終わりかけの世界に魔法使いがログインしました

いももち

ゾンビ蔓延る世界と魔法使い

やべえ病気蔓延る世界と魔法使い

 異なる世界から物や人を呼び出せるのならば、逆に向こうへ行くことも可能なのでは?



 既存の魔法は全て習得し、未来で作られるだろう魔法も大体習得して、好奇心が刺激されるようなできごともなく、やることがねーべやと日々ぐうたら暮らしていた時にふと降りてきた天啓。

 今までどうして他の世界に行き来すること魔法を研究しようと思わなかったのか。

 生まれてからそれなりの年月が経ったからか、思考力が国の中枢を支配する老害みたいに堅くなってしまっていたの?

 え、なにそれ凄いショック……。



 心に大ダメージを負いつつも、昔異世界人に教えてもらった思い立ったが吉日という諺を思い出し、行動に移してからかれこれ数十年。

 どうにかこうにか別の世界に渡るための魔法を作り出すことはできた。流石だな私。



 ただ成功するかどうかは分からない。

 成功したとしてもどんな場所に出るか。人型生物以外しかいない世界に行くかも。

 一か八かの賭け。チップは自分の命。とってもすっごくスリリング。



 しかし魔法を作ったのならば使わねば勿体無い。

 と、いうわけで。身辺整理をしっかりと行い立つ鳥跡を濁さずと言えるような状態にしてから、いざ魔法を使ってみた。



「わぁ」



 結果は成功。やったね大勝利。

 ただし、転移した場所はお空のど真ん中。幸いなことに魔法はちゃんと使えたので、大地のシミになってしまうなんてことにはならなかったけど。

 安全な場所を指定できないなんてかなりの欠陥魔法。頑張って改良しなければ。

 新しい目標を立てつつ、初めましてした異世界はどんな所なのだろあとワクワクしながらゆっくりと地上に近づいて、見えた光景にそっと天を仰いだ。



 ゾンビがたくさんいた。

 それはもうたくさんいた。あっちにもいるし、こっちにもいる。

 意味不明な呻き声を発しながら、炎天下の下ふらふら歩いていらっしゃる。



 とりあえず自分の周りに結界を張ってゾンビたちが歩くど真ん中に降り立ってみたら、すんごい勢いで殺到してきた。

 一応一メートルくらい距離が空くように結界を調節してるけど、うん。どいつもこいつも、ひたすら目の前のお肉食べてえ! という食欲しか持っていないっぽい。



 しかもこれ、異世界だからなのかなんなのか。瘴気や呪いが原因でこんなんなってるわけではなさそう。何が原因なのやら……。

 とりあえずサンプルが欲しいな。そう思って、適当に三体の首をチョンパして動きが止まった所で回収。



 残りのゾンビたちはいらないので全て焼き払った。汚物は焼却だー! あとめっちゃ臭いぞこいつら!

 まあ死体が元気に炎天下の下走り回ってたんだから、そりゃあ腐りますよね!



 回収したサンプルを解析しつつ、拠点にできそうな場所を探すためまた空を飛ぶ。

 ゾンビたちの足は遅いみたいで、そこら辺にいる野生動物たちは捕まることなくさっさか逃げてる。

 たまーに怪我か病気で元気が無いのが捕まってむしゃむしゃされてるくらい?

 あと人間も偶にむしゃむしゃされてるのを見かけた。ほぼ無抵抗だったのを見るに魔法は使えなさそう。



 サンプルの解析が終わった。ほうほう、あー。なるほど。瘴気や呪いの類でゾンビになったんじゃなくて、変な病原が原因でああなったのか。

 ……え、やばくね?? 病気でゾンビになるとかやばくね??

 そんな病気元の世界ですら聞いたことないんですけど……。



 異世界こっわとドン引きしつつ、丁度いい感じの街を見つけたのでそこを拠点にすることとした。

 魔法で生きてる人間がいないか探ってみたけど、マジでだーれもいない。代わりにゾンビはいた。

 元はそれなりに賑やかだったと思うけど、ゾンビのせいでこんなことになってしまうとは可哀想に。



 とはいえ、誰もいないゴーストタウンなのは都合が良い。

 魔法の研究してたら、時々とんでもねえ異臭が発生したり、うっかり研究施設丸ごと爆破してしまったりするし。

 そうなるとめちゃくちゃ苦情入れられるんだよね。当たり前だけど。



 この街を拠点にすると決めてすぐゾンビを焼き払ってから、ゾンビになるやべえ病気を患ってる奴等は全て弾く結界を作って張った。

 伊達に長生きしてないので、ちょっと既存の魔法に手を加えるだけならわりと簡単にできたりする。



 結界を張り終わったら、辺り一体を浄化した。

 変な病気があるかもしれないので念入りに。ゾンビもそうだけど、異世界特有のやべえ病気になったら怖いので。

 ゾンビを燃やしてできた灰は町外れにあった墓地に埋めて、軽く祈りを捧げた。

 今度はやべえ病気が蔓延してないまともな世界に生まれ落ちるといいね。



 それから街の探索をした。

 そして重大な問題が発覚。



「街の名前わっかんねー!」



 字が読めない。全く読めない。

 街の名前が書いてあるらしき看板も読めないし、家の中に残っていた書物も全然読めない。

 薄々そんな予感はしていたけれど、異世界に渡るのも大変だ。言葉の問題はどうしたものか。



 考えて、まあ今は別にそんな気にしなくていいかと街の整備に取り掛かることにした。

 魔法でこの街がまだまともだった頃を覗き見たところ、上下水道がちゃんと整備されていて、魔力が無くても使える魔道具みたいな便利道具で楽な暮らしができてたみたい。



 上下水道も便利道具も放置されてそこそこ経つのか、それとも別の理由か。

 ほとんどが壊れてしまっていたり、動力が無くなって動かなくなってたりするけど、手を加えればどうにかなりそう。



 待てよ? そもそもこの世界の便利道具ってどう使うんだ……? 魔力が動力源じゃないなら、何を動力源としてたのこれ。火か? 風か? それとも水?

 ……あ、この便利道具前に教えてもらった冷蔵庫とオーブントースターってのに似てるな? いや、たぶんその物か。



 これを使うにはなんか電気が必要って昔聞いたような……。

 電気……電気か……。雷魔法を応用したらいけるかも?



 試行錯誤すること二週間弱。

 上下水道を完璧に整えて電気も通るようになりました!! 壊れてた部分とかも全部直したぜ!! イェーイ!!

 やっぱあれだな、解析魔法使ってやる方が楽ですわな!!

 十日もあれそれ悩みまくってどうにもこうにもならなくなってから、やっとそのことに気がついた私はお馬鹿のお間抜けだなほんと。



 でもまあ、それはそれ!

 やっと快適な日々が送れるぜやっほー!



「アアァァァ」

「これまた、大量発生したなぁ」



 夜中も明るいせいでゾンビたちがめちゃくちゃ集まるようになったけど。

 んー、いい加減ちゃんと夜は暗くしとこ。あと、街一つじゃちょっと狭いし、もう少し安全圏広げるかぁ。



 畑作ろ。果樹園も。

 種も苗木もあるし。薬草も育ててみるか。

 この世界に来ることになった異世界渡りの魔法の改良も考えないと。



 久しぶりに忙しくなるぞー!

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