にわとりのコッコ君

京野 薫

にわとりのコッコ君

 とある所にある小さな街。


 そこには牛さんやお馬さん、オオワシさんや小鳥さん、犬や猫さんなど沢山の動物が仲良く暮らしていました。

 にわとりのコッコ君もその街で毎日みんなと仲良く暮らしていました。


 毎日とっても楽しいのですが、そんなコッコ君はちょっとだけ困っていたことがありました。それは……


(僕もこの街のみんなの役に立ちたいな……)と言う物。


 馬さんはとっても速く走れて街のみんなを乗せて隣町まであっという間。

 牛さんは沢山の美味しい牛乳を飲ませてくれる。

 クマさんはとっても力持ちでいつも沢山のお手伝いをしている。

 小鳥さんは綺麗な鳴き声で演奏会の主役。

 クジャクさんはとっても綺麗な姿で街のみんなはウットリ。


 そんなみんなを見る度に羨ましくなるのです。


(僕も何かでみんなにありがとう、って言われたいな……)


 でもコッコ君はその度に悲しくなります。

 今日もしょぼんと小川の近くで自分の姿を見ていると、バサバサッと音が聞こえてオオワシのおじいさんが隣にトコトコと歩いてきました。


「どうしたんじゃ、コッコ。そんなにションボリして。今日は街のお祭りじゃ。ずっと楽しみにしとったではないか?」


「うん……でも……僕、お祭り行ってもいいのかな」


「……良かったら話してみなさい」


 オオワシじいさんにコッコ君は困っていたことを話しました。


「僕……みんなと違って何もできないんだ。空も飛べないし、綺麗な声で歌えない。力だって無いし……いっつもみんなに助けてもらってばかり。だから……ここにいてもいいのかな? って」


 オオワシじいさんはカッカと笑った後、大きな羽でコッコ君の頭を撫でました。


「みんなそんな事気にしとらん。この街のみんなは仲間で友達じゃろ?」


「分かってるよ……でも……僕もみんなみたいに何かできるようになりたい」


 オオワシじいさんはウンウンと頷くと、優しく微笑んで言いました。


「そうじゃな。みんなの事が大好きになったら何かしてあげたい。それはとってもいい事じゃ。じゃがな、誰でも自分のできる事をすればいい。それはおっきな事かちっさな事かは関係ない。自分は何をしてるときが楽しい? もっと頑張ろう、と思える? それがお前のするべき事じゃ」


「……わかんないよ」


 オオワシじいさんはまたカッカと笑いました。


「ワシだって分からなかった。分からなくて良い。それはゆっくりと探す事じゃ。お友達や先生たちと。ただな、他のみんなと自分を比べないようにな」


「……比べちゃうよ。ニワトリなんかに生まれなきゃ良かった。綺麗なクジャクさんが良かったな。それか力持ちのクマさん……」


 オオワシじいさんはクワア、と悲しそうにひと声泣きました。


「それはいかん。綺麗とか力がある。それはすごく良い事じゃ。でもそれだけが良いことの全部ではないぞ」


「そうかな……」


 コッコ君がそう悲しそうに言ったとき。

 向こうの川の方で「助けて!」と声が聞こえました。


 ビックリしてオオワシじいさんと行ってみると、そこにはウサギさんが川に落ちて流されていました。

 ウサギさんは怖くてワンワン泣いてます。


「これはいかんな。すぐにみんなを呼ばなくては。じゃがワシは年寄りじゃから遅いかもしれん」


 そう言ってオオワシじいさんは悲しそうにクエエ、と泣きました。

 

 コッコ君は困ってしまいました。

 僕はオオワシじいさんよりもずっと走るのも遅い。

 空も飛べない。

 カワウソ君のようにウサギさんを泳いで助けることもできない。

 なんで僕はニワトリなんだろう……

 そう思って泣きそうになりましたが、その時あっ、と思いました。


「オオワシじいさん! 僕を乗せて空に浮かんで」


「おお……何をする気じゃ」


「いいから!」


 オオワシじいさんはうなづくと、コッコ君を乗せてグエエ……と言いながら空に浮かびました。


「ひい……重い……年寄りにはキツいのお」


「ゴメンね、でも有り難う!」


 そう言うとコッコ君は大きな声で鳴き声を出しました。


「こけコッコ~! こけコッコ~! ウサギさんが~川で溺れてる~。こけコッコ~! みんな助けて~!」


 コッコ君の大きく響き渡る鳴き声は、たちまち街中のみんなに聞こえました。

 すると、すぐに馬さんに乗ったクマさんや、川の向こうからカワウソ君がやってきて、あっという間にウサギさんを助けてくれました。

 やった……


 ヘロヘロと降りてきたオオワシじいさんの背中にいるコッコ君にみんな大喜びでやってきました。


「凄いね、コッコ君! 君のお陰だよ!」


「僕の……おかげ」


「そうだよ、あんな遠くまで聞こえる声は君にしか出せないよ」


「……ありがとう、コッコ君。あなたのお陰で私、助かった」


 みんなを見てコッコ君は嬉しくて泣きそうになりました。

 僕も……できることがあったんだ。


 それからコッコ君は、街の高い所での見張り役になりました。

 そして悪い動物さんが来たときにみんなに知らせたり、朝になったことをみんなに知らせる事をするようになったのでした。


 それからはもうコッコ君は悲しくなったりする事も無くなりました。

 僕にも僕のできることがある。

 それをやっていこう。


 それから、街のみんなはずっとずっと仲良しで暮らして行ったのでした。


【おしまい】

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