第2話 光の王は願う

「にーたん?」

「んー?どうした白?」

「どっかいたいの?」

「え?なんでだ?」

「だってにいたん泣いてるから......」


 そんな指摘を聞いて俺が自分の顔を触ると目の辺りが少し濡れていた。

 俺は泣いていたのだ。それに気が付かないままだったなんてよっぽど動揺していたのだろうか。

 白に心配させてしまうなんて申し訳ない。


「大丈夫だよ。白はまだ寝てな?」

「ん、わかった......」


 そう言って白がまた寝転がった。

 俺の声で起こしてしまったみたいだし、まだ寝ててほしい。

 まあ、俺は目が覚めたし起きておくし少し情報を整理したいから歩こうかな。


 着替えて音を立てないように外に出た。

 泣いた跡も見せたくなかったからちょうど良かった。そもそもなんで泣いていたんだろうって思うけどね。

 きっと、仲間のことを思い出したからかな。前のこと、忘れることないって思ってたけど今まで忘れてたんだもんなあ。最後の瞬間まで思い出したらそれは泣きもするだろう。


「本当、守れて良かった......」


 誰もいないのを確認して俺は呟いた。こぼれそうな涙は引っ込める。

 泣いてたことがばれたくない。

 だって今日は小学校の入学式だから。


「すっかり抜け落ちたけどそっちのが今日の俺にとって大事だよなあ。まさか、この歳になってまた一からのスタートとは思わなかったけど」


 四十五、だったな。忙しかったけどファミリーの誕生日パーティだけは欠かさずしてたから自分の年齢も覚えてる。まあ、俺のファミリーの幹部ってほぼ友人か先輩で構成されてたから年齢はほとんど変わらなかったんだよね。


「さてと、そろそろ帰るか。にしても前の自分が弟とは......」


 そう、白は前の俺と同じ姿。

 でも、可愛い。にーたんって呼んでくるのが可愛いんだよなあ。

 今世でもなにかに関わらないといけないのは分かってるし、影から支えるというのならそれは白を支えたい。白の兄として、俺と同じ未来を歩ませないためにもね。

 

「よし、とりあえずトレーニングしていこう」


 支えたいなら今のままではだめだ。

 記憶を思い出したといっても、身体がついていかないようだと怪我をする。まずは体力作りだ。


「まあ今日のところは帰るんだけどさ」


 小学校の入学式。それに遅れるのはいけないし、母さんもそろそろ起きるだろうしな。父さんは変わらずいない。また嘘ついてどこかにいるんだ。それは変わらないこと。

 変わっているのは前では俺に兄はいなかった。つまり俺はイレギュラーなのだ。

 イレギュラーとしてどう関わるのが正解なのかなんて分からない。

 でも、好きに動きたい。そしてできれば弟にも弟の仲間にも傷ついてほしくない。それが俺の願い。


「二回目なんだから、好きに生きて今度こそみんなが元気に生きているのを最後まで見る。そのためならイレギュラーでもなんでもいいよ」


 今度こそ、最後を悲しい顔で終わらせない。

 俺の前世の仲間の近くにいることになるのは白だけど、みんなの笑顔を守りたいのに変わりはないから。

 だから、強くなって守ってみせる。俺はヒーローみたいに知らない人を守ることはできないけど大事な人は守りたいって願うから……

 

「可能な限りそばにいさせて」


 








 

 



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