第3話 牙
「ついたぞ」
そこには、大きな白い城があった。
城と言っても様々な、色々な捉え方ができることは間違いないのだが、その光景は見るからにして圧巻であり、俺を躊躇なく驚かせた。
ナギサは驚きもせず、その城へと向かい、門をくぐり扉を開けてついてくるように、と、俺に指図しながら、その重厚な扉を抜けていった。
その城の中には、絵画や、武具、白い鎧、盃、酒、食料、備蓄などが置いてあり、今でも使われていることが確認できた。どれもが埃や、クモの巣をかぶっておらず、きちんと掃除されていることが伺えた。
俺はどこかに迷い込んでしまったのだろうかとも考えた。
ナギサちゃんは俺の好きなナギサちゃんに似た外国人であり、ここは外国ではないのかという推察ができた。
もし、外国だとするならば、その光景や今までの険しい道のりを簡単に説明することができるからだ。
その時は、もしここが外国ではなかったのなら、もし、ここが地球ではなかったのならという考えなど思いつくわけもなく、そこにいる。ナギサについていくことしかできなかった。
「ライオネル、帰ったが留守かの」
「いるが?」
ライオネル?
やはり、外国人なのか?
聞いたことのない声だった。
ひとつ覚えているのは、その声に重みがあるという点だった。
その男は、たった3文字の言葉を口にしただけなのに、その男の荘厳さ、偉大さが、ひしひしと俺に伝わってきたからだ。
ナギサはおそらくだがその男の部下ではないかと考えることができた。
ということはだ。ナギサから慕われている俺は、その男の仲間なのか。
それとも、今日初めて会うのかは分からなかったが、俺は声をかけられた。
「元気にしてたか」
「ライオネルっていうのか。ナギサとどういう関係だ」
「たわけ。取引相手じゃ」
「おかしなやつだな。飯でも食うか?」
「あ、ああ」
なぜだろうか。
どもってしまう。
その男ライオネルは、金の鎧を身に纏い、彼の金の鎧には、様々な紋章が描かれていた。
どれもが牙のような造形をしていたり、まるで彼が、獣であることを匂わすかのような装いであり、ますます彼がどんな人物なのか気になったが、俺という男は、ナギサと一緒に食堂に案内された。
「どういうことじゃ」
ナギサちゃんは、カンカンに怒っている。
「え?なにが?」
「この方を忘れとるとはどういうことじゃ?と、聞いておる」
「いや、その、さっぱりわかなくてさ」
「ナギサは、知ってるの?」
「当たり前じゃ」
「この国を造られたのがライオネルその人じゃ」
「この国は、かつて4つの国に分裂しておった」
「争いは絶えず、食糧困難、難民、不自由とどの国も壊滅的だったんじゃ」
「そんなとき、四人の英雄が現れたんじゃ」
「ライオネルはそのひとりじゃ」
「戦争を終わらせたんじゃ」
「うさんくせえだろ?そんな昔の話いいだろ」
「ほら、食えよ」
「あ、あり……恩に着る」
ありがとう。と言いそうになったが、ナギサの話が本当なら、凄い人なので、少しばかり、畏まる。
念のために訊いておこう。
俺は、真実が知りたいだけだ。
「その、英雄なのか?」
「他称だ。呼称じゃねえ」
「あ、ああ」
やっぱり、俺はFラン生だな。と、思い知らされる。
言っていることが、よくわからない。
日本語で頼む。と、言うべきだったか。
俺の目の前に、一杯の器が用意される。
たまらない香りが漂ってくる。
汁物か?
味噌汁か?
それともスープか?
「これは、どうやって食べるんだ?」
「知らねえのか。教えてやる」
その男ライオネルは、細い竹を2つ持ってくると、俺に渡した。
「ほらよ。食ってみろ」
「いただき……頂く」
再び、畏まる。
その器には、細い棒が泳いでおり、ライオネルは、その棒をまとめてすくうと、口に放り込んでいた。
そのように食べるのか、と感心していると、ナギサがこっちを向けというので、向いた。
俗に言う「あーん」をされた。
「うまいな」
「だろ?」
「腹いっぱい食え」
「ありがたい」
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