第3話 結果はいつも予想の斜め上だ。

 俺は喰われると思った。

 喰われないとしても、殺されると思った。

 DTのまま15年の短い人生だったなと思いながら次に訪れるであろう、痛みや衝撃に少しでも抗う為にキツく目を閉じた。



………



……





 痛みも衝撃も何も来ない。

 殺るならひと思いに殺ってくれ!と考えている時だ。



『ぷっ……』



『ぶぁっはっ!』



 目の前の白狼は大きな口をこれでもかと開いて笑い出した。



 身体がデカイから笑い方も豪快で、ゴロンゴロン転がって笑う度に、木々が薙ぎ倒されて辺りがみるみる整地されて行く。



『ぶぁはははっ!!……あ痛っ!切り株刺さった!……ふひゃひゃ…!』



 何がそこまでツボにハマったのかは解らないが、それよりも俺は笑い転げる白狼に巻き込まれないように逃げるので精一杯だ。





 あれから20分後、白狼は酸欠を起こし、むせ込むまで笑ってからようやく落ち着いた。



『いやぁ、すまんかった。まさか人族ごときに儂の笑いのツボを的確に突かれるとは侮っておったわ。』



 涎と鼻水を垂らしながらも、キリっ!って音が聞こえて来そうなくらいにドヤ顔で話し始める白狼。



 見た目はアレだが、ようやく話しの続きが出来そうみたいだ。



「えっと、そんな訳で、自分でも何故この森に居るのかが解らないんです。」



『成る程な。要するに主は……

迷子なんじゃな?」

「迷子言うなっ!」



 あ、また突っ込んじゃった……



『ぶひゃひゃひゃっ!!』



 そして、冒頭にまた戻る。



 もぅ、嫌だ……泣きそう……









『主は儂を笑い死にさせる為に放たれた刺客か……?』

「違います。」



 ようやく落ち着いた白狼が目をランランと輝かせて、そんな事を言って来た。



 明らかに突っ込み待ちの目をしている。

 一瞬、身体が反応しかけたが、何とか踏ん張って務めて冷静に返した俺を褒めてやりたい。



『……なんじゃ……ノリが悪いのぅ……』



 あ、なんか白狼が寂しそうにしている。

 しかし、このままでは話が進まない。



「えっと、信じて貰えるか解りませんが、此処は俺が居た世界では生息していない生き物が沢山居まして、考えるに俺は違う世界から此方の世界に迷い込んだんじゃないかと思うんです。」



 俺がそう告げると寂しそうにしていた白狼がピクリと反応し、鼻先を少し上にあげる事で俺に続きを促して来た。



「この森からは直ぐにお暇させて貰いますので、出来ればこの近くに村や街のある場所を教えて欲しいのですが……」



 俺のそんな言葉に白狼は暫し天を見上げてから目線を俺に向け、ある条件を突き出して来た。



『勝手に森に侵入して来ただけでなく、わざわざ人族の住む集落の場所を教えろとは、厚かましいにも程があるの。

だが、儂とてケチんぼな白狼ではない。』



 少しの間を開けて……



『儂を笑わせてみろ!


それが条件じゃ!』



 白狼はどこかの界王様みたいな事を言い出した。





 てか、オマエ、ゲラじゃん……

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