第3話

反抗期を迎えた私は、イライラしていました。

不足していること、満足出来ないこと

それは経済的なことでした。

学校では、好きなバックや、文房具を使います。

買ってもらえない私は、自分で買うことが

いいと思って、両親にはアルバイトをしたいと

言いました。

話は簡単で、特に反対も心配もされません。


真面目に働きました。

働いた所は、喫茶店です。

老夫婦の営む喫茶店は、2人掛けのテーブルが

3つ、5人掛けが2つ、カウンターが3つありました。

コーヒーの香り、焼きたてパンの匂い

心地よい場所で、席の案内をし、お水とおしぼりを出して、タイミングでオーダーを聞きます。

奥様が作ります。忙しいとご主人も手伝いに入ります。

少し待ってから、私はスプーンやフォークを

ナプキンに包み、出されたお料理を

奥様から、お願いしますと言われ、お客様に

お出しします。


引き上げ、洗い物、会計、私の仕事です。

お客様に大きな声で『ありがとうございました』と、お礼を言います。

洗い物も綺麗にキチンとやりました。

また、油ものとコップはシンクが別々です。

言われずやっている私に奥様は褒めてくれました。

カウンターに置いた白い布にコップを置きます。

油ものは後から洗います。

暇な時間は、コーヒーカップの茶渋のチェックをし、おしぼりの台も洗い、とにかく空いてる時間は、トイレもチェックして、店内を清潔に保とうと思いました。

実際、他の曜日に来るアルバイトさんは

言われたことしかしなかったそうです。

だから、私がアルバイトをしてから

お店が綺麗になったと褒めて頂きました。

テーブルも椅子も細かく拭き、そこまでやる人はいないと、老夫婦は笑って、一段落すると

美味しいコーヒーを飲みなさいと言って下さいました。


平日、高校が終わって夕方5時から8時、

土日は10時から夕方6時まで…

時給は550円でした。


自分のお小遣いと、足りない学費を払い

私は、少しずつ洋服を買ったり

お金がある満足感…自分なりに充実していました。


ところが、この老夫婦が高齢者で

息子夫婦が心配して、同居にすることに

なりました。

お店は悩んではいるが、一旦閉めることに

なりました。

私は、この品のいい老夫婦が忘れられません。

でも、それから2度とお店が再開することは

ありませんでした。


働くことが楽しい!

お金も貰えるシステムに、私は早く大人に

なりたくなりました。

ですが、両親はそうではありませんでした。

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