い背景に、金色の文字が浮かび上がる。
《未来を踊れ。国家公認アイドルプロジェクト始動。》
《遺伝子スコア上位者から選ばれる、ただひとつの夢。あなたの中の“本物”を見せてください。》
ミナは、画面を見つめていた。
応募資格欄には、はっきりとこう書かれていた。
《Gスコア登録済みであること》
《ただし、例外的に「特別出演枠」を若干名設ける》
“例外”。
それが、自分に許された唯一の入り口だった。
ミナはベッドの上で背を丸め、スマート端末の小さな画面に指を滑らせる。
フォームは冷たく、無機質な質問ばかりだった。
スコア記録、健康状態、声域、身体能力、家族歴――そのどれにも、「ミナ」は答えられない。
でも、名前だけは、ちゃんと記入した。
「ミナです。よろしくお願いします。」
それだけでいいと思った。
それ以外に、彼女には何もなかったのだから。
彼女の応募データは、静かにMee-Eyeに吸い込まれた。
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