ド派手なおしおき!

《side:シン・クロノス》


 よしよしよし、最高にカッコいい登場を決められたぞ! 爆発の演出とポーズのタイミングが完璧だった。


 E12型ギアの中核部分を持ってきて正解だ。リベレーターが侵入してきた場所とタイミングで爆発するように仕掛けておいた。


 その演出によって、俺の最高にカッコいい登場シーンが完成した。


 学園の生徒や、リベレーターまで注目して最高じゃねぇか!


 煙の中、立ち上がってくるリベレーターの一人を踏みつける。


 残り三人……そろそろ潮時だな。


「お前らみたいな雑魚をいつまでも相手にしてる暇はない。ヒーローたちよ。貴様らは見ているだけか、リベレーターを倒すのは貴様らの役目だろう!」

「もちろんです! あとは私たちが!」


 羊ノ家煌と名乗った少女が、俺の言葉に応じてリベレーターを取り押さえる。


 それを見た俺は、ブースターを噴かして跳躍して、その場を離れた。


 地面に叩きつけられた男は呻き声を上げ、そのまま意識を失う。


 騒乱は、終息に向かっている。


 ……うん、完璧な演出だ。最高に目立つタイミングで登場して、適当に敵を残すことで、俺自身は捕まらない。


 現場が混乱させて、ヒーロー候補生たちの危機を救う。


 次々と敵を蹴散らし、印象的な台詞でシメる。


 まさに、俺が目指すヴィランとして、自由な悪の美学として体現している。


「あなたはどこにいくのですか?!」

「本物が舞台に登場していいのは、開幕とクライマックスだけ。あとは目立ちたい奴が出てくりゃいい」


 そう呟いて、俺は煙に紛れ、校舎の影へと姿を消した。



 向かった先は、仮設整備室の裏。


 廃材の一時置き場だ。


 案の定、いたよ……三人のメカニックが、くすぶるような目で集まっていた。


 見たことがある顔ばかりだ。


 朔として、異能都市第八区にある、《廃棄物収容区》【ゴミの墓場】でバカにしてきたメカニックたち。


「貴様らが、リベレーターを手引きしたのか?」

「なっ!? どうして俺たちがここにいるってわかったんだ!」

「あとは逃げるだけなのに……! お前が噂のクロノスか!?」

「なんの用だ!? もう俺たちは関係ない……!」


 俺の予知能力によって、犯人がここに現れると察知してやってきた。


 目の前で、焦りと苛立ちを隠せない様子の三バカ。


 おそらく、今の混乱で自分たちの計画が失敗したことを察してる。

 そして、逃げようとしていたのだろう。


 他のメカニックたちから離れて、こんな人気のない場所に隠れているとは。


 シン・クロノスとして、俺はただゆっくりと歩み寄った。


「……お前らさ。人目に立つヒーローが妬ましいってだけで、学園に仕掛けやがったのか?」


 一人が、口元を歪めた。


「ちげぇよ……俺たちは、異能が弱いからヒーローにはなれなかっただけだ! 生まれながらに不公平があるなんてズルイじゃねぇか?!」

「それでもメカニックとして、支えてやってんのに、ヒーロー様は調子に乗って、メカニックを奴隷みてぇに扱いやがる!」

「俺たちの調整がなきゃ、お前らなんて、一歩も動けねぇくせによ!」


 自分勝手な言い分を並べて、喚き散らす三バカに呆れてしまう。


「……リベレーターと繋がってたのは、お前らで間違いないな?」


 黙った。沈黙が、答えだった。


「ふーん。なるほど。なるほどなるほど……」


 口の端が、勝手に笑う。


「最高にダサいな、お前ら」


 悪の道を歩くにしても、なりふり構わず、自分を正当化する理由ばっかり並べる。


 ……そんなもんに、悪の名を語る資格はねぇよ。


 いや、こいつらは悪を名乗る覚悟もねぇ。


「じゃあ、最高に目立つお仕置き、してやるよ」


「やめろ!」

「やめてくれ!」

「見逃してください!」


「絶対に嫌だ!」


 俺は三人をボコボコに殴り飛ばす。


 ヒーローじゃない俺は、ヴィランとして奴らに振るうに拳にためらいなんて生まれない。



 数分後。


 ヒーロー高校の中庭に三人の姿があった。


 逆さ吊りになった三人のメカニックが、校舎の窓枠にぶら下がっている。


 全員、作業着を脱がされ、パンツ一丁の姿で晒し者にしてやった。


 しかも、首から下げられているのは、特注サイズのプラカード。


《今回のAG暴走事件の犯人です。僕らがAGを暴走するように細工しました》

《メカニックの誇りを忘れて、ヒーローを妬んでやりました》

《自分たちが犯人と知られないで、ニヤニヤとニュースを見て目立ちたかっただけです by 犯人一同》


 証拠品として、彼らが改造したAGのコア部品と、爆発に使うために使用された工具も一緒に吊るしてある。


 群がる生徒、教師、報道ドローン。


「うっ……や、やめろぉ!」

「見ないでくれえええ!」

「違うんだ!? これはハメられたんだ!!!」


 叫び声が校舎に響く中、すでに俺の姿はなかった。


 残ったのは、巨大な文字で壁に描かれた一つのタグ。


《Justice? No, just a good show.――S.C》


 いいねぇ〜たっぷりと目立つことができたよ。


 彼らもこれで悪党として華々しいデビュー出来たわけだ。


 めでたしめでたしってな。


 それに……。


 事件の報道は、予想通りSNSを駆け巡っているね。


 プチバズりどころか、大バズりだよ。


《リベレーター組織による第八高校の爆破事件》

《手引きしたのは二級メカニック! ヒーローになれなかったジレンマからリベレーターに協力!?》

《またもヒーローのピンチに現れた【シン・クロノス】?!》


 俺の名前が拡散されて、目立っている。


「くははははっ……! いいねぇ〜最高じゃん!!!」


 どんどんシン・クロノスの名前が広がって、目立っていく。


 誰にも無視できない存在になってやる。


 感動で脳汁がドバドバだ。

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